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不器用な俺と王子様  作者: korone
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一肌脱ぎます!side森田 希

朝起きて朝食の準備をする。


メニューはトーストに目玉焼き、ホットコーヒーという簡単なものだけど

一応働いている兄ちゃんのために毎日作ってる。


兄ちゃんの出勤は九時で朝は比較的ゆっくり。

僕は一緒にご飯を食べてから出るから登校するのがいつもギリギリなんだよね。

でも、僕が登校した時にはいつも事件が起きた後だから、今日は少し早めに家を出るつもり。



トントントン・・・・・



「希・・・もう、学校行くの・・・?」



上下細身の黒のスウェットを着た兄ちゃんが、眠たそうにあくびをしながら階段を下りてきた。



「今日は、何かが起きる予感がするんだよ!兄ちゃん!!!」


「そ、そうなの・・・?ま、気をつけてね~」



兄ちゃんに見送られて、家を出る。



二人は両思いかもしれない、そんな事実に何故か僕も妙にテンションが上がっている!

いつもより30分も早く家を出て、8時少し前に教室に着いた。



教室のドアを開けると、聡太がもう席に着いていて目を閉じて音楽を聴いていた。


んん~本当、顔はイケメン・・・遠くからでもハッキリと分かるくらい整った顔立ちをしてる。


・・・・にしても、・・・・あれ?

聡太、なんか雰囲気が・・・


クラスメイトの女子達も聡太をチラチラ見ながら何か話してる。


皆と挨拶を交わして聡太の横を一度通り過ぎ、すぐ後ろの自分の席に着く。

机に鞄を掛けると、ヘッドフォンをしている聡太の肩をツンツンとつついた。

ゆっくりと振り向いて、僕を見た聡太はヘッドフォンを外しながら挨拶してくれた。



「はよ。」


「おはよ~聡太!・・・・・あ!あれ!?何か髪型違わない!?」


「さっそく、頑張った。」



ドヤ顔の聡太は腕組みしてちょっと偉そう。

見下ろすようなドヤ顔も、ちょっとムカつくけれど憎めない。


それから、ゴソゴソと鞄を漁って僕に一冊の雑誌を見せてきた。


机に置かれた雑誌に視線を落とすと・・・


『 最強☆モテ髪アレンジ 必勝BOOK 』


え、え~!!!!頑張るとこ、まずソコなの!!!!???


ほら、男同士だから・・その・・・不安を除くとか、もっと踏み込んでお互いを知る、とか・・・!さりげなく朝比奈君にだけ優しくする、とか!!!


もっと、あるでしょーが!!!!


今さら見た目・・!


聡太らしいといえば、聡太らしい・・・

そんなズレた頑張りに笑がこみ上げてしまった。



「ふ、あははは・・・!」



笑われて、急に不安そうな表情になった聡太は前髪をチョコチョコと弄びながら、眉を下げてしょんぼりする。

分かりやすい反応が大型犬みたいで可愛い。



「あ・・似合わねぇ・・・?結構上手に出来たと思ったんだけど・・・。」



正直、聡太の切れ長の瞳を少し隠すような元の髪型も良い感じだったけど・・


今日のは、やばい!


そんなに大きく変わっているワケじゃないんだけど、

ほんのちょっとトップに束感があって、前髪も若干横に流していて、

いつもより目が良く見えている印象を持った。


そんで・・・素材がいいから、めちゃくちゃ輝いちゃってるんだよ!

さすが、編み込みヘアを物ともしない器用男子だ・・聡太、恐るべし!!


鈍感な聡太は全く気づいてないけれど、さっきから女子の・・

特に横手さんや三好さんからの視線が凄まじい。


これじゃあ逆に女子を寄せ付けすぎて二人の進展に支障が出ちゃいそう。



「聡太、すごくカッコいいし似合ってるんだけど、この雑誌のターゲットは女子だから、ね!朝比奈君はいつものラフな髪型の方がきっと好きなハズだよ!」


「あ・・・なるほど・・・!よし、明日からまた元通りにする!」


目から鱗!みたいな顔で頷く聡太。

聡太が単純で良かった・・

僕達がそんな話しで盛り上がっていると、キラキラした笑顔で朝比奈君が教室に入ってきた。

今日も、安定の輝き。



「聡太、森田君おはよ・・・・・う!?」



あ、気づいた?そう、今日の聡太は殺人級にイケてるからね・・・


朝比奈君が外見で人を好きになるタイプじゃないのは分かってるけど、

好きな人が一層カッコよくなってたら普通は益々好きになっちゃうよね!?


『友情』を押し通すつもりでいる朝比奈君、この聡太を見てどう出る!?



「悠宇、おはよう。」


「おはよ~朝比奈君!」



じっと聡太を見つめる朝比奈君。



「・・・髪型、変えた・・?」


「う、ん・・あ、でも、今日だけだから!」


「え、そうなの・・?」


「ま~ま~、朝比奈君、さ、席に座って座って!

今日は午前中フィールドワークだよ!

僕すごく楽しみにしてたんだよね~

何するんだろう!」



髪の話題から離れる為に、必死で話しを逸らす僕。

今日は一日忙しくなりそうな予感がした。







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