表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/37

31 岩窟族(ドワーフ)の里

 「リュオ、無事か!?」

 

 「は、はい!」


 リュオの無事を確認した兵士はその手を取ると、兵の後方へと連れて行く。

 

 「お前達は何者だ!! 何故人間がこのような所にいる!!」


 その後しばらくして、リリアン達を取り囲む岩窟族ドワーフの兵士の中から、ひと際派手な装飾がされている鎧に身を包んだ一人の男が近づいてくる。

 周りの兵士が道を開け頭を下げていくことから、この中で一番地位の高いものだと思われた。


 「私は岩窟族ドワーフ守護兵 兵長のクリュートだ。」

 「先ほどの質問に答えてもらおう。何故このような所に人間がいる??」


 これは答えを誤れば、殺されるな・・。

 さて、どう答えるものか・・。

 

 ジャキッ・・。 リリアンがクリュートの言葉で武器をさらに構える周りの兵士達の殺気を感じ取り、答えに迷う。

 しかし、その後ろからオーランが前に出てくるとゆっくりとクリュートに答えた。


 「久しぶりだな、クリュート。」


 「お前は・・・、まさかオーランか?!?!」


 「ああ。30年ぶりか・・。元気だったか??」


 「この野郎! 一体今までどこにいたんだ!! 1つも連絡をよこさないで!!」


 ハハハハハッ!!! クリュートはオーランの姿を確認すると、先ほどまでとは打って変わりその肩に手を置き大きく笑い声を上げた。


 なんだ・・・? オーランさんと知り合いなのか??

 でも岩窟族ドワーフって、よそ者には排他的なんだよな?

 人間と岩窟族ドワーフの間に生まれたオーランさんは差別されていたせいで里を離れたんだと思っていたけど、あの反応を見るとそうでもなさそうだ。

 それならどうしてオーランさんは里を離れたんだろうか・・。


 リリアンは笑みを浮かべながら再会を喜ぶ2人を見つめながら考えていると、オーランが振り返り、リリアンに右手を向けながらクリュートに説明を始める。


 「クリュート。こいつの名前はリリアン・バーリントン。俺の友人で、今回イザベラート陛下からこの里に立ち入る許可も貰っている。」


 「そうだったのか・・。いや、これは失礼した! おい、全員武器を下ろせ!!」


 『はっ!!!!』


 クリュートの命令を受けた兵士達は武器を下ろすと、その後ろに整列していく。


 「い、いえ! こちらこそ申し訳ありません。不用意にあなた方の土地に踏み入れてしまったことを謝らせて下さい。」


 「ハハハハハッ! では今回はお互い様ということにしよう。」

 「それで、どうしてこのような所まで来られたんのだ? オーランの里帰りに付き合ったという訳ではないであろう??」


 「・・・勘弁してくれ。」


 この2人はかなりお互いの事を知っているようだ。

 だからこそこれほど早く警戒を解いてくれているのだろう。

 このチャンスを有効に使わないと・・。


 「実は・・・。」


 クリュートはリリアンがこの地に来た理由である、魔導航空機グリアムリスやフリミア鋼の加工方法を探しに来ている事を全て話していった。

 その話を聞き終えたクリュートは少し表情が険しくなるが、しばらく考えた後答える。


 「そういうことか・・。」

 「・・・しかし私はただの兵士。その様な重要な事を決める権利はない。」

 「だが、族長に会わせることは出来る。そこで先ほどの事を説明するがいい。上手くいく保証はないがな・・。」


 「そうですか・・・。では、族長への取次をお願いしてもよろしいですか??」


 「・・分かった、承ろう。」

 「よし! お前達、客人を里まで案内するぞ!!」


 おぉぉぉぉ!! 兵士達は笑みを浮かべながら声を上げると、裂け目の中にある巨大な岩を動かし始める。

 10人以上の兵士の力でようやく動かし終えると、そこには下へと続く先が見えないほど長い階段が姿を現した。


 「さぁ、では参ろうか。」


 クリュートは魔法で階段のある洞窟の壁面のに備え付けられている松明に次々と火を灯していくと、リリアン達を先導し洞窟内へと進んでいく。

 

 こうしてリリアン達はようやく岩窟族ドワーフの里へと足を踏み入れていくのであった。
















 リリアン達はクリュートに続き洞窟内の階段を下っていくと、しばらくして先に出口が見え光が差しているのに気が付く。

 そこまで到着し洞窟を抜けると、そこには今までの雪山とは違い、温暖で緑に溢れる開けた場所が目の前に広がっていた。


 す、すごいな・・!!

