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RED  作者: リクライム
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RED1


 第一章

        第1話 暗闇の怪物   リクライム

 

 血だまりで目を覚ました。周りには数多くの死体があった。近くにいた人に聞いた。「なんでみんな死んじゃったの?」その人は静かに答えた。「新たに正義が生まれるためだよ。憎悪や心の病みの中で反発が生まれるのを俺はただ待っているのさ。」僕は分からずに黙り込んだ。「君はどっちだ?物語の中でしか正義を実感しようとしないなんて甘い考えさ。」そう言うとその人はゆっくりと僕の首に手を伸ばすそして首にあてると深くため息をしてから言った。「まあ、君は普通の人間だったわけだ。そして、君はここで死ぬ。」僕は無意識に血で濡れた男の肩に手をのせた。そして、彼に蹴りを入れた。しかし、彼は蹴りを受け止めると「面白いな。お前には俺を倒す資格がある。その目に偽りが無ければ俺の元へと辿り着くだろう……。」彼は言い終わるとともに姿を消した。彼のいた場所には肉片の山ができていた。

 

 第2話 始まった……。

 

 夢は覚めた。いや夢とは思えない。

何故ならあの……夢の血溜まりでついた血が消えていないからだ……。

体もだるくなってきた。今日は学校を休もう….。

ダルい学校を休もうと思ったがその願いはある男にかき消された。玄関のチャイムが鳴ったのだ。玄関を開けるとその幼馴染みは立っていた。誰かが思い出せない。ただ幼馴染みだったという事は確かだ。

「早く行こうぜ、もう時間無い」

催促されてやっと遅刻寸前である事に気付いた。「ちょっと待ってて」と言ってすぐに着替えたが「やばい、あと10分しかない」と言ってきた。それもそうだった。学校までは急いでも15分かかる。もう終わりだと思いつつも急いだ。だが、その努力もむなしくあと3分しかなかった。すると横の幼馴染みが崖を指差した崖下には学校がある。「まさか」と声を荒げて言うと「遅刻したら怒られるぞ、それでもいいのか?」僕は首を横に振った。「じゃあ行くぞ」そして僕の自転車を掴み急な崖を滑り降りた。「サンキューな悠人」その時ふと気付いた。僕は今まで幼馴染みの名前を忘れていたのだ。しかも自分の名前も忘れていた。彼の名前は悠人で家が隣……昔からの幼馴染みだ。それじゃあ僕は……何だ?

自分の事が分からない。

「どうしたんだ?もうすぐ始まるから速く行こう」

「ああ、そうだな」

仕方ない……行くか……。学校に着いたはいいが肝心の先生が遅刻していた。急いだ意味は無かった。

自分の席について腰をおろす。

いつもそうだった。いつも運が悪くて不幸なんだ。でも、それ以上悪くなることは無かった。僕はある意味幸運なのかもしれない。

 しかし、そんな事を考えていても自分の名前は思い出せない。ずっと考えているうちにあっという間に放課後になった。家に帰ってもすることが無いから宿題を学校で済ますのが日課だった。

不意に黒板を見上げると張り紙がでかく貼ってありそこにこの学校でこの前起きた事故が大々的に書いてあった。ある教師が一か月前に足を滑らせ階段から落ちて死んだ。っという内容だった。だが、不可解だった。警察は暗くて足を滑らせ落ちたと言っていたが死体は靴のかかとが何か鋭利な物で斬られた様に削れていた。その教師はその日は夜遅くまで学校に居た。しかも一人で居た。おそらく部活だろう。夜遅くまでやってるからそんな目に遭うんだなんて思ってても言えない。でも少し興味が湧いてきた。人が死んでるんだからそんなこと考えたらダメかもしれないけど何故か夜に学校に行ってみたいと思ってしまった。好奇心かもしれない。

さてどうやって忍びこもうか……。

大体の学校は夜に閉まる。僕の学校もそうだ。だが職員室の鍵で型を素早く取っておけば問題ない。そんなこんなで学校に乗り込めた。部活が終わるのを待っていたせいか寝てしまって11時だ。遅すぎたかな、て思ったがここまで来たんだから今更何もせず帰るのは嫌だから仕方なく歩き回った。そして問題の階段のところまで来てしまった下の階は見えないほど暗い。こんな時に限って新月でライトの光だけ。幽霊は信じないタイプだが多少は怖い。階段をなるべく音を立てずに歩くと前の廊下から人影がある。やばい……。

