40. 抱っこ
その晩、2人とも力尽きて、亡くなってしまった。
そして、そんな2人の魂は一つになった。
あの世に行くには、心残りがありすぎて、旅立てない『坊』のために、少年は、一緒にいることを決めた。それから、霊魂として、この世に存在することになり、今に至るのだという。
「じゃあ、ほんとは、やっぱり、妖怪じゃなくて幽霊、ってこと?」
僕が訊くと、
「まあ、そうやな。でもな、幽霊って言うたら、あいつ、えらい怖がってな。『おばけ、いや』って泣くんや。それでな、『じゃあ、なんやったら、怖くないねん?』ってきいたら、」
「もしかして、『妖怪なら、こわくない』とか?」
僕は、笑いながら言った。
出会ったばかりの頃の、もちまるを思い出した。暗いところや、静かすぎるところに1人でいるのを怖がったもちまる。
『妖怪』を名乗ったものの、名前なんかない、無名の妖怪や、と淋しそうに話した、もちまる。
「そやねん。『おばけはこわいからいや。でも、妖怪はかっこいいから、妖怪になる』ってさ。それから、オレら2人は、妖怪を名乗って、この世に暮らしてきたんや。時々、いろんなひとに取り憑い……ついていって」
彼は、慌てて言い直した。
「……なるほど」
僕も、目をつけられた1人やった、と。僕は、かすかに苦笑いした。
「でも、あいつにとって、今までで一番、オマエのとこが居心地がよかったみたいや。……オレもな」
彼は、急いで付け加えた。
「そっか……。それなら、よかった」
僕が、そう言うと、彼は、少し真剣な声になった。
「そろそろ、あいつが目ぇ覚ましそうや。オレはいったん引っ込む。……あいつのこと、頼むな」
「うん」
僕は、うなずきはしたものの、何をどうしたらいいのか、具体的には、何も浮かんではいなかった。
ただ、膝の上に抱えたもちまるを、小さい子をあやすように優しく抱っこしていた。




