63《6》聖女の平日ダイジェスト
そんなわけで次の休日である。
え? 省略された平日はなにしてたって?
ふはは、怠惰の限りをむさぼってやるぜ!
などと思った時期もあったものの、貧乏暇なし生活が染みついているエレンは、基本的になにかしてないと落ち着かないので、結局だいたいなんかしている。
しかしその全てを書こうとすると、とても1話では収まらないので、ダイジェストでお伝えしよう。
聖女っぽいことだと訓練場や病院をのぞきに行って、お話したり応援したり、ちょっとした雑用を気まぐれに手伝ったりしてる。あと怪我している人がいたら治癒魔法をかける。
『病院に来た患者を治癒するのは営業妨害じゃないかしらん?』とか思っていたので今までやらなかったのだけど……エレンが風邪引いた時に先生となんとなく話したところ、むしろ大歓迎と言われた。
「治癒魔法のほうが傷が残らなくてありがたいよ。え? 商売上がったりにならないのかって?
エレンちゃん病院でお金払ったことないでしょ? 時間外や出張オプションは自費請求するけれど、基本的に病院は税金運営だからねえ。聖女が人である限り、僕達の仕事はなくならないんだよ」
ほほーん? じゃあ迷惑じゃないんだすな!
半分くらいわかったエレンである。
そんなわけで病院には気が向いたら行っていて、病気の人にも、治癒魔法の人体実験をさせてもらえるのがエレン側のメリットだったりする。
でも、病気はあいからわず全然治せないので、最終的には「元気になーあれ!」とおまじない魔法を適当にかけて大雑把に終了している。
訓練場にはイアンがいそうな時間帯をねらって遊びに行っていて、イアンに送ってもらう帰り道が幸せ。
訓練場といえば最近、見学に来る女の子が増えたなあと思った途端、兵士達が急激に垢抜けたので、エレンは非常にびっくりした。
小指だけ伸ばしていた謎爪を切ったり、無精髭を伸ばす無精をやめたり……エレンにはわからない謎のこだわりを、ついに彼らは捨てたのだ!
「私が『そのこだわり捨てたら』って何回言っても変わらなかったのに、どういうことだね」
エレンがそんな文句を言ったところ「だってエレン様はイアン様に夢中じゃないですか」と兵士の1人が言い、「外見整えたところでイアン様には勝てないもん」「なー」と続いて他の兵士達が「うんうん」とうなずいた。
最初はイアン目的っぽかった女子達も、ちやほやしてくれる兵士達にまんざらでもなさそうで、キャットファイトにならなくてよかったなあと思うエレンである。エレンが作った15箇条を心に深く刻んだ彼らは、他の女子から見ても大体好ましいのだ。
ただし効果には個人差があります。
趣味的なやつだと、新旧家族とお茶したり庭いじりしている。観賞目的の、食べられない植物を育てる日が来るなんて……! とエレンは感動しながら、チューリップの球根を植えた。
最初はチューリップの種を買おうとしたけれど、種からだと花が咲くまで5年以上もかかるらしくて聞くだけで挫折した。
でも咲いていられるのはたった2週間……セミみたいだ。食べられない花なので、エレンは知らなかった。
っていうか、なんか球根系って毒花多い気がする。花びらがもちっとしてるし、根元もニンニクみたいでおいしそうなのに……! ドクダミに毒がないのも解せぬ。
エレンが土いじりを始めたところ「エレンも来てくれて嬉しいわ」と新旧母が不適に微笑み、同好会『庭を見る会』に招待した。大切に育てた花が咲いたら家に招待したりされたりして、のほほんと世間話の花も咲かせつつお茶する気楽な会である。
旧父さんも、最近ルカや新お父様にあんまり構ってもらえなくて寂しいからと、唯一の男性メンバーとしてのほほんと参加している。マイナスイオンが出ていてマダム達に大変人気がある。
八百屋にはエレンが料理しない日でも荷物持ちと称して、お手伝いさんの買い物について行くので、わりと顔を出している。
「ルカ君が学校に行っている日中だけでもまたアルバイトしない?」と大将に誘われて揺れている。
キンコーン
チャイムが鳴って、応対してくれた旧父さんがエレンを呼んだ。
「エレン、イアン様が迎えに来たよー」
「はーい」
エレンはぱたぱたと玄関に向かった。
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「今日はマーリン様とも一緒に行く約束をしているんです。少し遠回りになりますけど大丈夫ですか?」
「ザッツオーライ! もちもちです。あ、そういえば私マーリン様の家見るの初めてかも」
そう言うとイアンが不思議そうな顔をした。
「あれ? そうなんですか? 休日にエレンさんと買い物やお茶したりするって聞きましたけれど」
「んー、確かに最近よく遊ぶんですが……いつも町のほうに行くので、待ち合わせしてるんですよ」
「ああ、なるほど。あ、エレンさん、あれですよ」
「ええ! こ、こここ、マーリン様のお屋敷だったんですか……!?」
イアンが指差す先を見て、エレンは超びっくりした。そしてイアンが不思議そうな顔をしていたことにも納得した。
この国に住んでてこの屋敷を見たことないなんて人はいないでしょう。
エレンは、大使館とかそういう感じの施設だと思っていたのだ。立派すぎて! でんどんでんどん。
リヴェラの屋敷を彷彿とさせるお屋敷を見て、エレンは恐れおののいた。
さっすが王子様の婚約者様でやんす!
その辺のお貴族様と、更に次元が違うでやんす!




