21 国防会議 前
今回は貴族が多く出てくるので自分でも誰が誰か分からなくなりそうです(笑)
国防会議が開始されてから3時間。
出席する貴族達にもいささかの疲れが見え始め、現在でいうところの煙草やパイプを吸う者も現れ始めるがなおも会議は続いていく。
「・・・これでこの議題は終了とさせていただく。」
ガサッ・・。進行を務めるグストフの言葉で貴族たちは目の前に置かれている書類をめくり次の議題が記載されているページを見つめる。
「では次の議題は各地に駐屯する軍の配備状況及び、穀物生産に関する報告であるが・・、バーリントン伯爵、お願いする。」
「はっ! ではまずは今年度の穀物生産の状況からお話いたします。」
ゴルバルトはグストフの言葉に頭を下げると立ち上がり、貴族達に説明を始めた。
「皆さん知っての通り、我が伯爵領は隣に位置するマスティーユ子爵領にまたがる王国最大の平野部を利用した穀倉地帯を有しており、そこから生産される穀物は王国総生産の2割を占めております。」
「それに加え今年は降雨量も多く、また農業用に転用した魔導車により例年よりも多い収穫量があると考えております。」
おぉ・・。 ゴルバルトからの報告に貴族達から声が上がる。
「それは良い報告をですね。わが領内は山間部が多く農業には不向き・・。」
「伯爵領で生産される穀物が増えればこちらに回してもらえる量も多くなる。領民たちの暮らし向きも楽になるというものです!!」
ゴルバルトの向かい側に座る若い男性、ペイドリッシュ子爵が声を上げる。
「もちろんそのつもりだペイドリッシュ子爵。そこで増産された穀物は全て市場に解放しようと思うのですが、いかがでしょうか陛下??」
「うむ・・。」
イザベラートは口に手を当てしばらく考えた後、笑みを浮かべた。
「バーリントン伯爵がそのように考えておるのならそれでよい。既に王都へ収める分は納入済みだしな。」
「それに市場に多く穀物が出回れば値も下がる。民にとっては願わしいことだろう。」
「ありがとうございます。ではそのように取り計らいたいと・・」
「お待ちくだされ!!」
バンッ! ゴルバルトがイザべラートに頭を下げようとした瞬間、ファナリスが机を叩き立ち上がる。
「・・いかがした公爵。」
「その様に無為なことをなさるのであれば、国境警備の兵達を養うことに回すべきです。そうすればより多くの兵を招集することが出来る。」
「無為なことだと?! ルミアドール公爵は民の暮らしはどうなってもよいとお考えか!?」
ファナリスの言葉にペイドリッシュ子爵が声を荒げるが、ファナリスは笑みを浮かべ更に続けた。
「ふっ、何も穀物を取り上げようと言うのではない。増産分を回せと提案しておるのだ。」
「今までも民は十分暮らしていたではないか。これ以上のことは平民共自身が考えるべきであろう。」
「・・わが領民は今でも王国に飢饉があれば飢えに苦しんでいます! それを和らげることが出来るというのに、ただでさえ十分な警備兵をまだ増やすと言われるのかっ・・」
ギロッ・・。自身に向けられた眼光に、ペイドリッシュ子爵はそこで言葉が詰まる。
「帝国への備えは万全でなければならん! 7年前のブルトワ子爵家の惨劇を忘れたわけではあるまい? お主は王国に万が一のことがあった時、責任が取れるのか!?」
「そ、それは・・・」
「王国の未来のために今は一領民のことなど今は気にしてはおられん! そうであろう皆の者。」
ファナリスの言葉に息のかかっている貴族たちは深く頷き、その他の貴族達は反応を示さないが反対もしなかった。
くそ・・、国境警備の兵と言ったところで国境の半分は公爵とその取り巻き貴族達の領土が占めてあるではないか・・!!
規定以上の数の兵はそれぞれの貴族が召集するのが習わし・・。結局のところ増産された穀物は公爵の懐に入ってしまう・・!
