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カノーネンフォーゲル eins  作者: 田鶴瑞穂
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ダイヤモンド付黄金瑞宝勲章①

 十二月にはシャルロッテの出撃回数は二千回を突破した。この頃、シャルロッテ達が出撃すると、奇妙な無線が法皇国側から聞こえてくるようになった。

 『敵の地上攻撃部隊がやってくるぞ!敵部隊の先頭には、必ず翼に二本の長い棹を付けた奴がいる。それがユンググラースだ!我々の同胞の戦車を撃破した『天空の魔女』だ!総員に告ぐ、直ちに長い棹を付けた急降下爆撃機を撃墜せよ!!』

 この無線を聞く度に、シャルロッテは苦笑しながら、周りの者に戯けてみせるようになっていた。

 「私、『天空の魔女』は、敵軍に名指しされる栄誉を得ました。目の敵にされるとは、光栄の極みですぅ。」

 この戯けは、シャルロッテ麾下の地上攻撃部隊員達には大受けだったが、戦闘航空団の搭乗員達は、真剣にシャルロッテのことを心配してくれた。

 「皆、冗談として受けているようだが、敵は本気だぞ!隊長にもしもの事があったら、大変だとは思わないのか?」

 それらの問いかけに対して、『天空の魔女の影』の一人フィッケルは、次のように答えていた。

 「ユンググラース隊長は一番機で、俺は二番機だ。いつも敵が一番機を狙って撃った弾が、みんな二番機である俺のところにやってくるからな。たまったもんじゃないよ。えっ、何故だって?それは隊長の機動が凄すぎて、奴らの撃った弾が届く頃には、もう隊長はそこにはいないんだ。で、隊長機の後に続く俺の機に弾が届くという寸法だ。いや、本当だって。賭けをしたっていいぜ?」

 最初は、てっきりフィッケルも冗談を言っているものだと思っていた連中も、実際の戦場でシャルロッテの機動を見ると皆度肝を抜かれていた。重く、機動性に乏しいカノーネンフォーゲルをまるで戦闘機のように操る技術を見て、自分もあのように成れるのだろうかと憧れを懐くようになるのだった。

 そんな彼女の滅多には見られない超絶技術に感嘆する機会が訪れた。十二月下旬のある日、いつものように地上攻撃部隊とそれを護衛する戦闘機部隊が出撃した時の事だった。

 「いつもにも増して対空砲火が激しいぞ!皆注意しろよ!!」

 『『『了解!!』』』

 シャルロッテが部隊員達に注意喚起をした直後、フィッケル機が大きく揺れたかと思うと、煙を吐きながら降下し始めた。

 『ファルケ2から1へ・・・被弾した・・・不時着する!』

 「えぇっ!おい、フィッケル、大丈夫か!」

 フィッケル機は、煙を吐き、ふらふらと揺れながらも不時着に成功した。上空からもフィッケルと後部機銃手が機体から脱出する様子が見えた。

 「エンゲル!フィッケルを助けるぞ!各機へ!上空で支援しろ!・・・よし行くぞ!」

 シャルロッテはすぐに旋回すると、降下を始めた。その様子に慌てたのは同乗しているエンゲルだった。

 「ちょ、ちょっと待つのだわ!少佐は敵中への着陸を大統領から禁止されていますのだわ。大統領の命令に逆らうおつもりですの?!」

 エンゲルの制止に対して、シャルロッテは全く慌てた様子を見せずに、さも当然と言った風に答えた。

 「心配するな!逆らうつもりはないわ!要するに着陸しなければいいんでしょ!」

 「え・・・えぇぇえええぇ?!」

 そのまま地上付近まで舞い降りたカノーネンフォーゲルは、地面から数十cmの高さを滑空し、機体が浮くギリギリの速度まで減速した。その上で、シャルロッテはキャノピーを開けて、力一杯叫んだ。

 「しがみつけぇええ!フィッケルぅううう!!」

 「た、隊長ぉ!!」

 シャルロッテ機は不時着した二人目掛けて滑空した。自分達の目の前をカノーネンフォーゲルが通り過ぎるその瞬間、二人は前輪に跨がるようにしがみついた。

 「隊長ぉおお!二人ともぉお、しがみつきましたぁああ!」

 それを聞いたシャルロッテは、高度を上げてそのまま共和国領内を目指した。こうして四人は無事に帰隊する事が出来たのだった。

 この救出劇は、多くの地上攻撃部隊員と戦闘機部隊員に目撃されていた。まるで特撮映画のワンシーンのような光景に、信じられないものを目撃してしまったと誰しもが思い、そして自分達とシャルロッテとの技量の差に、絶望に近い感情を懐いたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] でたー!魔王の伝説話!ここで見れて感無量です
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