異世界召喚編 召喚
幼いころの記憶が蘇る……ずっと消しておいていたはずの……
「湊くん。私ね、ずっと言わなければならないことがあったの」
小学生くらいの女の子が恥ずかしながら言う。
「ルカちゃん……」
同じく小学生くらいの男の子もドキドキしながら答える。
「私……ずっと……」
キキイイイイイイイイ!!
ドン!!
トラックが目の前を横切る。真っ赤な液体が飛び散る。視界が真っ赤になる。
ーー
(う〜ん…)
いつの間にか意識を失っていた俺は、少しずつ目を覚ます。
(今のは夢か……)
周りを見渡すとさっきまで教室にいたはずなのに、見慣れない場所にいた。
「てか、なんだここは………!?」
大広間と言うべきだろうか。いや、そんなものには到底及ばない広さだ。
辺りには数十人の騎士達が槍を天井に向けて整列している。
「う、う〜ん…」
「な、なんなんだ……。一体…」
「何が……あったんですか……?」
そこにはさっきまで一緒にいた幼馴染の3人がいた。
「みんな!!」
僕は安堵と歓喜で思わず大声で叫んでしまう。
「ひ、広いです……」
「どこだ此処……」
「さっきまで教室にいたのに……?」
みんなも僕もあまりに突然のことで何が何だか分かっていない。
そこに、低い偉そうな声が響く。
「ようこそおいでくださいました!!勇者さま!!む、複数おるのぉ……」
そこには王がいた。格好や言葉遣い、ゲームなどに出てくる王そのものがいた。
「申し遅れたのじゃ。わしはキンガール・ラハム。この国を治める国王である」
僕たちは状況を飲み込めないまま唖然としている。
「驚くのも無理はない……。ここはそなたらが住む世界とは別の世界。いわゆる異世界と言うところじゃ」
王を自称する男が話を続ける。
「い、異世界……?」
(異世界ってあれか?よく小説や漫画などに出てくるやつか?そんなのが実際するのか?)
3人の顔を見ると、僕と同じで口を半開きに開けたまま、唖然としている。
王は続ける。
「今この世界は新たに誕生した魔王に支配されようとしている。そこで、異世界より勇者を召喚して、魔王を討伐してもらうことが決定し、君たちを召喚させてもらったのじゃ」
パンクしそうな頭を抑えて、一旦冷静になる。
(この世界は魔王に支配されそうになっている。そこで勇者として僕たちが召喚された)
頭の中を整理できたところで、愛佳が王に質問を投げかける。
「なんで私たちなんですか〜?」
確かになんで僕たちなんだ。別にわざわざ召喚しなくても、この世界だけで解決すればいいだろう。
その質問を受けた王は、悲しい顔をしながら答えた。
「この世界の人々は弱すぎるのじゃ。勇者も存在せず、魔王に太刀打ちできるものがおらんのじゃ。しかし、古来より、勇者は異人を召喚することで誕生させられる。と言う文献があってな。国の総力をあげて、召喚の義をおこなったら、見事に君達が召喚されたと言うわけじゃ。かなりの年数がかかったがな」
王は俯きながら淡々と喋った。
「なるほど事情は分かりました。しかし、勇者一人を呼べばよかったんじゃないんですか?僕たち4人も召喚する必要は無かったのでは?」
「本当は勇者一人を召喚する予定じゃった。しかし、近くにいた他の3人も巻き込んでしまった。本当に申し訳ない。しかし異人である君達ならステータスも悪くないはずじゃ。この世界でも苦戦しないであろう。異人はこの世界の人よりも強いと言う文献もある。おそらく大丈夫じゃろう」
「なるほど。僕たちの中に勇者がいるということですね。しかし、まだ僕たちも頭が混乱しているので、少し頭を整理する時間をいただいてもよろしいでしょうか?相談もしたいですし……」
他の3人も俺と同じ事を思っていたのか、深く頷く。
「そりゃ、そうじゃな。とりあえず当分はこの王宮でゆっくりするといい。衣食住全て、不自由なく提供するぞ」
王はニッコリと笑い、この大広間から出て行った。




