33. ここに
お店に残っていた7コのプリンを買い占めて戻ってきた僕たちは、部屋で、早速おやつタイムにする。もちまるの前には、小さなプリンのカップが、2コ並ぶ。
「2コもいいのか? ちゃんと、萌の分は、あるのか?」
もちまるが心配そうに、僕の顔を見る。
「大丈夫やで。ちゃんと、冷蔵庫にある」
「そうか。ならよかった。……萌はいつも、オレにプリンを買ってきてくれるから。萌の分は、ちゃんと確保しないとな」
もちまるは、けっこう律儀なのだ。
安心したもちまるが、嬉しそうにスプーンを手にする。
「美味しいな」
もちまるの丸いほっぺが、うっすらピンク色になって、もくもく動く。
「うん。そやな」
可愛く動くほっぺを見ながら、僕も答える。
いつも、大きな口でパクパク食べるもちまるが、少しずつ、ゆっくりプリンを口に運んでいる。ひと口ずつ、そっと丁寧に味わうように。
「美味しいって、嬉しいな」もちまるが、ぽそっと言う。
「うん」
「いろんな『嬉しい』が重なって『幸せ』になるんやな、きっと。小さくても『嬉しい』が重なっていったら、『幸せ』になるんやろな……」
「もちまる……」
「へへ……ちょっとカッコつけてしもた」
照れくさそうに笑ったもちまるは、急いで1個目の、最後の一口を口に入れると、2個目を手にして、僕を見上げて、にこっと笑って訊く。
「かまへん?」
「もちろん。ええよ。それ、もちまるの分やで」
「ありがとう」
嬉しそうに、2個目を夢中で食べるもちまるは、いつものペースに戻っている。もちもちのほっぺが幸せそうに動く。
幸せそうな彼を見るのが、僕は好きなのだけど。
でも、なぜだろう。
今日の僕は、静かな予感のようなものが、次第に心の中に広がるのを感じていた。
そして、思わず言ってしまった。
「もちまる。ずっと、おったらええから。ここに」
「え?」
「どこにもいかんと、ここにおったらええから」
「大吾……」
「……おりたいだけ、おったらええから」
「……ありがとう」
もちまるが、ぽよんと跳ねて、僕の腕の中に飛び込んできた。
「大吾」
小さなもちもちの感触を抱えながら、僕は胸に広がっていこうとする不安を、なんとかして、抑えようとしていた。