素早く隠れると人影は廊下を通って行った。

先生まだいたのか……。

早く帰らないと……。

「ガガガガガっ!」

下の階から何か音が聞こえた。その音はどんどん近づいてくる。「な、なんだ。何か来るぞ。」階段の上から下を見下ろした。暗すぎるから下が見えない。月が無いんだ。よく考えると何年か前からずっと新月だった気がする。誰も何も言わないけど……。月明かりは無く音だけが聞こえるヤバい状況だ。でも、逃げるわけにはいかない……。

音は次第に大きくなり、上がってくるのが分かる。その化け物は急に這い上がってきた。人じゃない狼の様な化け物だ。奴はすごく大きく3メートルくらいの化け物だった。しかも鋭く長い爪だ。おそらく先生を殺したのはこいつで間違いない。その狼はこっちを見るなり喋れ出した。「貴様は勇者とは何だと思う?」すごく怖い。奴の牙には血が付いていた口の中には人の残骸らしきものも見える。だが、こういう場合は答えないと殺されるのだろう。ビビリながら仕方なく答えた。「勇者っていうのはな、アニメの主人公みたいにカッコつけてる奴の事だ。それを厨二病と世間は言うがカッコつけた奴がカッコいい事をする。それこそ本当にカッコいい事だと思うんだ。」狼は目を見開いて言った。「不合格だな。だがお前は私のボスが見込んだ者だ。気づくチャンスをやろうではないか。」狼は前足の爪で切りつけてきた。その速さにびびって倒れたが運良く避ける事ができた。「何故あの先生を殺したんだ?」突然そんなことを聞いてしまった。なんとか生きる為にとりあえず話を続けて隙を突いて逃げたかった。狼は無視して向かってくる。突然理性が無くなった様に唸り声を上げて走ってくる。狭い廊下は逃げられない。階段に手をかけて階段を滑り降りた。上から階段を壊しながら化け物は向かってくる。何とかして倒さなければ殺される。でもそんな隙は奴には無い。1階まであっという間に降りた。走って校庭まで行こうとした。だがあの狼は追ってくる様子が無い。夢だったのか気になって校舎に戻ったがいない。逃げたのだろうか。何の音さえしない。だが勘違いしていた。奴の策にはまっただけだった。入ってすぐだった真上から奴の爪が肩に突き刺さるとともに激痛が襲う。苦し紛れに蹴りをいれるが奴の体は硬かった。そして狼とは思えない蹴りを放ってきて吹き飛ばされて転がっていった。「俺にはまだ生きる理由がある。何故か自分の名前や過去が中途半端に分からなくてな。何があったのか俺は知りたい。」そう言うと少し勇気が出た気がした。死ぬのが怖いわけじゃない。ここで負けることはプライドが許さないだけだった。狼は口を開き走ってきた。食い殺すつもりだろう。狼の噛む力はどのくらいかはわからないが奇跡だった。手で噛むのを止めた。そして蹴りを放つさっきまではなんともなかった蹴りだった。やっぱりだ。変わらなく痛いし足が折れたかもしれない。だが狼は苦しみ暴れた。そして校舎を駆け上り屋上まで逃げた。息を切らして唸っている。「貴様はやはり……貴様なら彼の方を助けられるかもしれぬ。」奴の眼は優しくこちらを見ている。途端に何かが奴の後ろ側に周ったそして何かが起こった。何かが現れたと共に狼は校舎から落ちた。死んでいるのかもう動いていない。上を見上げたら人が立っていた。そいつは校舎中に響き渡る声で言った。「そんなガキに負けるとは、弱いな。そして貴様!貴様は勝ったのだ。だがまだ終わらん。貴様はこれから心病み死ぬのも苦しくなるだろう。」そう言ってそいつは暗闇に消えていった。狼の死骸はいつの間にか消えていた。引きずられたようだ。血の後が無数に散らばっていたからだ。追う事は考えられない。足は蹴りを入れまくったせいで重傷だ。痛すぎて立てない。なんとか立ち上がると家までゆっくり帰った。夢の続きでも見ているのか……。でも、傷の痛みは本物だった。狼の言っていた事が頭によぎった。みんな正義を実感している。子供の頃よくあったヒーローアニメ。ああいうのを人はヒーローと呼ぶんだ。カッコいいセリフを言って登場するヒーローはとてもカッコいいと思う。でも、現実ではそんな事言っても頭がおかしい奴なんて思われる。日常は僕にとってつまらない。いつもヒーローになって悪を倒したいと思っていた。だが、現実はそんなに上手くいかない。正義なんて実感できない人生を送っている。自分は何の為に生まれてきたんだ。なんていつも思う。答えは見つからない。見つからないなら生きる理由は無い。でも、何故か生きている。それが僕の日常……。

 

 第三話 Reborn

 

