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追記 : 妻の夢

作者: 山内海

 わたくし、

 現在(令和三年九月)入院中です。


 尿路結石でございます。

 手術をして、手術自体は成功だったので一旦退院したのですが、麻酔の副作用で頭痛が治まらず、退院一日で再入院してしまいました。


 現在病床でこの一文をスマホ入力しています。

 今回のお話はつい先日、手術後退院し一晩で舞い戻るまでの間。

 自宅で寝て、次の日の朝の事でございます。


 起きがけに妻がわたくしにこう言いました。


「あなたに離婚を迫られる夢を見た」と。


「ハア、サウデスカ」

 などと生返事をしつつ、わたくしはなんとはなく既視感(デジャヴ)を覚えました。


 四十も半ばを越えると『無病息災』は得難く、『一病息災』位で御の字などと謂われますが、わたくしの場合大病は幸い無くとも、大腸ポリープやら胆嚢炎やらちょくちょく患い、ここ数年何度か手術の為に入院をしております。


 その、以前の何度かの入院の、どれであったかは失念しましたが、以前の退院時にも、妻から同じように『離婚を迫られた夢』の話を聞いたのを思い出したのです。

 

 妻に確認すればよいだけの話なのですが、その後直ぐに頭痛が襲い、取りあえず病院に電話したら『診察を受けて下さい』と言われたので、病院へ向かいそのまま入院してしまったので、夢の事は聞けず仕舞でした。


 コロナ禍の昨今見舞いもなく、ベッドに転がって、その妻の夢の事をツラツラ考えておりました。


 メールやラインなどで妻に夢のことを聞くことに、なんとなく抵抗があったのです。

  

 なので取り敢えず夢の事を考えます。


 さて。

 わたくしから離婚を迫られる夢を見たと妻は言います。 

 普通に考えるとするならば、わたくしが入院しているのであるから、わたくしの家には当然わたくしが不在です。

 家に夫が居ない=離婚。

 そんな状態だから妻が離婚を迫られる夢を見るのも不思議ではない。

 と、なります。


 ですが、夜勤や出張などでわたくしが夜に居なかったり、数日家に帰らないことは良くあります。


 たまたまかも、ですが、そんな時に言われる事はなく、決まってわたくしの退院時に、離婚を迫られる夢を見るなのは何故でしょうか?


 浮気を疑っている?

 馬鹿を言ってはいけません。

 わたくしは妻一筋ですし、有らぬ心配を掛けぬよう地図アプリで常に家族に現在位置を報せています。

 常時です。


 数日妻と顔を合わせない事など良くあるのですが、『離婚を迫られる夢を見た』と言われるのは、決まって退院明けの時なのには、なにか理由が有るのでしょうか。


 どうしてであろうと、わたくしは考えました。

 そして一つの仮説を立てたのです。


 



 恐らく妻が見たのは、『離婚を迫られた夢』ではなくて『離婚を迫った夢』なのではないかと。


 以前『将来の夢』でも言及しましたが、夢の記憶と云うモノは映画等とは違い、秩序も順序も有りはせず、主観も含めて登場人物すら断定できないのです。

 迫ったのか迫られたのか位簡単にひっくり返ります。

 また、わたくしにソレを話すとなると、『離婚を迫った』とその場で言ってしまえば、チキンなわたくしがどの様に(悪く)捉えるか、多分長年連れ添った妻は察知して、『迫った』夢を『迫られた』夢に変換して話したのではないかと思うのです。

 話す段階で変換したのか、そういう夢だったと夢の記憶自体をすり替えたのか。

 それは解りかねますが。


 何故そう思うのかと言いますと、妻が夢を見るタイミングです。

 多分それは、妻が不安を感じているからなのでしょう。


 仮にわたくし達が原始時代の夫婦だったとします。


 夫は家(多分洞窟)の外で狩りをして獲物を持ち帰ります。

 それは普通のことでしょう。

 例え遠征で数日帰らないとしても、狩りならば仕方がありません。

 ですがその夫が怪我や病気で家の中で寝込んでいたらどうでしょう。


 食べ物が手に入らないばかりか、食い扶持が増えて家計は傾きます。

 寝込んでいる夫の頭に大石でもブチ降ろして始末し、とっとと別の男を探した方が賢明と云うものです。

 

 そんな物騒なことを、妻が具体的に考えているとは思いませんが、深層心理として、本能的にそのような可能性を模索して、それが夢に反映されたのでは?


 そしてその結果として、別の稼ぎ手を探す為にわたくしに離婚を迫る夢を見た。


 と、云うのがわたくしの予想です。


 

 この予想の答え合わせをするつもりはありません。


 だって怖いもの。


 もし、予測が正しいとしても、うっかりわたくしに夢の内容を話すあたり、妻にも自覚は無いのでしょう。


 間違いだとしても、図星だとしても、夫婦関係に禍根を残しそうなこの考えは、墓まで持って行きましょうか。


 今、わたくしに出来ることは、早く退院し、仕事に復帰し妻を安心させる事でしょう。     


終わり

 





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