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異世界召喚編 最後の日

「もうすぐ着くわよ」

 金髪ツインテールをなびかせた少女レナが言う。


 森林を抜け、草原をしばらく走ったら、街が見えてきた。


「大きな街だね〜」

 愛佳が馬車から顔を出す。


「そうでしょう〜。これが私たちの街、ハリメドよ」

 レナがエッヘンと言わんばかりに胸を張る。


「ようやく着いた……」

 馬車の外では、竜がヘロヘロになっていた。

 そのまま街の門に着く。


「あれ?ナインさん達じゃないですか?どうなされました?」

 ハリメドの門番らしき人が言う。


「実は、途中で盗賊に襲われてしまい……」


「ええ!?娘さんや姫様達は!?」


「無事だったよ。勇者様達がたまたま通りかかり、助けてくださったんだ」


「ゆ、勇者様だって!?」

 門番が驚きながら言う。


「あ、どうも……」

 目が合った門番に軽く会釈する。


「こ、これが勇者様なのか……。見た目は普通の青年だな……」


「舐めたらいけないぞ。勇者様は20人ほどの盗賊を一瞬で蹴散らしたからな」

 ナインが威張りながら言う。


「な!!そんなお強いんですか……」


「とりあえず、ラハムまで行くのはまた今度になってしまった。またこの街に滞在しても大丈夫か?」


「ええ!!もちろんですよ!!姫様がまだ滞在するとなれば、この街の人々はまた喜ぶでしょう」


「あ。恐れ多いのですが、勇者様たちはギルドカードを持っていますでしょうか?」


「ええ。持ってますよ」

 そう言いながら、僕たちはギルドカードを門番に見せる。


「はい、確かに確認いたしました。ではお入りください」

 門番が門を開けてくれる。僕たちは馬車を預けて、歩いてそのまま街に入っていく。


「あ!!姫様が戻ってきた!!」

「あの黒髪の人って……。勇者様じゃない!?」

「まじか!!生の勇者様だぜ!!」

「勇者の仲間の女の子かわいいな……」

 街がザワつく。


「なんだか注目浴びちゃってるね」

 愛佳が恥ずかしそうにする。


「そりゃそうですわ。セルザが騒がれるのはともかく、勇者様なんてこの国の救世主様なんですから!!」

 レナがニヤニヤしながら言う。


「ゆうしゃさま〜。かならずまおーをたおしてね〜」

 小さな女の子が駆け寄ってくる。


「うん。任せてね」

 女の子に笑顔で答える。


「まあ湊さま。小さな子にも優しいですね」


「子供は好きですから……」


「なら、たくさんの子供を作りましょうね……」

 セルザが再び俺に近寄りながら言う。


「はいはい。そこまで」

 レナが再び引き剥がす。


「……」

 加恋がすごい怖い顔で僕の方を見る。


「とりあえずアタシ達の家に行きましょうか」


「ええ。そうね。盗賊のことなどを町長さんに伝えなければいけませんしね」


 ……。


「ルチェ。いい加減に顔をあげなさい」

 レナが少し怒りながら言う。いまだに俯いたまま、震えている。


「そ、そんなに僕が怖いかな……?」


「怖い……です……」

 ルチェが震えながら答える。


「どうしようか……」

 僕は肩を落としながら言う。


「まあそのうち湊の凄さに気づいて懐いてくれるわよ」


「あ。そろそろ着きますね。これが私たちの住んでる家ですわ」

 僕たちはとても大きい屋敷に着いた。


「すごいね〜。とってもおっきいよ〜。」

 愛佳が興奮しながら言う。


「そうですわね。私たちでも、もて余す広さですわ。それじゃ中に入りますわよ」

 レナがそのまま扉を開ける。ラハムの城ほどではないが、とても豪華で綺麗な内装だ。


「こっちのお部屋へどうぞ」


 ギギー。

 扉を開けると、高級な社長室のような場所に出た。


「お、レナ、ルチェ、おかえり」

 奥にいた男が言う。


「ん?姫様、忘れ物ですか?あとそちらの方々は?」

 男が不思議そうな顔をして聞く。


「忘れ物ではございません、実はーー」

 セルザが神妙な顔をして説明してくれる。


 ーー


「なるほど。それは難儀だったな」

 男がため息をつきながら言う。


「盗賊め。私の大事な娘だけでなく、姫様まで襲うとは……」

 男が頭を抱える。


「おっと見苦しいものを見せてしまいまいましたね。勇者様方、私はアウロです。この街で町長をやっています」

 男が頭を下げながら挨拶する。僕たちも順番に挨拶をする。


「パパー!!」

 ルチェがアウロに抱きつく。


「おお。盗賊に襲われて怖かったな。もう大丈夫だ」

 アウロがルチェをよしよししながら言う。


「パパ。盗賊より勇者様が怖い……」


「ん?もしかして……ルチェ……。勇者のオーラが変に見えるのかい?」


「ま、真っ黒なんです」

 そのフレーズが面白かったのか、セルザが吹き出す。


「あんたねえ。もういい加減にしなさいよ。さっきも言ったけど湊は勇者よ?勇者様のオーラが黒いなんて笑い話にもならないわ」

 レナが神妙な顔で言う。


「……。勇者様。ルチェのオッドアイについては聞いていますか?」

 アウロが俺に真剣な顔で聞く。


「はい。しかし、詳しくはまだ……」


「ルチェのオッドアイでオーラを見て、今まで何千人の善悪を見抜いてきたのだ。」


「例えば白いオーラが出ている人は今まで一度も犯罪などをおこなっておらず、黒いオーラを出している人は犯罪をおこなっていた、など確実に判別していたのだ」

 アウロがおもむろに席を立つ。


「元々治安の良くないハリメドだったが、ルチェのオーラを使い、行商人などの善悪を見抜いて、正しい方向へ街を発展させる事が出来たのだ」

 そのまま俺の前に近付いてくる。


「ルチェのオーラは絶対だと言い切れる。申し訳ないが、私は勇者様である貴方を信頼できない」

 そして僕の前に立った。まだ若い風貌なのに、かなりの威圧感がある。


「ちょっと!!お父様!!」


「すまんな。レナよ。私は勇者より娘を信頼したいのだ」

 アウロが俯きながら言う。


 ……。

 部屋の中は不穏な空気に包まれている。


「湊」

 竜が僕の肩をポンと叩き言う。


「そうだな」


「すいませんが、僕たちはもう出て行きます。」


「すまない。」

 アウロは下を向いたままだった。僕たち4人はそのまま部屋を出て行った。


 そして屋敷から出ようとした時、

「ちょ、ちょっと!!あ、アタシは湊を信用してるからね!!」

「私も湊様をお慕いしてますよ!!」

 2人が駆け寄って言ってくる。


「あ、ありがとう」

 僕は無理やり笑顔を作って言う。そして僕たちは屋敷から出ていった。


「ひ、ひどいよね。湊!!気にすること無いよ!!」

「おう!!気にする事ないぜ」

「ま、魔王を倒して、信頼してもらいましょう……!!」

 3人が慰めてくれる。


「もうすぐ夜だし、宿屋に泊まって、明日はサイドールへ向かうよ〜!!」

 愛佳が笑顔で言う。

 そのまま僕たちは宿屋に向かった。


 ……。


 宿屋は僕の希望で1人部屋にしてもらった。


 ……。


 俺は昔の事を思い出す。

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