6 I'd love to turn you on
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翌日妙子はHRが終わるとすぐに担任に呼び出された。
「えーと、速水さんのお姉さん、T大だったのね…」
「……」
「大学から研究の協力依頼で、今週あなたを特別授業ということで貸してほしいって…」
「教育委員会からの話なので、校長も許可してます。10時に迎にきますって」
担任の女性教師は怪訝な表情を浮かべながら事務的に書類を妙子に渡した。
「はい、姉から聞いてます」
と担任を安心させるために、軽く嘘をついた。
「もう校長のところには来てるはずだから準備しておいてね」
迎えに来ていたのは北郷と事務課長だった。車は大学の公用車で運転手付き…。
不思議に学校内は静かだった。北郷は昨日から寝ていない様子で少し興奮気味だったが事務課長は冷静だった。
「速水妙子さん…校長先生には事情を説明いたしました。準備はよろしいですか、おそらく今週は大学にきてもらうことになると思います。」
「それと保護者の方に手紙を用意してきましたので渡してください」
「はい…」
「それでは校長先生、速水さんをお借りいたします」
校長は狐につままれたような顔をしながら、「よ、宜しくお願いします」と挨拶した。
授業中の校内は静かだった。妙子はこの場所に戻ることはないだろうと漠然と感じていた。通用口の近くに大学の公用車が止まっていた。運転手が妙子の姿を見て近づいてきた。「やあ、タエコまた会えましたね」
あのプラネタリュウムのおじさんだった。
「おじさん…」
『おじさんは止めましょう』
頭の中に直接響く声が聞こえた。
無言の会話で大学でこれから行われることが説明された。驚くようなことは無かったが、北郷がどの程度関わっているのかが疑問だった。
『彼はきっかけにすぎません。つまり善意の協力者です』
車が動き出しても、会話は続いていた。
『他にあなたをサポートしてくれる人間は後で紹介します』
北郷だけが、やけに上機嫌で話し続けていたが妙子の耳には入らなかった。
車は大学の正門から正面の賓客を迎える入り口に止められ、そこから事務課長と北郷と一緒に応接室に案内された。
しばらくすると白髪混じりのショートカットに年齢相応のしわはあるものの目許がきりっとした初老の女性が現れた。「学部長の神岡です。すみませんね急に来ていただいて」と言って出されていたコーヒーを妙子にすすめた。
なんとなく、運転手の「おじさん」と似た雰囲気を感じたので妙子は「おじさん」に話し掛けるように直接頭の中で話し掛けてみた。
『神岡さんはおじさんと同じ仕事をしているのですか』
『そうです、判りましたか』
『ええ、なんとなく』
『彼は我々の仲間で普段は神野と名乗っています』
『あれ、神がつくのですね』
『そう。日本では神の文字が入っている家系が我々の仲間です。もちろん全てではありませんが』
『これからここで妙子さんにお願いすることを説明しますが、私たちの存在と役割についてはもう少し後にしましょう』
神岡学部長は妙子の目を真っすぐに見つめ、少し微笑むようにソファーを勧めた。
I'd love to turn you on 君を目覚めさせたい
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