23 新たな出発
新しく「─ LIVESTOCK ─ 人間は家畜として生きるしかないのか」と「─ DRAGON KNIGHT ─ 落ちこぼれ竜騎士見習い、なりゆきできまぐれ最強竜と契約してしまう」の2つを投稿してみました!
前者はかなりダークファンタジーとして書いており始めて書くジャンルなので読みにくいかもしれません(;^ω^)
後者はコメディー色が強いです!
時間がある時に目を通して頂ければ嬉しいです!!
国防会議が行われたその夜、リリアンはゴルバルトと共にイザベラートの執務室に呼び出されている。
これは女王たっての希望で、ついにリリアンはイザベラートとの対談に臨むのだった。
「再び呼び立ててすまぬな、リリアン。」
「いえ、陛下のご命令とあればいつでも参上いたします!」
執務室の中央にあるソファーに腰かけるイザベラートの前で頭を下げるリリアンは、笑みを浮かべながら答える。
その姿をゴルバルト、グストフ、ムリア伯爵、そしてもう一人の男性がイザベラートの側で見つめていた。
「ハハハハハッ! それは嬉しいことだ。なぁ、ゴルバルトよ。」
「はい。」
イザベラートの側に控えるゴルバルトは女王の前でも全く緊張している雰囲気を出さないリリアンの神経の図太さに少し呆れながらもイザベラートに答える。
イザベラート・イスティーア陛下。
確か年は父上の一つ上、41歳と聞いていたが全くそんな風には見えない・・。また、誰もが認めるであろうその美貌。
目を引く燃えるように赤い髪と瞳。20代と言われても信じてしまうだろう。
リリアンは目の前に座るイザベラートの美しさにあらためて息をのんだ。
「さて、リリアン。今日は本当によくやってくれた。礼を言わせてもらうぞ。」
「しかし魔導航空機を目にした時のファナリスのあの慌てよう。今思い出しても笑みがこぼれそうだ・・。」
クククッ・・・。 イザベラートは昼間のファナリスを思い出し、口を押え緩む口元を隠した。
「ですが陛下。あのような約束をされてよろしかったのですか?? あれではもしリリアン殿が敗れることになれば魔導航空機が・・。」
イザベラートの笑いが収まったのを確認したグストフが声を上げると、イザベラートもその言葉を理解し真剣な面持ちで答え始める。
「確かにその懸念はある。だがああでも言わねばファナリスは引き下がらなかったであろう。」
「それに軍事演習の場で翼竜に勝てずとも互角のスピードが出せると分かればファナリスの取り巻き共からこちらになびく者が出るかもしれん。」
「確かにそうではありますが・・。」
「ハハハハハハ! 相変わらずお主は心配性だな。なに、今の魔導航空機でさえあれだけの性能ということは貴族達も分かっているのだ。たとえレースに敗れたとしても何とかなる。」
イザベラートは不安そうな表情を浮かべるグストフに大きく笑い声を上げると、目の前のリリアンに視線を戻した。
陛下は簡単に言うが、これは少し難題だ。
翼竜の飛行速度は380ミア(km)。対して俺の作った最も早い魔導航空機のボルティアの最高速度は230ミア(km)。
150ミア(km)もの差を覆すにはボルティアの改良では不可能。
ということはつまり・・・。
「リリアンよ。8ヶ月後のレース、やはりお主も無謀であると思うか??」
イザベラ―トの言葉にリリアンは笑みを浮かべると、懐から一枚の設計図を取り出し目の前の机の上に広げた。
「フフフフッ・・。確かにボルティアでは翼竜に対抗するのは不可能。それならさらに新たな魔導航空機を作ってしまえばいいのです!!」
バンッ!! リリアンが広げられた設計図の上に右手を置くと、イザベラートを始め他の4人も机を取り囲みその設計図に視線を向ける。
「これは・・・。今日見た魔導航空機とは形が違うように見えるな・・。」
「そうですね。2枚の板が重なるように並べられていたのに、これは一枚だけのようだ・・。」
「その通りです!!!」
ムリア伯爵の言葉で手を口に当てながら考え込むゴルバルトにリリアンが目を輝かせながら近寄っていく。
「流石は父上、そこに気づくとは流石です!」
「これまでその板、翼が2枚だったのは従来の魔導エンジンでは出力が弱かったため、低出力でより多くの空に浮かび上がる力、揚力を得る必要があったからです。」
「う、うむ。」
「ですがボルティアに搭載されている魔導エンジンはこれまでの5倍以上の出力。いえ上手くすれば更に高出力な魔導エンジンを作り出すことも可能!!」
「であるならば空気抵抗を大きくする今の形はむしろ効率が悪い。この新しい形状が一番ベストなのです!!」
徐々に近寄りながら話を続けるリリアンに、ゴルバルトは一種の恐怖を覚え始める。
そのことに気づいたリリアンは我に返り頭を下げた。
「す、すみません父上。つい興奮してしまって・・。」
「よ、よい。これがどういうものなのかはよく分かったからな・・。」
「ハハハハハハッ! 戦場では勇名を馳せるゴルバルト・バーリントンも息子には敵わないということか!!」
2人のやり取りを眺めていたイザベラートが笑い声を上げると、他の者達からも笑いが起こった。
「それでリリアン殿。これは8ヶ月後の演習までには間に合うのか??」
「そうですね・・・。」
