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67《10》聖女と不気味な部屋

「4人同時に同じ夢を見ているなんて、不思議ですね。今なにが起きているんでしょうか」


「さっきエレンさんとも話していたのですが、なにもわからないんです。……でも、みなさんに会えてよかったですわ」


「ですよね! ずっと1人ぼっちだったから怖くて心細かったけど……みんながいるなら、また明日この夢を見ても、別にいいかも」


 イアンやマーリンとそんな風に話していると、ウィリアムが言った。


「それなんだけどさ……この夢を終わらせる方法があるかもしれない」

「え!?」

「ウィリアム様、なにかわかったんですか?」


 全員がウィリアムを見つめる。そんな中でウィリアムは、エレンに目を合わせて質問した。


「エレンさんは、この迷宮に魔力を流した時に、なにか気づきませんでしたか?」


「なにか? ……私、人を探そうと思って魔力を流したので……3人いるな、としか思わなかったです」


 エレンは質問の意味がわからないままそう応えた。「そうですか」とウィリアムが言う。


「ぼくは、エレンさんの魔法をヒントに、探索をイメージして魔力を使ったからか……もう少し、手に入れた情報があります。たぶん、迷宮の出口らしきものがある」


 ウィリアムはそう言うと、床に流したままだった魔力を細い一本の道しるべにした。火の魔力は、前方と後方に続いている。


「ただ……出入口のようなものは2箇所あります。

出口かもしれないし、より深い迷宮の入口かもしれない。進むか戻るか、留まるか……どうしようか?」


 4人はお互いに顔を見合わせた。


****


 エレンも出入口を魔力で確認することにした。

 ウィリアムの魔力をたどって前方と後方の通路を進み、行き止まりにたどり着く。


「本当だ! 行き止まりがありますね。どちらも、それ以上先には、魔力が通らないです」


「そこから先は魔法が使えないんですかね?」

「扉だけが阻害している可能性もあるけどね」


「では、両方見てみて……それから方針を考えるのはいかがですか?」


 マーリンの提案に、全員が賛成した。


 そうして、近いほうの扉の前に行く。

 白い壁に見慣れていたから、エレンは濃茶の扉にちょっと感動して『ふおお、扉!』ってなった。


「開けます。いいですか?」


 イアンが前に立って、みんながうなずくのを見ると、警戒しながら扉を開けた。



 ギイイイイ……


 錆び付いた音が、重厚な扉っぽい。

 少し開けてなにも出てこないことを確認してから、イアンが扉の中をのぞき込み中を確認する。


「イアン様、中はどうなってるんですか?」

「……危険なものはなさそうですが、不気味な部屋ですよ」


 そう言って、みんなにも見えるように大きく扉を開いた。ウィリアム、エレン、マーリンもドキドキとのぞき込む。

 中を見て、マーリンとエレンは悲鳴をあげた。


「きゃーー」

「ひええ、ななななにあれ怖いっ」


 2人は、はわわわわと両手を握り合った。

 部屋中、壁面びっしりと肖像画が飾られている。その肖像画がなんだかすごく気持ち悪い。


 ウィリアムは、そんな部屋の中をしげしげと興味深そうに眺めている。


「全部、肖像画にしては、目が変な方を向いているね。なにか法則性があるような……なんだろう……? あ、奥に扉がある。イアン、ここの扉が閉じないように、見張っててくれる?」


 そうして中に入ろうとするから、イアンが止めた。


「いえ、ウィリアム様。こういうことは私が」


「いや、大丈夫。イアンはマーリンとエレンさんのそばにいて。イアンなら大抵のことに対処できるし、ぼくも1人のほうが力を使いやすいから」


「……わかりました」

「気をつけてください、ウィリアム様」

「うん」


 イアンが引き下がり、マーリンが声をかけた。

 エレンもイアンやマーリンと、ウィリアムを見守る。


 ウィリアムは、警戒しながら部屋の中に入ると、1つだけ火球を作った。そして手近な絵にぶつけるのでエレンはびっくり仰天した。


「えええーー!? 絵絵絵ーー!?」


 ちょ。思い切り良すぎませんか。

 こんな不気味な絵を燃やしたら呪われそう。

 でも火球は絵にぶつかる直前で消失した。


「えっと、今までと構造が違うから破壊できるかテストしてみようと思って。でも、やっぱりダメだったね……これまでの白い廊下も、壁に焦げ目1つ作れなかったんだ」


「へー。そんな実験してたんですね」


「うん。まあでも、この部屋の中でも魔法は使えるっぽいから、もう少し進んでみるよ」

「ウィリアム様、あまり無理はしないでください」

「大丈夫、わかってるよ」


 イアンからも(くぎ)を刺されたウィリアムは苦笑して応え、慎重に室内を進んで、奥にある黒い扉の前に立った。


「持ち手がない。押すのかな? 素材も不思議だ……あ、押してもびくともしないや」


 と、黒い扉に触れたとたんに、状況が変わる。



 ギイ……


「戻って!!」


 ドドドン


 軋む音がして、マーリンが叫んだ。

 ウィリアムは即振り返って、離脱する為に足元を高火力で爆発させる。


 イアンが閉じようとする濃茶の扉を風魔法と剣で無理矢理抑える、ガキンという音がした。その隙間をくぐるようにウィリアムが通り過ぎた。


 壁に激突するところだったウィリアムを、間一髪でマーリンの作った水魔法のクッションが全方位で包んで受け止める。イアンも、バキリという音を立てながら剣を抜き取り、扉が完全に閉まる前にくぐり抜けた。


 水魔法から解放されたウィリアムが苦痛に顔を歪める。


「痛……」

「ウィリアム様!」

「ごめんなさい……私の受け止めが不充分だったかもしれません」


 イアンとマーリンがウィリアムに駆け寄る中で、エレンは治癒魔法を展開した。ウィリアムの両足が焼けただれ粉々に砕けている。ウィリアムに駆け寄ったイアンも、扉を支える時に無理をしていたのか体の(すじ)のいくつかを痛めていた。それらをまとめて治癒する。


「いや、マーリンのクッションは完璧だったよ。この前の隣国の話からもうモノにしてるなんて、勉強家だね。……イアンと、エレンさんもありがとう」


 ウィリアムのお礼に対して、珍しくイアンが苦言を呈した。


「……無理、しないでください。『わかってる』と……そう言ったばかりじゃないですか」

「ごめん、どうなるか気になってさ」


 そう言うと、もう平気な顔して立ち上がり、ウィリアムは続けた。


「でも、そのお陰でいくつかわかったことがある。

部屋の先の扉を、下手に触るのは危険だ。

たぶん、開けるには必要な手順をたどらないといけなくて……この部屋については、不気味な絵がなんらかのキーになっているんだと思う。

あと、夢だと侮っていたけれど……この夢の中で作った怪我は痛みを伴い……治癒魔法で完治する……そして、痛くても夢は覚めない」

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