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目覚めの魔王編 再出発

 夜が明ける。僕はヨハネの村で目を覚ます。


「おはよ!!湊さん!!」

 ヨナが元気よく扉を開ける。


「お、おはようございます」

 眠い目を擦りながら挨拶する。


「食事の準備ができたから食べよ!!」

 ヨナさんが笑いながら言う。今日も食事を用意してくれたんだ……。ありがたい……。


「あれ?ヨーハさんは?」


「あ……。この時間は供養しに行ってるんだ……」


「そうですか……」


「えっと……。ここの家って私とお婆ちゃんの二人暮らしなんだけど、それには理由があってね……」


「理由……?」


「うん……。元々は私とお婆ちゃん、あとお母さんとお父さんと弟がいたんだ……。ある日、私とお婆ちゃんが村を出て、薬草を摘みに行ってた時にそれは起きたの……」


「……」


「ゴブリンが……村を襲ってたの……。私とお婆ちゃんは助かったけど、村に残ってた皆は……」


(ゴブリン……。ということは魔物か……)


「そうですか……」


「お父さんと弟は死体になっていたから供養できてるけど、お母さんは連れて行かれちゃった……」


「……。そのゴブリンたちはどこにいるんですか?」


「えっと、魔王が今目覚めようとしてるのは知ってる?」


「はい……」


「魔王がもうじき目覚めるらしくて、魔物たちは魔王城に集まってるの。だから仇を打ちに行きたいけど、流石に私も多数の魔物たちと戦えるほど強くなくて……」


(なるほど。だから今まで魔物を1匹足りとも見てないわけだ)


「仇は勇者様が打ってくれるじゃろ」

 後ろからヨーハさんの声がする。


「あ!!おかえり!!」

涙を隠すようにヨナが明るく振る舞う。


「もう勇者様は召喚されてるし、魔王城に向かってるらしいぞな」


「あ!!そう言えばラハムの国からそんな報告が来てたわね!!」


「ほっほっほ。だから私たちの家族を殺したゴブリンたちも勇者様がすぐに殺してくれるじゃろう」

 ヨーハさんが僕を横目で見ながら、ニッコリと笑い言う。


「……。そうですよ……。勇者がやっつけてくれますよ……」

 僕も作り笑いしながら言う。


「そうだよね!!勇者様ならゴブリンも魔王も一捻りよね!!」

 ヨナさんが満面の笑みで言う。


「もうこの話は終わりね!!じゃあ湊さんの話を聞かせて!!」


「えっと……そうですね……。今までは……」


 ……。


 勇者という事を隠しながら今までの冒険の話をする。

 竜達の事は内緒にして、一人で冒険しているという設定にしておいた。


 ーー


「ではそろそろ行きますね」

 僕はヨナさんの家から出ようとする。


「え!!もう行っちゃうの!?まだ1日しか滞在してないよ!?」


「本当に申し訳ないです……。居心地も良くてずっと居たいくらいなんですが……」


「もう……。しょうがないなあ……。じゃあ行ってらっしゃい……」


「ありがとうございます。お世話になりました」

お礼を言い、扉を開ける。


 その時、

「頑張ってね!!勇者さま!!」

「応援してるぞ!!」

「あれが勇者さまだってよ!!」

「なんだか神々しいぜ……」

 ヨハネの村の人々が家の前で待機しており、一斉に言ってきた。


「!!」

 僕は思わず、びっくりする。


「ほっほっほ。勇者が村に来ておる事をちょっとお隣さんに言ったらすぐに広まってな……。すまんなあ……」

 ヨーハさんが笑いながら言う。


「湊が勇者って……どういうこと……?」

 ヨナが不思議そうな顔で言う。


「隠していたけど、僕が勇者なんだ……」


「……!!」

 ヨナが驚きを隠せないような表情をする。


「……」

 やがて落ち着きを取り戻す。


「……。魔王討伐頑張ってね……」

 ヨナが俯きながら言い、そのまま家の中に入っていく。


「えっと……」

 僕は戸惑いながらヨーハさんに視線を向ける。


「ほっほっほ。ヨナも照れてるんだよ。さ!!魔王討伐は任せたよ!!」

 ヨーハさんが笑いながら、僕の肩をポンと叩く。


「……。はい。頑張ります。皆さんもありがとうございました!!」

 僕は村のみんなにもお礼を言い、ヨハネの村から出て行った。


 僕はヨハネの村を背に、サイドールへ向かう。


「ロイドさん。あとどれくらいで着きますか?」

 体にブーストをかけ、走り続けながら聞く。


<このペースですと、あと2時間ほどで到着致しマス>

 ロイドは答える。


「よし、じゃあ張り切って行くか!!」

 僕は気合いを入れて、そのまま走り続ける。


 ーー

「……ヨナ。いい加減に顔をあげなさい……」

 ヨーハがヨナを慰める。


「湊さんが勇者だったなんて……」

 ヨナが言う。


「……。でも()()を見た時点で薄々気づいてたんだろ?」

 ヨーハがヨナに言う。


「……」

 ヨナが黙ったまま頷く。


()()()()()()()()なんて……。この世界はどうなるんだろう……」

 窓から外を見ながら、ヨーハはそう呟いた。

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