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不器用な俺と王子様  作者: korone
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気持ちに名前を

得意気な希は腕組をしたまま話し始めた。



「僕も、聡太の友達・・・でしょ?」


「おう。」



友達って、改めて言われると照れる・・・・。



「友達の僕が、木下と抱き合ってたんだけど・・・。面白かったんでしょ・・?」


丸い大きな瞳が、じっと俺の目を見つめてくる。



「お、おう・・・」


「そういうコト、じゃない?ふふふ」



楽しそうに笑う希は俺の背中をポンと叩いた。



そういうこと・・・か・・・

希と木下が抱き合って・・・・

そういうこと・・・・


あれ、じゃあ、悠宇と木下達は・・・・


そこまで考えたところで、体育館に着いた。



朝礼は背の順で並ぶため、希と別れて列の後ろへと向かっていると悠宇が小走りでやってきた。



「聡太、オハヨ。さっきはビックリして挨拶できなかったー

それと、あのさ・・・さっき、もしかして俺の事助けてくれた?」



やっぱりさっきの俺、不自然だったよな・・・



「・・・う、あ、まあ・・・せっかく盛り上がってたのに、邪魔してゴメン・・・。」


「いやいやそんな事ないよ!俺、結構限界だったから助かった!でも、部活見学行くことになっちゃって・・本当は行きたくないんだろ?俺こそごめん!」



両手を勢い良く顔の前でパシンと合わせた悠宇は、ギュッと目をつむって謝ってきた。


その仕草が可愛くて・・・


つい手が伸びる。


あ、この手・・・何する気だよ俺・・・行き場をなくした右手を悠宇の頭に置いて、照れ隠しに髪をくしゃっと撫でて離した。


少し頬を赤くして、ニッコリ笑った悠宇はそのまま俺の前に並ぶ。


俺より少し低い位置にあるフワリと柔らかそうな栗色の髪、

入学当初の俺とは正反対のこの気持ち・・・。

まだ、悠宇の事をかまっていたい。



あ、そういえば・・・!



雑誌の事を思い出し、悠宇の肩をツンツンとつつく。

校長の話しが始まっているため、ほんの少し振り向いて頭を後ろに傾ける悠宇。


俺も、前に少しだけ顔を寄せて小さな声で囁いた。



「悠宇、今日見せたいものあるから昼メシ一緒に食おうぜ。」



チラリとこちらを見ていた悠宇の目が少し開く。

キュッと口角を上げて嬉しそうに頷いてくれた。


それだけで、胸が暖かくなった。



昼休憩は希と悠宇と三人で連れ立って屋上へ。

今日はすげー天気が良くて、暑いくらいだ。

俺達は悠宇を挟んで横並びになって、少し日陰ができる塔屋裏に陣取ってそれぞれ昼飯を出した。



「聡太!見せたいものって何?」



悠宇は屋上に着くなり、あれからずっと気になってたから・・と、聞いてきた。



「そんなに期待させる程いいもんじゃねーけど・・」



リュックから雑誌を取り出して、悠宇の前にズイッと差し出す。


胸元に突きつけられたポストイットだらけの雑誌を手に取る悠宇。

表紙を見て、パッと表情が明るくなった。



「わ!聡太!!さっそく調べてくれたの!?しかも、こんなに!!!?

うわ~~~~~!俺めちゃくちゃ嬉しいよ!!!」



キラキラした笑顔で雑誌をめくる悠宇。

何これ、俺も、すげー嬉しい。



「ん?スウィーツ特集??」



昼メシのカツサンドを齧りながら、悠宇の横から希が雑誌を覗き込む。



「あ~!そういえば、聡太も朝比奈君も甘いもの好きだったよね!

てか、これ聡太が調べたの!?すご~い!!」


「俺は、こうと決めたら徹底的にやるタイプだからな。」


「あはは!意外にマメだよねぇ~!」



キリッと答えると希が腹を抱えて笑った。



「あ、ここ、ここに行ってみたい!」


「え?どこ・・?」



雑誌を指す悠宇の指を追って、俺も覗き込む。

肩と肩が近づいて、また、フワリと甘い悠宇の香り。


思わずギュッと抱きしめたくなる。

顔を上げると思ったより近くて、綺麗な横顔を至近距離で見つめる。


俺の視線に気がついた悠宇が顔を上げる。

二人の視線がぶつかって、一瞬で耳まで赤くなった悠宇がサッと雑誌に視線を落とす。


逃げる悠宇の視線を追いかけて、覗き込む。



「好き。」



覗き込む俺と見下ろす悠宇の視線がぶつかった瞬間、俺は無意識に呟いていた・・・



「!!!!!え!!!!!!」



大声で驚いたのは希で、悠宇は真っ赤になって口を少しあけたままフリーズしている。



「あ・・希がいたの忘れてた。」


「えええ!っ!!!!!ちょっと聡太、何今の!」


「何って、好き。俺、悠宇が好きみたい。」


「・・・・・聡太って、大物・・・だよね・・・・」



ため息を付く希と真っ赤になって動かない悠宇。

その時は、男同士だとかいう事よりも、自分の気持ちに納得がいく言葉を見つけた事で、俺は妙にスッキリしていた。







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