翡翠の唄
浅ましい思いを抱き
痛みを隠してまた好きになる
嘘だと知っても
得ようともがき
終わりなど見えない振りをする
空っぽの心は何を求め
傷を舐め続けるのだろう
薬を塗ってもまた引っ掻き
今朝目覚めると昨日より
心がすり減って泣いていた
山茶花の見える窓硝子
時間の途切れた灰皿
素肌があなたを求め
背を向けても残り香が
そこらじゅうに散らばっている
大丈夫、最初から分かってた
ちゃんと愛してくれてたことも
疲れて眠って目を覚ませば
手のひらを返したように
突然愛されない日が来ることも
名前を呼んでくれた声を
二度と聞くことはない
脱ぎ捨てられたあなたのシャツと
寝る前に言ってくれたあの言葉は
残しておいても意味がないのに
はらはらとわたしが散り
翡翠の色の季節になった
舟に乗って遠くへ行けたら
平気な顔でさよならと言えたら
ほんの少しでも違っていたのかな
まだ覚えている
蜜に溺れるように愛して
むさぼるように愛されて
目も眩む部屋の静けさの中で
もう冬だねとあなたが言ったこと
屋根を打つ雨の音
夢でも見ているのね、
呼ぶはずのないあなたの声が聞こえるの。
珈琲淹れたよ、とか、今日は寒いね、とか、何気ない幸せをある日失うことになるかもしれないことを、女性はなんとなく察するものだそうです。