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目覚めの魔王編 ヨハネ村

 夜が明けた。

 先程街からでた僕は、次の街『サイドール』へ向かう。


<マスター聞こえマスカ?>

 声が聞こえる。


「ん?ロイドさん、どうしました?」

 声の主は、ロイドだった。無属性スキルで生まれたサポートロボット(?)だ。


<私ってロボットなのデスカ?>

 ロイドが心なしか悲しそうに言う。


「うわああ!!」

 思わずびっくりする。


「まさか、僕の考えてること読めたりするんですか!?」

 冷静を取り戻しながら、ロイドに聞く。


<はい、私はマスターと一心同体デス>


(じゃあエロいこと考えたりしたら大変だな……)


<私はそういうことに、偏見などはもっていないので大丈夫デス>

 ロイドがまた僕の心を読んで言う。


<サイドールまでは約200キロです。このペースだと1ヶ月くらいかかりマス。>


「ええ!!そんなにかかるんですか!?」

 あまりの遠さに驚く。そうか。普通はハリメドからサイドールまでは馬車で行くんだよな。

 夜逃げみたいな感じになっちゃった僕は足を使うしかないんだけど……。


「あ!!じゃあ瞬間移動系の無属性スキルを創造して……」


<いい方法がありマス。足が速くなる靴を想像してくだサイ>


「足が速くなる靴……。こんな感じかな?」

 そうすると目の前にブーツが出てきた。


<これはジェットブーツですね。これを使えば数日間で行けるでしょう>


「物質も作れるなんてほんとチートだね……」

 そんな事呟きながら、ジェットブーツで森を駆け抜けた。


 ーー

 やがて日が暮れる。

「そろそろ野営の準備をするか……。」


<マスター、この1キロ先に村がありマス>


「えっと。この世界って勝手に村に入っても大丈夫何ですか?」


<もちろん、大丈夫デス。普通の村なら歓迎してくれマス>


「よし、じゃあお世話になるか」

 そのまま村に向かって、走って行く。


 ーー

「ここか」

 村には大きな看板が立っていて、そこには『ヨハネ』と書いてある。


「ヨハネの村か……。とりあえず入ってみるか」

 そのまま村に足を踏み入れて行く。


 木造の家が大半で井戸などもある。花がたくさん咲いていて、綺麗な小川が流れている。


「めちゃくちゃ綺麗な村だな……」

 ポツリと思わず呟く。


「ありがとうございます!!冒険者さん!!」

 後ろから声をかけられる。


「うおおお!!びっくりした!!」

 甲高い声を思わず出してしまう。


「あはは!!ごめんね。」

 振り返ると、若い女の子が笑っていた。


「冒険者ってよく分かりましたね。」

 勇者ってバレても面倒なので、冒険者ってことにしておく。


「その格好ならどう見ても冒険者だよ。あ!!黒髪なんて初めて見た!!」

 サイドテールの女の子が、僕の頭をジーっと見ながら言う。


「えっと。黒髪の人って見たことないですか?」

 王宮に居た頃も、使用人たちに珍しがられたな。


「うん。少なくともこの村にはいないね」

 女の子が笑顔を浮かべる。


「申し遅れたね。私はヨナ。ここの村長の娘なんだ」

 自己紹介を女の子がしてくれる。僕も挨拶を返す。


「こんな何もない村に冒険者さんが来るなんて、何年振りかな……?」

 そう言いながら女の子が空を見上げる。


「あ!!立ち話もなんだし、私の家においでよ!!」

 ヨナが僕の手を引き、連れて行こうとする。


「ちょ、ちょっと!!俺は宿屋に泊まりますよ!!」


「この村に宿屋なんて無いよ!!」


「無いんですか!?」


「うん!!冒険者さんや行商人さんが来ることなんて滅多に無いってさっき言ったでしょ?」


「じゃあ……お世話になります……」

 初対面の女の子と1つ屋根の下というのはどうかと思うが、とりあえず泊まる場所を確保するために、大人しく付いて行く。


 そして周りよりも大きい家に着いた。レンガで作られていて、とてもお洒落なお家だ。


「ここが私の家だよ!!遠慮せずに入って!!」

 ヨナが家の中へと案内する。


「じゃあ……。お邪魔します……」


「お婆ちゃん!!ただいま!!」

 居間と思われる場所に、大きな椅子に座ってるお婆さんがいた。暖炉にあたりながら、編み物をしていた。


「おかえり、ヨナ。おや、そちらの方は?」


「この人は結城湊さん!!冒険者さんなんだよ!!」


「初めまして。結城湊です」


「どうもね。私はヨーハ。どうぞよろしくお願いします」

 お婆さんは、大きな椅子からゆっくりと立ち上がり、深々と挨拶をしてくれる。


「お婆ちゃん!!腰が悪いんだから、無理しないでよ!!」

 ヨナが慌てて、お婆ちゃんを椅子に座らせる。


「結城さんは今日私たちの家に泊まってもらうから!!じゃあ、私は晩御飯を作ってくるね」

 ヨーハはヨナが出ていったのを見計らって真剣な顔になる。


「結城湊と言ったね?」


「は、はい」


「結城湊。お主、勇者であろう?」

 ヨーハは僕を睨みながら言う。


「!!!!」

 僕は声にならない声を出す。


「ワタシくらいになると、なんでも分かるんだよ」

 ヨーハは僕を更に高圧的に睨む。


(ゴクリ)

 思わず、唾を飲む。


 ……。


「ハハハ!!なんだいそんな顔してさ!!」

 ヨーハさんは急に笑い出す。


「え……」

 僕はポカーンとしながら声を漏らす。


「お主の襟にバッチが付いていたから、気づいただけだよ」

 ヨーハは微笑みながら答える。


(そういえば、キンガールから勇者の証となるバッジを貰ってずっと付けていたな。すっかり忘れてた……)

 僕は襟に付いてあるバッジを触りながら思い出す。


「ヨナは外の世界のことをあまり知らないから、気付いてなかったみたいだけど、普通の人ならすぐに気づくもんだよ」

 そう言いながらヨーハは再び編み物を手に持つ。


「勇者は、やはり黒髪か……」

 ヨーハさんが小声で何か言い、僕の髪を何故か一瞬見たが、すぐ編み物に視線を戻す。


「まあ今日はゆっくりしていきなさい」


「はい。ありがとうございます」


「結城さん!!お婆ちゃん!!出来たよ!!」

 ヨナさんが違う部屋から声をかけてくれる。


「じゃあいただくとするかね。お主もついておいで」


 ーー


「おいしいです!!」

 王宮やハリメドの宿屋での飯も美味しかったが、ヨナの作った料理もとても美味しかった。


「えへ〜。そうでしょう〜」

 ヨナがニコニコしながら言う。


「ほっほっほ。どうじゃ湊殿。うちのヨナと結婚してみんか?この食事が毎日食べれるよ」

 ヨーハが笑いながら言う。


「ちょ、ちょっと!!お婆ちゃん!!」

 ヨナが顔を真っ赤にする。僕も愛想笑いをしておいた。


「しょ、食事も済んだことだし、湊さんの部屋を案内するね」


「ヨナと同じ部屋じゃなくていいのかい?」


「もお!!湊さん。こっちね!!」


「今日はゆっくり休んでね。明日もっといっぱいお話聞かせてね」


 ーー


「ロイドさん。今って何時なんですか?」


<現在22時デス>

 ロイドが答える。


(寝るには早いかもしれないが、今日はとても疲れたので早めに休ませてもらうとしよう)

 そう思いながら僕は眠りについた。

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