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プラネタリウムの恋  作者: kei
2/6

2 プラネタリウム

投稿が遅くなりました。

20時アップですみませんが・・・

2)

 気が付くと(ほんの数秒だったのかもしれないが)目の前に眩いほどの星空が広がっていた。

『プラネタリュウム・・・』

そう思った。しかし記憶に残る小学校の時に入った科学館のプラネタリュウムの椅子も、他の客もいなく、周囲はただ星が取り巻くだけだ。

 足元が薄い光で床のようになっていなければ完全に中空に浮いているような感覚だろう。急に不安になって振りかえるとおじさんの背中が見えた。

「おじさん、ここどこ? ていうか、おじさんナニモノ?」

声は少し響きながら周りに消えていく。

『ごめん。驚かすつもりは無いけれど、説明すると大変だからこうするしか無かった』

こんどは周囲から聞こえるのではなく、直接頭の中に入ってきた。

『そんなに怯えなくても大丈夫』

その声がまた頭の中に響くと、急に緊張していた身体がふわりと軽くなった。

『そう、少しリラックスしたね』

「きれいな星…」

『ああ、そうだね。いつも見ている星は汚れた大気を通して見るからこの半分も見えない』

確かに漆黒の背景にちりばめた白い砂のように瞬きもなく光輝く天空が目の前に広がっていた。そして静かだった。

「ここは何処なの?」

それに答えるように目の前の星空がゆっくり左上に動き出して青く輝く大きな地球儀が見えてきた。

「うわーきれい!」

妙子は思わず声を上げた。これまで見たどの映像よりリアルな地球の姿があった。

 薄い半透明なベールが外側を包み極に白い氷原を持ち、中央に深い青の海が輝く。

見慣れたアジア大陸からインド洋に雲の帯が続いていた。

その地球の映像が目の前で停止し、今度はゆっくりと回転していく。ただ、地球儀を回すようではなく、だんだんと暗い夜の面に変って行った。

その時妙子は地球が回っているのではなく、自分が地球の周りを回っていることに気づいた。

「ここ何処…」不安感ではなく純粋な疑問が湧いた。

『ここは地球から1500Km離れた宇宙空間です』

「本当?」

『ええ、本当です』

『まもなく日の出になります、太陽を直視しないように』

赤道にそって回っていた夜の大陸からまばゆい太陽の光が地球の輪郭をシルエットにしていた。

妙子はその光に背を向けるようにゆっくりとおじさんの方へ振りかえった。

反対側には薄白く光るスクリーンとこちらを向いているおじさんがいた。


『タエコ、落ち着きましたね』

「ええ大分ね、でも信じられない」

『驚かしてすみませんでした、こうしないとあなたにコンタクトできなかったものですから許してください』

「私に酷いことしないよね」

『それは約束します、私たちはエイリアンではありませんから』

「そうみたいね、でも何で私なの?」

『それを話す前に、私の仕事を話さなくてはなりません』

相かわらず、おじさんは妙子の心に直接話しかけてきていた。そのことに気づいた妙子は声を出さず直接、心の中で問いかけてみた。

『ネ、おじさんを何て呼べばいいの?』

『タエコ、上手くなりましたネ、それでいい。私のことは名前で呼ばなくても思うだけでいいんです』

『そっか、直接心が通じるから名前は必要ない…』

『ま、そんなところです。今はネ』

☆『それで仕事って?』

〇『地球の生命を見守ることです、すでにここに来て地球の時間で10億年です』

☆『!!…じゅうおくねん??って化石じゃん!!』

〇『そんな、人を化け物呼ばわりしないでください』

☆『じゃ、アンモナイトとか恐竜とか見てきたってわけ?』

〇『えーまー、そういうことです。人間もね』

☆『ということは10億歳ってこと?』

〇『地球の時間ではそうなります』

☆『すごくない?いったい後何年生きるわけ?』

〇『生きるとか死ぬとか、地球の生命の概念では表現できないのです』

☆『駄目、熱出てきた…』

〇『そうみたいですね、少し休みましょう、何か飲みますか?』

☆『うん、コーラが欲しい』

〇『壁に向かって手を延ばし、欲しいものをイメージしてください』

☆『…コーラ・クラッシュアイス大盛り…』


ズイィーと壁からいつものパッケージで出てきた。受け取るとヒンヤリ冷たい。ストローで飲むとほのかにレモンの味までちゃんと入っている。いつのまにか床が少し盛り上がって腰を下ろすのにちょうど良い具合だった。