 変わりない学校生活、俺はため息を吐いていた。だが、悠人は相変わらず楽しそうだ。本人曰く人と楽しく喋ることで毎日退屈しないそうだ。それに比べて僕はあんまり喋らないしいつも根暗だ。でも、別にそれでもいいと思う。僕からしたら毎日同じこと繰り返して何が楽しいのかわからない。小学校も中学校も高校も入る前はいろいろ想像して楽しみでしょうがなかった。でも入ってみるとそんなに大差ない。別に学校というのはどこでもつまらないものなんだと、改めて実感させられる。今日はたまにある学校の文化祭だ。文化祭は珍しく楽しみだった。授業が無いからだ。でも、文化祭を始める前に校長先生が話をする事になっているんだが全然現れない。開会式の会場だった体育館はざわつき始めた。校長の車はずっと止まっているままだ。

もしかしたらあの狼が殺したのか……。

開会式が終わるとともに狼の死骸を探した。しかし、血の跡すら無くなっている。でもさっきから誰かが後ろから付いてくるのを感じていた。待ち伏せるとその足音は止まった。狼みたいに強い奴がさらに出てくるとなると最悪死者が出る。もう出てるけど……。不意に外が気になった。

外はさっきの活気が嘘のように静まりかえっている。

息をゆっくり吐いた。窓から外を覗くと誰もいない。人が消えた。明るかった太陽は青白い月に変わる。昨日の景色だ。暗闇の中をよく見ると何かいる。

あれは……あの時の狼か……。

狼らしきものが寝そべっていた。近づこうと階段を降り外へ出た。確かに昨日の狼だ。近づこうとするとその狼はゆっくり立った。そして近づいてくる。青白い光に照らされ姿を現したその化け物は血に濡れているのか。赤く毛が染まっている。目はとても暗く黒く濁りきっている。狼は口を開けた。赤い血が滴り地面に落ちていく。狼は苦しそうに話した。「君は昨日の事を………いやいいんだ。無くなったものはしょうがないな。大事なのは今さ、さあ再び戦おう。」狼に戦う理由はどこにあるのか。そんな事わからない。でも、そのわからない戦いに理由は存在している。理由さえあれば戦いは無意味では無い。でも、殺すのは嫌だ。

「君を殺したくはない。俺は人殺しはしたくない。」狼は怒り狂いながら言う。「今さら正義気取りか、お前たちは今まで人を蔑ろにしてきたんだろう?お前らがやってきた事に比べればこの戦いなど、生優しいもんだ。」 

確かにそうだ。殺されようだの殺そうだの生きようだの死のうだのそんなのどうでもいいんだ。それでも逃げてしまうよりマシだ。歩きながら狼に近づく。武器は無い。そんなの狼も同じだ。一気に殴りかかると狼は鋭い爪で襲いかかってくる。でも、勝てるはずもなく腕を切り刻まれた。手首を切られて意識が朦朧とする。やはり無理だった。ここで死ぬのも悪くないなんてそんな事まで今は思う。でも、それはできない。こんなところで死ぬんなら最初から死んだままの方がマシだ。狼はさらに追撃をかける。首だった。しかしピンポイントすぎる。上手く下に避け狼の腹に拳をぶち込んだ。狼には効いていないのだろう。すぐに蹴られ弾き飛ばされた。何故戦っているのか。またそんな事を思う。「お前の悲しみ、妬み、憎悪全てを今理解した。その重さ……僕は君にせめて心のよりどころがあればと願うしかない。」何故かそんな言葉が出てしまった。でも、分かる気がする。偽善は正義にはなれないんだろう。でも、だからといって悪いことしても嫌な気持ちしかしない。人間って曖昧だと思う。矛盾の塊、それが人間というものだろう。狼はまるでそんな事を考えているのを分かっているかのようにこちらを見ている。そして狼は走ってくる。もう恐れはない。

狼が爪で切りかかると同時に後ろへ下がる。すると狼も後を追ってきた。腕に力を込めようとするが力が入らない。傷のせいだろう。地面に膝をついた。狼は目の前に来ている。一撃に力を込める。そして薄れゆく意識の中殴りかかった。狼もすかさず爪で切りかかる。放った一撃は爪を避け狼に命中する。狼は少しぐらつきながら方向を変え、後ろに向き歩いていく。

「お前の勝ちた。お前は本当にいい奴だとわかる。普通の人間ではなし得ないものをお前はなし得た。ありがとう。」狼は静かに後ろを向き歩いていく。「何処に行くんだ?」と聞くと狼は少し笑みを浮かべて言った。「俺の恨みは終わったんだ。後は無い。負けた奴は用済みなのさ。」狼はふらつきながら歩いていく。だがその後ろ姿は何故か悠々している。狼は暗闇に消えていった。

また今朝昇ったはずの太陽が昇った。


 

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