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44《20》聖女は断罪会場に向かう

 3日目の朝、エレンは手帳を開いて、今日の日付に『3』と書いた。今日でループが終わりますように。そう願う。


 午前中はのんびりと過ごして、午後になると、リヴェラとエレンは、華やかなドレスを身にまとった。

 髪や化粧もメイドさん達が気合いを入れてドレスに似合うような素敵な感じに仕上げてくれる。


「うん、やっぱりエレンちゃんにはこの色がいいね。可愛いよ」

「えへへー、ありがとうございます。リヴェラさんもすごく綺麗です!」


 昨日着たクラシカルなワンピースも、今日着てるドレスも、身につけるアクセサリーも、全てリヴェラの持ち物だ。

 クローゼットの中を歩くなんて、エレンの人生史上で初めての経験である。

 普段着ですら、3着あれば余裕で着回せるエレンには信じられない!


 ドレスとか使う機会そんなにないのに……!

 レ、レンタルでよくないっスか?


 そうして用意が整ってリヴェラとエレンが1階に降りると、下で待っていたアレンとイアンが柔らかく目を細める。

 そんな2人は雰囲気がとてもよく似ていて、やっぱり兄弟だなあしかもイケメン……とエレンは思った。


「お2人とも、お待たせしました」

「ごめんね、結構時間かかっちゃった」


「いや、そう待ってもないさ」

「うん、それにお2人のドレス姿を、誰よりも早く見られて光栄ですよ。とても綺麗です」

「ああ、2人ともよく似合ってる」


 イアンとアレンはそんな風に、おめかしした2人を平等に褒めてくれる。

 エレンはイアンが普段から甘いので「えへへ」という感じだったけれども、リヴェラはとても恥ずかしそうに「……うん、ありがと」とお礼を言ってはにかんでいた。


 か、かわわ! なんて守りたい笑顔!


 綺麗系な人の可愛い笑顔というギャップに、エレンは萌えの極意を見た。いつか真似したい。


 そうして、アレンはリヴェラ、イアンはエレンの手を取って、馬車までの短い距離をエスコートしてくれた。


 エレンは、なんだか久々にイアンと手を繋いだなあと思う。

 アレンとリヴェラの切ない恋を知ってしまうと、2人の前で手を繋いだりとかはとてもできなかったのだ。


 そしてイアンも同じ考えのようで、2人の前では、エレンとも一定の距離を保っていた。


 そんなわけでエレンはエスコートが嬉しくて、イアンに笑顔を向ける。イアンもとても優しく微笑んでいる。


「今日は、イアン様も一緒に馬車に乗って護衛してくれるんですか?」


「いえ、国を油断させるには、私は兄から離れてるほうがいいと思うので。一定の距離を置いて着いて行きますね」


「ほほーそうなんですね、わかりました」


 じゃあ屋根とか見たら、イアン様いるのかな?

 馬車の中で暇な時は、イアンを探せゲームを心の中で開催しようと思うエレンである。



 そうしてエレン達を乗せた馬車が軽快に走り出すと、アレンが質問してきた。


「イアンは一週間前に入国したって言っていたが……エレンちゃんもイアンと一緒にここへ?」

「うんと……私は後からです。ここに来たのは、アレンさん達に会う前日ですよ」


 エレンがそう答えると、リヴェラが、ほほーと言う顔をする。


「あ、そうなんだ。イアンくんと同じホテルだったし、ずっと一緒なのかと思ってた」

「ところがどっこい、約束もしないで勝手に来たので……危うく会えないまま宿にも困る事態でした」


 いつも無計画だけど……さすがに旅先であれは危ない。


 今度からはそんな時はちゃんと護衛を呼ぼう。

 困った時は頼ってくださいって言ってたし。

 そう心に留め置くエレンだ。


 ってあれ? 護衛を呼びたい時はどうしたら……?

 エレンは護衛の名前を知らないのだ!

 たーすけてー! って言えばいいのかしらん?


「だめだよ、そんな、女の子なんだから気をつけないと」

「そうだなと言いたいところだが、リヴェラ……無計画で家出して変な奴とトラブってたお前がそれを言うのか……」


 エレンの無謀さに驚き注意するリヴェラに、アレンがものすごーく、胡散臭い目を向けた。


「うぐ! ま、まあ、経験者からの忠告……かな!」

「へーそれはそれは貴重なご忠告であらせられる。……エレンちゃんはこんな人になったらダメだぞ」


「うう、ほんっとーにあんたは、挑発のバリエーションだ、け、は、豊富よね」

「お褒めに預かり光栄だな」


 アレンの挑発的な言葉から始まるいつものやり取りにエレンは笑う。


「あ、そういえば、アレンさんは……リヴェラさんが家出した日に暴漢に襲われてピンチな所を助けて……そうして出会ったんですよね?」


 エレンは、リヴェラが危険な時に颯爽と助けに現れたアレンが、敵をばったばったとやっつける様を想像して、目をきらめかせた。

 だがしかしアレンは、んん? と首をかしげた。


「さあ? そうだっけ?」

「え! 覚えてないの?」


 ガーン! という顔をするリヴェラ。


「リヴェラに近づいた暴漢がピンチなところは見た気がする。そして俺は暴漢を助けた気がする。

……エレンちゃんに嘘を教えたろお前」


 そうしてアレンは、リヴェラが相手の股間を容赦なく幾度にも渡り蹴り続ける話を、それはそれは恐ろしそうに語るのだった。


「待って待って、そこまではしてないから! エレンちゃん、お願い信じて、アレンもなかなか嘘ついてるからね!?」


「ほらほら俺の目を見て、俺を信じろエレンちゃん、こいつは酷いやつなんだ……」


 焦るリヴェラと、面白がるアレン。

 アレンの目を見ると『冗談』と書いてた。深刻そうな声音で話しつつも、リヴェラから見えないところで目が笑っている。


 アレンと別れるまではそんな感じで、とても楽しい道中だった。


 そして、王城に到着して、アレンと別行動になる時に、アレンが言う。


「リヴェラ。お前の好きなようにやれ」


 リヴェラはその言葉に驚いて、そして笑った。


「うん、わかった」

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