〇『それと、地球に帰ったとき超未来とかに行ってしまうとか、心配はいりません』

☆『玉手箱とかいらないから…』

〇『あれは失敗でした、反省しています』

☆『やっぱり!』

〇『冗談です』

☆『もー、驚かさないでくれない!』

〇『すみません』

☆『で何で私なの?』

〇『実は地球の生命体は地球を守るために存在します』

☆『誰が決めたの、そんなこと』

〇『この話はまた後でしますが、見てのとおりこの宇宙の中で地球は際立って美しいと思いませんか?』

妙子の目の前に見える地球はアフリカ大陸からインド洋とオーストラリアが見える位置に戻っていた。

○『地球の存在は偶然ではありません。そして人類の出現も周到に準備されたものです。』

☆『…そんなの急に言われても…、第一なんで私なの?』

○『あなたのDNAは特別なのです。そしてそれを守ることも私達の役目の一つです』

☆『私のDNA?』

○『そうです。あなたのDNAの遷移は全て記録されています。それはこの星に生命が発生したときにまで遡ることが可能です。もちろん人類にはその記録は理解できませんが』

☆『私の祖先が原始人だった時まで判るわけ??』

○『見たいですか?』

おじさんが壁に顔を向けたと同時に壁の一部が暗くなった。

☆『あ、いいって…私の祖先のおサルさんなんか見たくないって』

壁の暗い部分にぼんやりと映像が浮かんできた。

それは原始人のものではなく、妙子が見慣れた人物だった。

☆『おかあさん…』


 妙子の母は妙子が生まれる以前に亡くなっていた。正確にいうと病気のために妙子を体外授精し、代理出産に託し、妙子が生まれる前に亡くなったのだった。だから妙子は実際に母親のことはなにも知らないが、生前の母親の記録映像は何度も見ていた。

今の母はもちろん父の再婚相手だが、叔母にあたる人で(亡くなった母の妹)妙子の姉は従姉妹になる。このことは、妙子が12歳のときに知らされた。

 目の前の実の母の映像は、いつも見ている記録映像の病院のベッドの上で手を振っているところから始まり、その後妙子の手元にない映像へ続いていた。父親がビデオカメラを回している後方へ退いて、二人の会話が出てきたのだ。

『俊輔さん、もういいわよ。新しい妙子には挨拶できたもの』

『まだ君が直接挨拶できないと決まったわけじゃないよ』

その時、病室の入り口に二人の女性が現れた。妙子の祖母と今の母親、絵理子だった。

『あらあら、仲がいいこと。今日は調子がいいみたいね』

『お姉の好きな花、持ってきたの』


☆『これって…』

○『そうです。あなたが知っている映像の記録された日のことです』

☆『つまり、私が生まれたことも知っているっていうこと?』

○『もちろんです。というか、あなたのお母さんとお父さんのDNAを残す準備をしました。』

☆『…』

○『もう少し前を見ましょうか?』

☆『今はいいわ…』

 にわかに信じがたい事実を告げられ妙子は混乱していた。なぜ、どおして、という疑問符が頭の中で渦巻いている。

〇『今のままでは地球が大変なことになることは先ほどお話しましたね』

☆『うん…、だけどそれが私に何の関係があるわけ?』

〇『あなたのDNAは特別ですと言ったことに関係します、つまり今ここに私と一緒にいられることが大きな理由です』

☆『このテレパシーみたいなことが出きるから?』

〇『そうです。その時がくるまでこの能力は使われずに受け継がれていく必要がありました』

☆『私が始めて?なの』

〇『いいえ、そうではありません。あなたが歴史で学んだことのある大きな変化点で使われました』

☆『例えば?』

〇『最近では、相対性理論をまとめたあの人とか…』

☆『ア、アインシュタイン…』

〇『そうです。彼にエネルギーや時空の新しい扉を開いてもらいました』

☆『私は何をするの?』

〇『地球がこれ以上暖かくなることを防ぐ仕事です』

☆『わ、私が?!』

〇『心配はいりません、今すぐというわけではありませんので』

と言うとおじさんは妙子にスマートフォンのストラップを渡した。それには3センチ程の黒く滑らかな楕円形の石がついていた。

☆『これ、玉手箱じゃないよね』

〇『違います、しかしあなたの場合は時間が無いことと、これまでより大きな変化になるためにこうして直接会い、これを渡す必要がありました』

☆『私一人なの?』

〇『良い質問です、あなただけではありません。具体的には言えませんが・・・』

 そう言うと地球の方に向き直おり、

〇『北極の大きさを今から千年前と比べてみましょう』


目の前の地球はいつのまにか北極を中心とした姿になった。半分は夜の状態だが、夜の部分にほの白く北極の輪郭が現れた。

〇『これが現在です、千年前は…』

その輪郭に薄い水色が重なった。その大きさは現在より一回り大きかった。

☆『…おっきい!!』

〇『そうです、これが限度です。あまり時間がありません』

〇『そのストラップはなくさないでください』

そこまで言うと目の前の地球の姿が急に消え、また光の渦に巻き込まれたようになった。妙子は思わず目を閉じた。

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