 さっきまでとは大違いだ!! むしろ暑い位だな・・。


 「ここが我らの住む土地、岩窟族ドワーフの隠れ里だ。」


 「すごい・・! なんでこんなに暖かいんだ??」


 「本当ですね・・。 少し汗ばんできました。」

 アストンは未だ目を覚まさないニーナを背負いながら、額を流れ落ちる汗を拭う。

 その隣を歩くメイリーも、そのあまりの暑さに身に着けていたマントを取り薄着になった。


 「クリュートさん。何故ここはこれほど温暖なんですか??」

 「先ほどまでの場所では雪も積もっていたというのに・・。」


 「ハハハハハッ。なんだオーラン、説明していなかったのか??」


 「そう言えばそうだったな。」

 「いいかボウズ。ここは地熱によって温暖な気候になっているんだ。」

 「それに周りを全て標高の高い山に囲まれているお陰で雪雲も滅多に入ってこないし、北風も遮断してくれているんだ。」


 そういうことか・・。まさに言葉通りの隠れ里だな。

 ここなら雪解け水で水源には困らないし、植物も育てられる。

 逆に攻められたとしてもさっきの入り口さえ守ればいい。

 よくこんな場所を見つけたもんだ・・。


 リリアンはオーラン尾説明を受けながら更に里の中を観察していく。


 里の人達は斜面や岩肌を切り抜き、その中でに作った家で生活しているのか。

 あれなら厳冬期でも地熱で家の中の温度は保たれるだろう。

 それに周りを取り囲む山にいくつも穴が開いている。

 あそこから様々の鉱物を産出し、多くの工芸品を生み出しているんだな・・。


 「オーランさん。この里はとてもいい場所ですね。」

 「どうして帰ろうと思わなかったんですか??」


 リリアンはクリュートに出会ってからずっと心の中にあった疑問をオーランへとぶつけてみる。

 その言葉にしばらく考えた後、ようやくオーランが口を開こうとしたが、それはクリュートの言葉で遮られた。


 「さぁ、到着したぞ。ここが族長の屋敷だ。」

 「私が案内できるのはここまでだ。族長には既に話は伝えてあるから、後はお前達で頑張ってくれ。」


 クリュートが案内した先には、それまで見てきた家とは違い、石造りの豪華な建物が現れた。


 す、すごい・・。 規模は小さいが、大学の卒業旅行で訪れたパルテノン神殿に近い感じがする。

 まぁ、あそこは壁もなかったから寒そうだったけど・・。

 

 「ありがとうございますクリュートさん!」


 「なに、問題ないさ。」

 「オーラン。お前もあまり感情的にならないようにな。」


 「・・・・努力する。」


 感情的に・・? 何の事なんだろう・・。


 「あなたがリリアン殿ですね? 族長がお待ちです。」


 リリアンは、クリュートの言葉に意味に疑問を持ちながらも建物の中から出て来た若い男性の案内に従い、族長と対談するため目の前の建物の中へと進んでいった。














 「こちらでお待ちください。」

 リリアンは大広間に通されると、その中央に置かれている椅子に腰かけ、オーランを始めニーナ以外の者もその後ろに敷かれている絨毯の上に腰を下ろした。

 リリアンの目の前には巨大な椅子が置かれており、未だ族長は姿を見せていない。


 族長か・・。この会談で上手くいかなければ、魔導航空機グリアムリス製作も頓挫するかもしれない。

 ここが正念場だな・・。


 ガチャッ・・。 しばらくして大広間奥の扉が開くとリリアンの倍はありそうな体躯を持ち、胸までありそうな髭を蓄えた岩窟族ドワーフが現れ、リリアンの目の前の椅子に腰かける。

