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36. さわってもええ?


 夏休みでよかった。

 そうでなければ、彼は学校でもずっと僕のそばを離れずにいようとしたかもしれない。観測するときも、曇ってきてテントの中でトランプするときも、里見はずっと僕の隣りにいた。

「あんたら、えらい仲良うなってんね~」 と美月がびっくりしていたほどだ。


 だから、『もちまるを連れて帰りたい』なんて言うんじゃないかと、僕はちょっと心配だった。


 解散後、みんながいなくなった後で、僕が、そっと彼の手のひらにもちまるを乗せてやると、里見は恐る恐る、その手に顔を近づけて、

「ごめん。やっぱ、可愛いって言いたなるわ。……さわってもええ?」

 もちまるに訊いた。

「……ええよ」

 もちまるが短く答える。


 里見は、もちまるが自在に大きさを変えられることを知らない。小さな彼しか知らないので、つぶさないように、おそるおそる優しくそっと指先でもちまるの頭を撫でる。てっぺんではなく、側頭部あたりをそ~っと。気を遣っているのだ。しばらくそうして、

「ありがとう」

 すっと指を引っ込めて、里見は笑った。

 そして、なごり惜しそうに何度も、僕ともちまる(いや、ほとんどもちまる?)を振り返りながら帰って行った。


「あいつ、案外ええやつやな」

 ぽつりともちまるが言った。

「うん。そやな」

 けっこうマイペースで、自分の思うまま行動するやつかと思っていた。実際は、その真逆だった。好奇心は旺盛だけど、相手の気持ちを無視した行動をするやつではなかった。

 僕は、彼がもちまるに触れたときの、優しい指の動きを思い出していた。

 

 

 帰宅してシャワーを浴びてすっきりすると、昨夜一晩中起きていたせいもあって、一気に眠気が押し寄せる。

 小さめのクッションサイズになったもちまるを抱えて、ベッドに転がる。ひんやりしたもちもちの感触が心地いい。

 そして、僕は――――いつのまにかぐっすり眠り込んでいた。



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