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不器用な俺と王子様  作者: korone
15/29

聡太の優しさ side朝比奈 悠宇


放課後遊ぼうと聡太が誘ってくれたんだけど、嬉しくてOKした後に森田君が来れない事を知って焦ってしまう。


一緒にいたい、もっと色んな事を話してみたい。


それなのに聡太の一言一言にドキドキしてしまっていつも通りにできなくて・・・



俺、こんな良くわかんない状態で、普通に出来るのかな。

聡太に変に思われないかな。



そもそも、俺はどーしちゃったんだろう。

聡太は男で、俺も男だ。

なのに、聡太の可愛いとこ、カッコいいとこ、全部にドキドキしてしまう。



友情、愛情、好きになるのに理由は無いっていうの、頭では理解しているけど、

実際男相手にドキドキする自分にどうしていいか分からない。



それに・・・・・・

聡太に対する気持ちは、昔感じた「好き」っていう感情にすごく近いし、それ以上かもしれない。


中学の時に芽生えた事がある「好き」という感情は、俺の中ではしばらく思い出したくない物だ。



俺の中で、「好き」は怖いもの。



そんな事を考えながら歩いていると、突然聡太が俺の肩をポンと叩いた。


俺より高い位置にある顔、上から肩に置かれる大きな手、周りより背が高かった俺からしたら、どれも初めてのもので・・ドキッとして見上げると、少し長い前髪から見える瞳がとても優しく俺を見ていた。



心臓が早鐘を打つようにドキドキと脈打つ。聡太の笑顔でこんなにドキドキしてしまう。



聡太は寄り道をしようと提案してきた。

あの長い階段を上がるのか・・・頭が冷えていいかも。

黙々と登っていると頂上まではあっという間で。



そこから見る景色はすごかった。


街も、乗るはずだったバスも、学校も、すごく小さく感じる。

深い緑に覆われた美しい景色を見ていると、自然と素直な感想が口を突いて出ていた。



「すごく綺麗。気持ちいいな・・」


「・・・よかった」



後ろからポツリと呟かれて聡太を振りかえると、泣きそうな笑顔でこちらを見ていて。



聡太は視線を少し彷徨わせてから、唇をきゅっと結び、そして意を決したようにゆっくりと話しだした。



「悠宇、今日いつもと違う気がして・・・

元気ねーのかなって思って誘ったんだけど・・

益々元気なさそうで、よく考えたら、俺盛り上げたりできねーし、

俺といたらつまんねーよなってちょっと後悔してて。

でも、この景色見てもらえて、喜んでくれて良かったなって。」



一生懸命考えてくれて、自分を責めて、そんな聡太を見て胸が詰まって言葉が出ない。


俺、今日聡太の事ちゃんと見てた?自分の事ばっかで・・・・

聡太はこんなに俺の事を考えてくれていたのに、俺は生返事ばっかりで。



胸が詰まってしゃべれなくなった俺に不安になった聡太がまた誤解する。



「俺・・また、変な事言ったか・・・・?」



慌てて頭を振るけれど、言葉が出てこなくて。



何か・・・言わなきゃ・・・・



なんて言ったらいいか必死で考えていると、突然聡太の右手が伸びてきて俺の左目をすっと擦った。



聡太への説明のつかない感情と誤解させた申し訳なさで、今しゃべったら、泣いてしまいそうだと思ってたのにーーー


聡太に触れられて、自分の頬を温かいものが伝うのに気がついて・・・


あ、俺、泣いてたんだ。


言葉より先に感情が溢れて、涙が出ていた。



聡太に優しく触れられて、「好き」を実感する。

でも、「好き」は怖い。



こんなに優しい聡太をこれ以上不安にさせたくない。



「そ・・た、」



声が、かすれる。でも、話さなくちゃ・・・



「悠宇・・・。」


「俺、聡太といると、すごく楽しいんだ。

でも、聡太への思いを実感する度、昔あった事を思い出しちゃって・・・

それで、気持ちの整理がうまくつかなくて・・・・・

聡太のせいとかじゃ、ないんだ。

今日は・・・・

おかしな態度をとってたと思う。嫌な思いさせて、本当にごめん。

でも、聡太が元気づけてくれて、スッキリした気がする。

誘ってくれて、ありがとう・・・・」



ゆっくり、今言えるだけの素直な気持ちを聡太に伝える。

しっかり聡太の目を見て話した。


俺の話を聞いた聡太のキリッとした眉は少し下がっていて、目を閉じて、ふーっと長い息を吐いた後ゆっくりとほほ笑んでくれた。



「悠宇が色々大変な思いしてるのは分かってる。

もし、いつか話してスッキリ出来る時が来たら、いつでも話して。

あ・・!アドバイスとかはできねーけど・・・聞くだけなら出来るから・・。」


「ありがとう・・・」



聡太の気持ちが嬉しくて、俺は心からお礼を言った。


いつか、過去の出来事の気持ちに整理がついて、話す決意ができたら聡太に伝えよう。

きっと真摯に聞いてくれるはず。



「あ、悠宇、まだ時間大丈夫か?腹減らねえ?」



俺の頬に触れた後、ぎゅっと握りしめていた手をブレザーのポケットに突っ込みながら、少し前のめりにかがんで、やさしく聞いてくる聡太。



「なんか、悩みすぎてお腹すいた!どっか行こうか!」


「ふっ・・・・・任せとけ。」



パッと両腕を組んで不敵に笑う聡太。何!?急にすごい自信満々なその態度!



「ぷっ!!あはは!任せる!じゃあ、行こう!」


「笑うなよ・・・まあ、元気出て良かった。行くか。」



優しい聡太、カッコいい聡太、可愛い聡太・・・やっぱり俺、どの聡太もすごく好きだな。

言う勇気はないけれど、妙にスッキリした気持ちになれた。


友人としても、この時間を無駄にするのは勿体ない。

聡太のおかげで、少し気持ちが前向きになれた。




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