 それに気がづいたリリアンは椅子から立ち上がると、頭を下げ挨拶をした。


 「お初にお目にかかります。リリアン・バーリントンと申します。」


 「ほう、お前が・・。」

 「私が岩窟族ドワーフ 族長 リグルミルドだ。遠路はるばるご苦労であったな。」

 「まぁ。まずは座りなさい。話はそれからだ。」


 リグルミルドは笑みを浮かべながら答えると、リリアンもそれに応え椅子に腰を下ろした。


 「イザベラートから大体の話は聞いた。フリミア鋼の加工方法について知りたいらしいな?」

 「それと、連絡が上手くいっていなかったのか、里の入り口では苦労を掛けたな。」

 

 陛下から聞いている・・? あの人め・・、岩窟族ドワーフと連絡を取れる手段があるなら言っといてくれよな!!


 「い、いえ。」

 「それで、いかがでしょうか? フリミア鋼の加工方法、教えていただくことは出来ませんか?」


 「うむ・・・。」

 リグルミルドは髭を触りながら考え込見ながらも、リリアンの後ろにいるオーランへと視線を移した。


 「・・久しいな、オーランよ。」


 「ああ、元気そうで安心したぜ親父。」


 え?? 親父??

 ってことは、オーランさんは族長の息子?!


 「口の利き方は直っておらんようだな。」

 「まぁいい。それで族長を継ぐ気になったのか???」


 「ふざけるな!! 俺はあんただけは許すことは無い! 族長なんてもってのほかだ!!」

 バンッ!!! オーランは床を叩くと勢いよく立ち上がり、体を震わしながら声を荒げる。

 そのような姿を始めてみたリリアン、アストン、そしてメイリーは驚きで言葉を失った。


 「まだそのような事を言っておるのか?! お前は族長の息子、儂の跡を継ぐ責任がある!!」


 「うるせぇ!! 族長になるくらいなら、俺は死んだ方がマシだ!!」

 「・・クソッ! だからここに戻りたくなかったんだ!!」


 「待て、まだ話は終わって・・。」


 バタンッ・・。オーランは大広間の扉を乱雑に開くと、リグルミルドの言葉も聞かず部屋を後にしていった。


 「はぁ・・。すまぬな、客人の前だというのに・・。」


 リグルミルドはオーランの背中を見つめ、彼が大広間から出ていったのを確認すると、息を吐きながら椅子の背もたれに体重をかけた。


 「いえ・・。ですがオーランさんがあのように感情を露わにするとは・・。」


 「・・あいつも色々とあってな。」

 「お主もこの里の者とオーランの関係を目にしたであろう?」

 「今でこそ里の者はオーランを認めておるが、幼いころはその血筋から差別を受けたことがあったのだ。」


 やっぱりそうだったのか・・。

 クリュートさんのあの態度からは想像がつかないが・・。


 「ですが、オーランさんは族長の子。いくら人間の血が流れていようと差別するとは・・。」


 「ああ。表立っては誰もしていない。だが儂の目の届かぬところではつらい思いをしていた。」

 「そんなオーランを支えていたのが、母親だったのだ。」

 「その母親も今はこの世におらん・・。 その一因である儂をあいつは一生許さないであろう・・。」


 リグルミルドは小さく笑みを浮かべると、少し寂しそうな表情を浮かべるが、すぐに表情を戻しリリアンに視線を戻した。


 「ハハハハハ、すまぬ話しが逸れたな!」


 「い、いえ、そのようなことは。」


 「それで、お主の望みはフリミア鋼の加工だったな。」


 リグルミルドは再びしばらく考え込んだ後、口を開く。


 「申し訳ないがフリミア鋼の加工、その方法をお主に教えることは出来ん。」


 「え・・・。」


 リグルミルドの想定外の言葉に、リリアンを始め、その場にいた者は衝撃と絶望のあまり言葉を失った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