無色の世界
初投稿です。
太陽が地球を激しく照らし、暑苦しい虫達の鳴き声が響き渡るこの季節、一人の青年が仲間たちと協力しながら、それぞれに与えられた仕事を汗水を垂れ流し、必死に終わらせようとしていた。
「あーあ、今日の仕事早めに終わって、家に帰らせてくれないかなー」
「大丈夫、佐藤はどっちにせよ帰れねーから」
いかにも気だるそうな顔をした青年がポツリとこぼしたセリフに対し、青年というには年のいった顔つきをした男性が皮肉めいたセリフで返した。
「俺が帰れなくなったら意地でも、鳥田も道連れにするからな」
佐藤と呼ばれた気だるそうな青年は、鳥田という男性にイラッとしながらも、感情を押し殺し笑顔で、言い返す。
その言葉にまた鳥田は、皮肉めいた返答をするが、佐藤はめんどくさくなり適当に「はい、はい」と返答していると、いかにも真面目そうな眼鏡をかけた青年が割り込んできた。
「おい、お前らそんな話してる時間あるのか?ぱっぱと仕事やって、また次の仕事をもらいにいくべきだろ?」
「え、でも先輩が、今日はあまり仕事ないから、ゆっくり終わらせて休憩してていいって…」
「……」
鳥田はその上から目線の真面目な青年に対し、そう返答しているのに対し、佐藤はなにも言わなかった。
なぜなら、佐藤はその質問に返答したらめんどくさくなることを知っていたからだ。そして実際に、鳥田という男性と口喧嘩になっていた。
「いや、先輩に言われたからって、自分から動いてもらいにいくのが普通だろ、いつもいつも先輩に言われたからってやらないのはおかしいだろ」
「いや、だって、やらなくていいって言われたのに他に仕事やるのも変でしょ。前、その件で同じ事を2回も3回も言わせるなって怒られたし…」
「もう、めんどくさい」佐藤は心の中でそう思っていたが、できるだけめんどくさくならないルートを選びたまに自分に降りかかってくる流れ弾をうまいことかわしていた。
確かに両方の言うことは正しかった、入社1年目の人間はバンバン仕事をもらいにいくべきという考えはあっているとは思う、だか、先輩に何度も言われてることを繰り返すのもどうかと思うし、できるだけ楽をしたかった。だからこそ佐藤は、誰にも味方せず、中立な立場でなにも言わなかった。
それがいつもの光景だ。
だがその光景、いやここの雰囲気すべてが佐藤はとても嫌いだった。
皮肉めいた発言しかできない鳥田という男性、同期を自分より下の人間だと見て、上から目線で先輩に媚びを売る青年、さらには腐った先輩達しかおらず、仕事内容も佐藤にとっては苦痛でしかなく、そして何より、いつも周りに嫌われ、ばかにされるのを恐れ、自分の意見を言えず、一人じゃなにもできない自分が嫌いだった。
そんな佐藤の目から見る景色は白黒のなにもない世界にしか見えなかった。
「あぁ、仕事辞めたい」だがそれは叶わない望みだと佐藤は知っていた。
なぜなら、彼は今まで自分自身で決めて動いたことがない、つまり他力本願だったのだ。
そうなった原因は、2つある。1つは小学6年の学祭の出し物を決める会議の時だった、彼以外のクラスメイト全員が音楽、劇の2つのうちの音楽に手を上げた、だが彼一人は劇だった。彼は頑固だった、一度決めたことは例え意見が食い違っても突き通そうとしていた。
だがそれは叶わなかった。散々クラスメイトに反対意見をいわれ、問い詰められ結局泣いてしまった。それ以来、自分の意見を信じられなくなって、周りの意見に合わせるようになり、彼がこうした方がいいと思っていても、また問い詰められるのが怖くなってしまっていた。
2つめは、単純に人生すべてがめんどくさくなってしまっているからだ。最初は、親に甘やかされ、楽な方へ楽な方へ逃げているだけだった。だが、それを続けていくうちに彼は周りに置いていかれるようになっていた。それに気づいたのは高校1年の頃だ。何をしても周りに置いていかれ、勉強、運動、バイトすべてが劣っていることに気づいた。だが、彼は他力本願になっていることが原因と気づくことができなかった。気づくと、仕事も自分で決められず、彼はピーターパンのまま社会に投げ出されることになっていた。そしてようやくつい最近彼は、他力本願になっていたことに気づいたが、それを治すことはできなかった。何をするにしても一人じゃ失敗し、結局人に助けてもらってばかりだった。そんな自分だからこそ彼は今の仕事を辞められずにいて、この世の中に絶望していたのだ。
「あぁ、ファンタジー見たいに異世界に飛ばされて皆を喜ばされるような勇者に慣れないかな」
仕事終わり、彼は本屋に立ち寄り、ラノベの小説を見ていた。
それは彼が唯一この世界から離れ、自分が憧れるような存在になることができるもので、彼の唯一の好きなものだった。
そのときだけ、彼の目には色が宿り、たくさんの景色を見ることができた。とても幸せな時間だった。だがその趣味も終わりを告げようとしていた。
なぜなら彼はもう現実から離れることができなくなるくらい、精神的に追い詰められていたからだ… 自分自身に…
そして、思い悩んだ結果彼は、現実から逃げるただひとつの方法を使うことにした。
夜の風がひんやりとしてとても気持ちがいい、町全貌を見渡せるこのステージに光るライトは自分をここから一歩踏み出す応援をしてくれるように感じる。
「母さん、父さん、親不孝でごめんなさい」そう一言呟き、一粒の滴と一緒にそのステージから飛び降りた。
小説を書いてみたく書いたのですが、とても難しかったです。今後もゆっくりと上げていこうと思うので宜しくお願いいたします