だから音楽は辞めれない上
目の前には、いつも暗闇が広がっていて
私は、いつもその暗闇を怯えて歌っていた。
いつだか、友達を作った時があった。
ーー何故だか、裏切られたーー
理由があるわけでもないのに、私がいじめていると言われ、
逆に私がいじめられるようになった。
その子のことを信用した私が馬鹿だったと思う。
その日を境に私は友達関係と離れた。
友達を信じられなくなった。
何故怯えて歌った?
分からない……。
でも、歌を歌うと心が暖かくなる。
歌詞と言う言葉が慰めてくれる。
昔からそうだった。
私の隣にもう1人いて歌ってくれたからだ。
知らない男の子が……
歌詞とメロディーが頭の中で絡まり合って、旋律を奏でる。
当たり前だけど、凄いと思うのはなんでか……。
だから音楽は辞めれない!
中学二年の二学期。
私は、叔母の初音の仕事の都合で転校することになった。
初音は、何度もごめんねと謝ってきた。
「別に……初音姉は、仕事頑張ってね。」
初音姉は唯一のお母さんと言える存在だった。
母は、私を産んだ3年後に交通事故で亡くなったらしい……。
それからは、母の妹であり当時大学生だった初音が一人で育ててくれた。
私の心から信頼できる人。
どうせ、学校なんてどこも同じだ。
前の学校では、大きなグループ・絶えないイジメ・恋の噂などなんとつまらない…
だから私は、いつも屋上で歌を歌っているか読書。
この星城中学でもそうやって過ごそう………。
ため息と同時に、
教室のドアを仕方なく開けた。
「あっ!来た来た美少女〜〜」
「ウヒョ〜〜可愛くてよかった……」
男子ウザい……。
きっと性格を知ったら、離れていくに決まってる。
「髪サラサラ〜シャンプー何使ってるの?」
「私も知りたーい!」
ひぃぃぃ!!!
男子がウザいのは予想以内だったけど、女子はもっと
静かに、挨拶から始まるはず………。
それが勝手に髪を触るなんて…
前の学校が可笑しいのか、このクラスが異常なのか…
「席つけぇぇ〜〜〜〜〜」
ヒィぃぃ!!!
そして先生は、なんで窓から登場⁉︎
教卓の前まで先生が来て私の前で止まった。
…………………!!
「ええっと、今日は転校生が来た自己紹介!!」
明らかに動揺して、言葉の音程が可笑しかった。
前の教師は、キッチリと時間を守るのは当たり前、
こんなうるさかったら、きっと1時間説教になるくらい
だったのに……。
小さな教室には、19人と1人の教師が私を今か今かと
見ているので合った。
少し黒板に手をくっつき下がったまま、
「東京から、来ました。鈴堂 歌暖です。ヨロシクお願いします。」
自分でも納得のいく自己紹介だったと思う。
一礼だけして、先生の方に方向転換して
「先生、私の席はどこですか?」
と尋ねる。
先生は、教室のロッカーが近く一番後ろの席を指差した。
「いいなぁ〜〜詩音くんの隣……。」
「ズル〜〜イ!先生、私もあそこがいい!」
女子達が数人騒いだ。
きっと、このクラスのアイドル的存在な奴がこいつなんだ。
席までたどり着くと、無防備な顔をして呑気に寝ている
男の子が机にうつ伏せになっていた。
他の日焼けした黒い顔の男子とは違い、
真っ白い肌は、誰から見ても綺麗な顔立ちをしていた。
スゥースゥーと寝息を立ててまるで、幼い子供のようだった。
しばらく私は、みんなに見られないようにその子の顔を見ていた。
(なんか、落ち着く…私も眠くなってきた……)
「こっち見んな……。」
ボソッと小さく声が聞こえた。
見惚れている私の隣では、
どんぐり眼をした男の子の瞳がキッと上に釣り上がり、
睨みつけてきたのだ。
パッと目線を逸らし、私は授業が終わるまで雲をぼんやりと眺めていた。
次の時間は、先生企画の歌暖の質問コーナーをやり散々な目に合った。
フゥ〜〜〜〜
やっと1人になれたのは、昼休みにコッソリ抜け出し屋上に行った時だった。
さすが田舎と言える。
見渡す限り山に囲まれ、鳥達が絶えずにさえずっていた。
蝉の声が聞こえないと、もう夏が終わるのだなぁと感じた。
「夏が過ぎ〜〜〜〜」
歌い終わると、風が観客のようにサァーーッと吹いた。
「ラララン〜ララ〜〜ラ♪」
どこからか、先程私が歌ってた歌も口ずさんでいる声が聞こえた。
この裏だな……!!
口ずさんでいる方へ行った私は驚いた!