だが・・・。
ペイドリッシュ子爵は反論できない自身の不甲斐なさに拳に力が入っていく。
「・・双方その辺りにせよ。」
口を開いたイザベラートの言葉にファナリスとペイドリッシュ子爵はようやく席に座った。
「公爵よ、そなたは警備兵を増やせと申したな?? そのために増産分をまわせと。」
「左様でございます陛下。」
ファナリスは笑みを浮かべながら頭を下げた。
「・・確かに帝国への備えは必要ではある。だが兵は今でも十分な数を割いているであろう?」
「確かにそうではありますが、帝国との兵力差は6:4。兵はいくらいても困ることは無いかと・・。」
何を言うか・・・。
つまるところは自身が兵力を増強させる口実が欲しいだけだろう。
そうして発言力を高めていく・・、いつものことだ。
チッ・・。二人の会話を聞いていたゴルバルトは小さく舌打ちをする。
「・・分かった。では今回はそのように取り図ろう。それでよいな公爵?」
ザワッ!! 誰もが反対すると思っていたため、イザベラートの予想外の言葉に周りの貴族から声が上がった。
またファナリス本人もあまりのも呆気なく決定したことに驚きを隠せない。
「ではこの件はこれで決まりとする。双方承知したな??」
「勿論でございます陛下。」
「・・・承知いたしました。」
満足した顔で頭を下げるファナリスとは逆に、ペイドリッシュ子爵は少し表情を歪ませながらもその言葉に従った。
「では伯爵、次の件だ。」
「・・は、はい! では次に軍の配備状況ですが・・。」
イザベラートとの言葉に、ゴルバルトは慌てて次の議題に移っていく。
「現在王国の兵の数は約5万。その内約1万を帝国との国境に、その他の3万は各貴族達の指揮の元、国内の治安及び警備に従事。残り1万はこの王都に駐屯しております。」
「うむ。新しく国境警備兵を増やすため多少この数字は変更となるが、今の配備状況に問題はないだろう。」
ゴルバルトの隣に座る片眼鏡の初老の男性、ムリア伯爵が書類の数値を見ながら声を上げる。
「私も異論はない。」
先ほどの結果に満足しているファナリスもムリア伯爵の言葉に同意すると、他の貴族達も賛同していく。
「では配置は今まで通りといたします。」
「そして、ここからが本題なのですが、次の書類に目を通していただきたい。」
ガサッ・・。ゴルバルトの言葉に貴族達は書類をめくるとその内容に驚愕した。
「7連発が可能な魔導銃だと・・??」
ファナリスもあまりの内容につい驚きの声を上げた。
「はい。以前我が息子、リリアン・バーリントンが新型 魔導銃を開発したという噂は皆さんの耳にも入っていると思います。」
「確かに聞いております。なんでも人狼の鋼鉄毛を貫く威力があるとか・・。」
マスティーユ子爵はゴルバルトの言葉に書類に目を通しながら尋ねる。
「その通りだ。そしてその製造権利は王家に渡ったのも知っているだろうが、新たに更に改良・・、いや全く新しいと言える魔導銃をリリアンが完成させたのだ。」
おぉぉぉ・・。その言葉に貴族達がその日一番の声を上げた。
もしこれが本当であれば伯爵家が王家から手にする利益は莫大なものになる。
ここは今の内に手を打つべきか・・。
「・・つまりそれを新しく兵達に配備しようというのだな?」
「その通りです。」
ファナリスの言葉にゴルバルトは表情を変えずに答えると、その様子を伺っていたグストフが口を開く。
「実は既に王家が費用を出し製造工場を作り試験的に製作を開始し、近衛兵達には既に配備が完了しています。」
「王立魔導機械錬成所の報告によると、その性能は記載している通り従来の魔導銃とは比べものにならないほどの性能を有している。この結果を踏まえ、これから製造する魔導銃はこれの置き換えていきたいと思っています。」
おぉぉぉぉ!! 貴族たちからは再び声が上がるが、ファナリスの表情は険しくなっていった。
