受勲式
クバン湖沼地帯戦から半月ほどが過ぎた頃、シャルロッテは重大なニュースを受け取った。リヒト・クヴェックズィルバー大統領自らが、シャルロッテに対し赤瑞宝章を授与するというのである。
「(大統領が自ら勲章を授与なさるということは、式典参加のために首都ベルイーズまで行かなければならないと言うことね。本当は前線を離れたくはないんだけど・・・。)」
シャルロッテはやむなく乗りなれたWF97D1ではなく、手配された戦闘機SchwarzFalkeで首都ベルイーズへと出向いた。
受勲式に呼ばれたのは、シャルロッテを含む十二名で、話をしてみると噂に聞いていた大武勲をあげた者があらかた揃っていた。敵機百五十機を葬った戦闘機パイロット、敵戦車百台を撃破した戦車兵長など、まるでおとぎ話の主人公のような面々だった。
「皆さん、凄い功績ね。私なんかが皆さんの中に混ぜていただいているのが恥ずかしいわ・・・。」
シャルロッテが思わず呟くと、「「えっ!?」」と、他の十一名が声を揃えて驚いた。
「貴公は、ご自分がどれだけ人間離れしたことを成し遂げてきたのか、自覚されていないのか?」
「えっ!?」
今度は、シャルロッテが驚く番だった。自分は黙々と自分の役目を果たしてきただけと考えている彼女にとって、英雄達が思いの外自分を高く評価していることが意外だったのだ。
「貴公はもっとご自分のことを誇って良いと思う。」
口々に自分を褒める英雄達に対し、シャルロッテは顔を赤らめながら礼を言った。
受勲式が始まった。クヴェックズィルバー大統領は、一人一人の胸に赤瑞宝章を付けながら声をかけていた。しばらくしてシャルロッテの番が回ってきた。
「よくやったわ、ユンググラース大尉。あなたのような英雄が今の我が国には必要なのよ。これからもしっかり頑張ってね。」
「あ、ありがとうございます閣下!!」
「(閣下が自ら勲章を付けてくださるなんて……閣下は前線の兵士のことをしっかりと把握していらっしゃるのか・・・。有り難い・・・。)」
「我々は、自由主義と民主主義を守るため、あの悪魔の教団に打ち克たねばなりません!我らの敗北は世界の終末なのよ。だから我らはいかなる犠牲を払っても、あの悪魔教祖に勝ち抜くのよ!!」
勲章授与の後、大統領クヴェックズィルバーは、シャルロッテら十二名の受勲者に対して一時間余りも共和国の運命に関して演説を行った。シャルロッテらは、その言葉を感激しながら聴いたのだった。