異世界召喚編 湊の過去Ⅲ
僕は転校して、すぐに色んな人と話す事が出来た。
昼休みになると、最上愛佳さんと姫野加恋さん、そして築地竜くんが学校を案内してくれた。
(転校生なのに優しくしてくれるなんて、みんないい人だな……)
そんなことを思いながら、これからの学校生活を楽しみにしていた。
学校を一通り案内してもらうと、最上さんと姫野さんが用事でどこかへ行ってしまった。
築地くんと2人きりになり、外に一緒に出た。
(体育館裏に連れてくるなんて、変わってる人だな……)
そんなことを思いながら、築地くんの方を見る。
……?
築地くんの向こう側に人影が見える。
(あれは……姫野さん……?もう1人は教師かな……?)
そんなことを考えていると、教師が姫野さんの肩を掴んで、無理やりキスしようとしていた。
(……!!助けないと…………!!)
僕は思わず、築地くんを置いて走り出す。
「……!た、助けてください!!」
姫野さんが僕に助けを求める。
「な!!こんな所に人が来るとはな……。しかしクソガキじゃ俺に敵わねえよ!!」
体格の良い教師が僕を殴ってくる。なんどもなんども殴られる。
(クソ!!めちゃくちゃ痛い!!けど目の前の女の子を助けれない男が、ルカちゃんに顔向けなんてできない!!)
その時、
「転校生えええ!!しゃがめええええ!!」
大きな石を持った築地くんが石を投げてくる。
僕はすぐにしゃがみ、石は頭上を通り過ぎていく。
そして、石は教師に見事にヒットし、そのまま教師は意識を失った。
「転校生の人……。いや、ゆ、ゆ、結城くん……!ありがとう……!!」
加恋さんが僕にお礼を言ってくれる。
……。
ーー
僕たちはある日、異世界へ飛ばされた。
魔王を倒すべく、勇者に選ばれた僕は巻き込まれて召喚された3人と共に旅をするのだった。
「ゆ、勇者様のオーラがとても大きくて真っ黒なんです!!!見たことないくらいに!!!」
途中で助けた馬車に乗っていた、町長の娘『ルチェ』がそう言う。
ルチェはオッドアイでオーラを見ることができ、人の善悪を見抜くことが出来るらしい。
(僕のオーラが黒?と言うことは僕は悪ってことか?)
ルチェの言葉に耳を疑う。
ーー
「ルチェのオーラは絶対だと言い切れる。申し訳ないが、私は勇者様である貴方を信頼できない」
ハリメドという街の町長が僕にそう言い放つ。
盗賊を倒して命を守ったのに?ましてや関係のない世界のために戦いを強いられてるのに?
竜が僕の肩をそっと叩いてくれる。他のみんなが僕を慰めてくれるが、もう僕の心には響かない。
宿屋に戻り、各部屋にそれぞれ入っていく。
僕の希望で1人部屋にしてもらった。
なあ……。ルカちゃん…………。
僕は悪じゃないよね?…………。
ルカちゃん……。会いたいよ……。あの頃みたいにいっぱい遊んでいっぱい笑いたいよ……。ルカちゃん……。