「お待ちくだされ! そういったことはまず国防会議の上げてから行うべきではありませんか??」
「バーリントン伯爵も勝手に魔導銃の製造許可を与えるのは法に違反しているのではないか!!」
ふっ・・。ゴルバルトはファナリスの言葉に小さく笑みを浮かべると、ゆっくりと答え始めた。
「公爵は何か勘違いをしているようですが、既にこの新型 魔導銃及び、これからリリアンが作り出す魔導銃の権利は全て王家が持つことになっております。」
「な、何だと?!」
「我が子リリアンという者はそういったことには興味がないらしく、研究費を王家が出すのであればという条件で簡単に権利を譲渡してしまいましたわ! 従って法には何も違反していません!」
ハハハハハハ!!! ゴルバルトは答えながらも堪えきれなくなり大きく笑い声を上げる。
「そういうことだ公爵。つまり王家が持つ権利をそのまま行使したまで、国防会議に上げる必要はないのだよ。」
ゴルバルトの言葉に続けるイザベラートにファナリスはそれ以上何も言えなかった。
「・・そこでだ! 今回はこの連発型 魔導銃を本格的に製造しようと議題に上げたのだが、皆の意見はどうだ??」
「そう言うことでしたら異論ございません。」
「私もです!」
「私も。」
イザベラートの言葉に貴族達は次々と賛成の意を表し、自分以外のすべてが同意したためファナリスも同意せざる負えなかった。
「ではこれは全員一致の議題として決定とする。」
「しかし既存の施設では兵全てに配備するだけの数を賄いきることは出来ん。そこでだ! 新たな魔導銃製造所を作りたいのだが・・・、ペイドリッシュ子爵、お主の領内で頼めるか??」
「へっ・・!??」
ペイドリッシュ子爵は思いがけない言葉に声が裏返るが、なんとか落ち着きを取り戻し答える。
「そ、それはもちろん願ってもないことですので・・・。しかし、よろしいのですか??」
「無論だ。お主の領内は山岳部が多いが、そこから産出される鉱物は多い。それに王都からも近いゆえ支援もしやすい・・、最も適任であろう。」
「・・・お、お任せください!!!」
イザベラートの言葉に、ペイドリッシュ子爵は涙を浮かべながら頭を下げた。
「更に予算が付き次第、マーセイル子爵、アグリッツ男爵領にも順次建造を開始したいと思っているが、両人はいかがであろう?」
「そ、それは願ってもないこと! よろしくお願いします!!」
「私も依存ございません!!」
マーセイル子爵とアグリッツ男爵も二つ返事で同意した。
「ルミアドール公爵もそれでよいな??」
「・・・・依存ございません。」
くそ・・、だからあれほど簡単に私の提案を飲んだのか!!
今名前を上げた貴族領は全て山岳部にあり、農業があまり出来ない土地。
しかし王家直々の事業となれば穀物、資金・・、その他にも多くの支援を受けることになりその利益は莫大なものになるだろう。
だが先ほどは陛下が私に穀物の件を譲った形だ・・、ここで再び私が意を唱え我を通せば他の貴族達からの反感も大きくなる!!
ぐっ・・! ファナリスは湧き上がる感情を拳を握り何とか堪えた。
「ではこれでこの議題は終了とする。続いては・・」
「次は私の上げた議題だな。皆の者、次の書類を見てもらおうか。」
グストフの言葉にイザベラートが声を上げると、貴族達は次の書類に目を通していった。
「魔導航空機・・? 陛下、魔導航空機とはいかなるものでございますか??? それに付属されているこの魔念写に写るものは・・・。」
「お主の疑問、最もだ。そこで今回はこの魔導航空機なるものを作った者をここに呼んである。詳細はその者に聞くとよいであろう。」
パンッ! イザベラートがペイドリッシュ子爵の言葉に笑みを浮かべながら答え手を叩くと、その合図で開いた扉の先にはリリアンの姿があった。
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