グストフの言葉にリリアンは口に手を当て考え込む。
ボルティアは開発までに約3ヶ月かかった。
今回作る魔導航空機はこれまでの物とはまるで違う設計だ。
それに更に高出力の魔導エンジンの開発、軍事演習という場で見せることを考え武装も考えないといけない・・。
そうなると・・・。
「・・・・ギリギリ間に合わないかも、です。」
・・・・・・。あまりにも正直なリリアンの言葉にしばらくの沈黙が続いた後、イザベラートが笑いながら答えた。
「ハハハハハハッ!! そうかそうか、ギリギリ間に合わないかもと申したか!!」
「私の前でそうも正直な答えを申す者は久しぶりだ!!」
はぁ・・・。笑い続けるイザベラートの姿に同じように笑みを浮かべるリリアンに、ゴルバルトは呆れたように息を吐く。
「よろしい。リリアン、お主はこの魔導航空機の製作に取り掛かるがよい。これは研究所独自開発ではなく、私からの依頼という形にして資金を回してやろう。」
「無論、依頼という形をとっても新型機の権利は開発責任者たるお主が持つことになるゆえ安心いたせ。 グストフ、そう言うことだ。後は頼むぞ?」
「はぁ・・。全く陛下の下では気苦労が絶えませんよ・・。」
「ですが分かりました。そのように取り計らいたいと思います。ですが今後は食後の飲酒はお止めいただきますよ?」
ガタンッ! グストフの言葉にイザベラートは勢いよく立ち上がる。
「な、何だと?! 何故なのだ?!?!」
「当たり前です。王家の資産も宮廷費も無限ではありません。さらに新たな出費となると不要な物から経費を削減する必要がありますからね!!」
「くっ・・・。よ、よかろう。」
「リリアン!! 私の唯一の楽しみを犠牲にするのだ。新型魔導航空機、絶対に開発するのだぞ!!」
「は、はい!!」
はぁ・・・。イザベラートのあまりの剣幕にリリアンが情けない声で答えると、イザベラートは力なく再びソファーに腰を下ろしていった。
「・・・そう言えばムリア伯爵。今日は本当によくやってくれたな。」
「いえいえ。臣下として当然の事をしたまでです。」
しばらくしてイザベラートは設計図に目を通していたムリア伯爵に声をかける。
ムリア伯爵はその言葉に笑みを浮かべると、胸に手を当て深々と頭を下げた。
「それに今回はこのディアスが上手くやってくれましたので。」
「そうか・・。ディアスよ、礼を言うぞ。」
「はっ!!」
ムリア伯爵は頭を上げると隣に立つディアスに手を向ける。
ディアスもイザベラートの言葉を受けると胸に手を当て頭を下げた。
ディアス・ハシュード。彼は王都防衛翼竜隊隊長である。
平民出身、さらに28歳という若さでありながらその地位に就くという異例の出世を果たしており、その地位に自らを就けてくれたイザベラートへの忠誠心はゴルバルトやグストフに引けを取らないほどである。
また、就任当初反発したルミアドール公爵を始めとする貴族達であったが、その立場に相応しいディアスの類稀な武芸の才能と人格を目の当たりにしてからは表立っての反抗をすることが無くなっていた。
「お主がいなければ魔導航空機は上空を警備していた翼竜隊の妨害を受けていたかもしれんからな。」
そう、今回のことは全て事前の計画通りだった。
国防会議前、事前に密談を行っていた父上達はルミアドール公爵の魔導航空機配備の妨害を予想。
その対抗策としてディアスさんと話を付けていたのだ。
リリアンは再び頭を下げるディアスに視線を向け、小さく笑みを浮かべた。
「しかしこれでさらに忙しくなる。恐らくファナリスも黙ってはいないだろう・・。」
「くれぐれもよろしく頼むぞ!!」
「はっ!!」
イザベラートが立ち上がり声を上げると、その場にいた全員が同時に胸に手をあて頭を下げるのだった。
王都内 ルミアドール公爵屋敷。
貴族の中で唯一ルミアドール公爵のみが王宮の敷地外に屋敷を持つことを許可されている。
その屋敷の一室にファナリスとシュナイドの姿があった。
「父上、お呼びでしょうか?」
「うむ。」
ファナリスは振り返ると手に持つグラスを机の上に置き、ソファーに腰かける。
「今日の国防会議でのこと、お前はどう思う??」
「はい。あのような魔導機械を国防に携わらせるとは正気とは思えません。やはりもはやイザベラート陛下にはこの国を治める資格がないのではないかと。」
ハハハハハ。 シュナイドの言葉にファナリスは大きく笑い声を上げる。
「相変わらず正直な奴だ。」
「だがその通り。あの女に任せていると王国はいずれ滅びるであろう・・。」
だが今回の事は上手くすれば女王を弾劾するよい機会になるかもしれんな・・・。
フフフフッ・・。ファナリスは不気味な笑みを浮かべると再びシュナイドへと視線を戻す。
「シュナイド。」
「心得ております。魔導航空機などというものはこのままにしてはおきません。」
「そうか・・、ではそのように取り計らってくれ。」
「はい。」
シュナイドはファナリスに頭を下げると、急ぎ部屋を後にしていく。
これで私の計画がまた一歩前に進んでいく・・。
ハハハハハハハ! ファナリスは一人になった部屋の中でしばらくの間笑い続けていた。
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