全ての人が許されている浮気
全ての人が許されている浮気
私は彼を良く知らないまま同居生活が始まった。
最初は戸惑いもあったし、恐怖もある。
でも彼は私を良く知っていた。
私が気持ちよくなれる場所も、私が大好きな物も。
彼が作る料理は人生で経験した事がないほど美味し、誕生日にはケーキも買ってくれた。
彼と数日過ごし始めて彼の事が大好きに変わり、彼との同居生活は毎日が幸せ。
イチャイチャしたり、キュンキュンしたり、相思相愛を実感できる。
しかし、そんなある日の事。
彼が突然帰って来なかった。
私は心配で喉にご飯も通らず、夜も眠れなかった。
何か事故や生死を分ける状態になっているのではと心配になり、嘔吐を繰り返した。
しかし朝方になり、彼は何食わぬ顔で帰ってきた。
そして、私はその時気づいた。
彼は浮気をしている。
家に帰って来ても携帯とずっと睨めっこ。
電話もたえず、恐らく相手は女だとわかる。
毎日帰りも遅く、私は家でご飯も食べずに彼を待つ毎日。
前は私だけを見てくれていたのに、今では「こっちおいで!」も言ってくれなくなった。
あの言葉が私は好きだった。
必要として貰えてる様な心を満たす言葉。
もう今では久しく聞いていない。
私はもっと私を大切に思ってもらいたかった。
だから何度も話しかけるのに彼は…
「ちょっと待って。」
しか言わない。
終いには…
「なんだよ。」
と冷たい言葉を投げられる。
随分とあからさまで驚いた。
そして。
あろうことか、彼は突然に浮気相手を平気で家に連れて来た。
「まゆちゃんって言うんだ!仲良くしてあげて!」
私は唖然とした。
普通、浮気相手を家に呼んで、更に紹介までする異常さに私は驚きを隠せなかった。
その日の夜。
私は別室へ追いやられ、隣の寝室からは何か激しい音と声が響いていた。
しかし、私は耐えられる。
それでも彼が好きだったからだ。
彼が幸せなら私はそれでいい。
彼がそうするのなら私は彼に尻尾を振って従おう。
それが彼の幸せなら。
私は彼から向けられる笑顔と、名を呼んでもらい、頭を撫でて貰えるだけで幸せなのだから。
大好きな彼がそばに居てくれるだけで私は幸せを感じる。
ずっと一緒に居てくれるだけでいい。
何故なら…
…私は…「犬」なのだから。
読んで頂きありがとうございました!
私の小説が嫌いじゃないとなった方は作者名から他の小説家も見ていただけたら嬉しいです!
よろしくお願いします!