それは、朝から睨まれたあの男の子だった。
この頃の男子はみんな声変わりをし、
低い声が出るのに比べて、
彼の声は、まだ幼い少年のように透き通るような声を持っていた。
「「ラララララ〜〜ン」」
最後がハモり、
男の子の方が、こちらを見ているのに気がついた。
サッと目を逸らしたが、
気がついた男の子はどんどん近づいてくる。
こ、怖い……!
「おい!」
やっぱり、怒ってるよね。
逃げようかなぁ……。
そう思った時だった。
この人は、以外な言葉を放った。
「綺麗な声だ……。凄い!」
何言ってんだこいつ⁉︎
口をぽか〜んと開けている私に、
「俺の名前は、黒瀬 詩音。あれ?お前隣の席の……。」
と、考え込むような怪訝な顔をしている。
忘れられてたんだ……。
「えっと、確か…凛堂 歌鈴だっけ?」
ああ〜ちょっと惜しい!「鈴堂 歌暖です。」
「鈴堂さんは、歌が好き?」
いきなり言われたが、ここは素直に
「歌が好きか分かりませんが、歌を歌うと心が安らぎます。」
「クッ、それもう好きって言うもんじゃない?」
ハァ……そうですか……………。
少し会釈をして、もうそろそろ帰ろうと
私は、彼から離れた。
黒瀬君はそのままか壁に寄りかかって目を瞑った。
後、3分しないうちに昼休みが終わってしまう。
「行かないの……。」
「ああ、サボるわ〜〜」
平然とよくサボることが出来るなぁと少し感心してしまった。
こんな事をしていて、勉強についていけるのも
すごいと思う!
黒瀬君の噂は、休み時間中に沢山の女子が話していた。
頭も良くて、顔は小顔で美形そして、運動もそれなりに出来るらしい。
ただ、背が低いと言うのが惜しいらしい……。
ン?
待って、私より背高いけど…。
これはまさか……⁉︎
考える前にチャイムが鳴る。
「先生に、保健室行きましたって言っておいて…後…さ」
目を開いて、ジッと子猫のように見つめる。
まるで、おねだりをするかにように……。
「今日の放課後に、音楽室来て。」
へ?
意味がわからないけど考えている暇は無かった。
私はそのまま軽く頷き、教室に向かった。
放課後、教室には私と前の席の女の子だけしか居なかった。
みんな部活に行っているらしい。
女子には、さっきまで
「卓球部に入ってよ」 「テニス部簡単だし入って〜」 「女子はやっぱり家庭科部だって」
と勧誘がとにかく凄かった。
「あの、歌暖さんは部活入らないんですか?」
荷物を抱えて帰る時にさっきの女の子が話しかけてきた。
名前はえっと〜〜〜〜
「あ、秋羽さんは部活入ってないんですか?」
「え!私からなの?……………まぁ」
秋羽ちゃんはどこか哀しげな表情で、窓から
一生懸命走っているテニスや野球部を見つめている。
「私ね、父親が市では有名な病院の院長で、私一人っ子だから
親達は、私が後を継いでもらうため勉強だけでいっぱいなの。」
秋羽ちゃんは、みんなと同じで部活がやりたいんだ。
「だから、小学校から毎日塾に通っててね…」
「あれ?なんで私、歌暖さんに話したんだろう…」
さっきまでの悲しみにくれた顔から我に返った秋羽ちゃんの瞳には
雫がぽたっと溢れた。
ああ、私と同じだ!!
いや、私よりも努力しているのに……。
「でもね、私将来は立派な医者になるって言うのは自分で決めてるの。」
「凄い!泣ける……うう…うっ…ぐすっ……」
キョトンとした顔で、秋羽ちゃんが見てくる。
私が泣いたから?
「ふふ、歌暖さんって大人しい人だと思ってた。」
「え?大人しいよ〜〜」
「自分で言ってる時点で、違うよ〜〜」
まぁ、何がともあれ笑っている秋羽ちゃんが見れて良かった。
そのまま、私は秋羽ちゃんと別れて
気まぐれとして、音楽室に向かった。
まさか、このきっかけが私の人生に関わるなんて
まだ分からなかった。
扉を開いたら後は戻れない
歌の素晴らしさにに気づいてしまうから
ガチャッとドアを開けるとそこは
綺麗なはず……。
「もぉ〜〜やってらんない!」
「お前が音間違えるからだろ?」
「落ち着けよ…2人とも……」
床にはゴミのように紙が散らばり、机にはお菓子の袋と食べカス。
そしてうるさい喧嘩の声……。
(か、帰ろう…)
クルッと方向転換して、帰ろうとした。
「待った、歌暖さんだよね?」
手を知らない男の子に掴まれた!
ヒィィィ!!
「触らないで気持ち悪い……」
とっさだったのでそう言ってしまった。
言う気は無かったんだけど…かなり落ち込んでる…




