異世界召喚編 属性
「スキルなんてものもあるんですね……」
「ご存じなかったですか?自分の属性にあったスキルをこの世界の住民は使えるのですよ。私は水属性を持っているので……」
『ウォーター』
そういいながら机の上にあるコップに水を出し始めた。はたから見るとかなりシュールだ。
「結構力加減が難しいんですよね」
ある程度注ぎ終わったら、出すのをやめた。
「わ、私もそういえば水属性ってうさぎさんに言われたから使えるのかな……『ウォーター』」
加恋がもう一つのコップに水を出す。加恋は水と氷と光属性を持っていると言われていたな。
「な、そんなすぐに……私なんか数か月は……」
ルリナさんが悔しそうにしている。
「俺っちは火属性と土属性だったから『ファィ』」
「だめですだめです!」
竜が唱えようとして、あわてて愛佳や加恋が止めに入る。
「竜~こんなとこでファイアなんか使ったらギルド燃えちゃうよ~」
「あ、そうか……」
竜が怒られてシュンとしている。
「そ、そうでした。ゆ、勇者様の属性は?」
こちらもシュンとしているルリナが本来の問いかけを思い出す。
「たしか……全属性って言われましたね……」
「ぜ、全属性……?」
「はい……」
「……」
「……」
ルリナが頭を抱えだす。
「き、規格外ですね……で、ではもしかしたら……」
頭を抱えるのをやめて、真剣な表情になる。
「伝説のスキル『無属性』がつかえるかもしれないですね」
「無属性ですか……」
「はい。存在しているかどうかも分からないですが、もしかしたら……」
「無属性スキルって例えば何があるんですか……?」
「言い出したのに申し訳ないのですが、何があるのかも判明してないんですよ。古代の文献によると『全属性を持つもの、個人の属性を持つ』と記されていて、この個人の属性を無属性って私が勝手に呼んでます」
「か、勝手に呼んでるんですね」
「わ、悪いですか……」
「いえ……別に……」
「とにかく!全属性を持ってるなら無属性スキルが使えるってことですよ!!文献によると自分が想像したものを創造できると記されていました」
「想像したものを創造……」
「ふふふ……笑っちゃだめですよ愛佳ちゃん……ふふふ……」
2人のやり取りを聞いて顔を更に赤らめるルリナ。
(もう完全にギャグ要員になってるね……)
「ゆ、勇者様は今何か創造したいものは!!」
「……そうですね。とりあえずこのギルドカードを閉まっておける場所が欲しいですね」
そう言った瞬間……
目の前にゲームのステータス画面のようなものが表示される。
「うわ!!なんだこれ!?」
僕は思わず声を荒げてしまう。
愛佳達には見えてないのか不思議そうな顔をされる。
「こ、ここにしまえるのかな?」
僕はそう言ってステータス画面のようなものにギルドカードを押し当てる。
するとギルドカードが画面に表示され、持っていたはずのギルドカードが無くなっている。
「ちょ、ちょっと早速作ったギルドカードを消してどうするのよ~」
愛佳が驚きながら言う。
「みんなには見えてないと思うけど、ここにあるんだ……」
そう言って画面に手を伸ばすと、ギルドカードが出てくる。
「……すごいなこれ」
僕は思わず声を漏らす。
「こんなスキル見たことない……やはり無属性スキルは存在したんだ……」
ルリナが膝をついて呆然としている。
「言っちゃ悪いけどルリナさんや加恋のウォーターがとてもしょぼく見えちゃうよ~……あと、もうこれから湊が何をしようが驚かないことにしたよ~……」
愛佳が呆れながら言い、竜や加恋も大きくうなずいた。