第8話
ようやくヒロインが登場!
「ふぃ~~~。食べた、食べた」
ミケがおなかをさすりながら、満足げな顔をしていた。
それはそうだろう夕食用に用意した鍋の大半をミケが平らげてしまったのだから。
「さてと、そろそろ確認をしておこうかの?。まずお主、名はなんという?そして健治殿の保護下に入りたいのか?」
先ほどの緩い顔から一変して表情が変わる。 それに彼女を射抜くような視線も交ぜてきている。
彼女はそんなミケの視線を正面から受けて言葉を紡ぐ。
「はい、まず私の名前はアーシェと言います。そして健治様、私をあなたの奴隷にして下さい。お願いします」
「・・・いいのか?」
「はい、このまま故郷の森に戻っても以前と同じ生活ができるとは思えませんし、また捕まり今度こそ命を落とすかもしれない。であるのなら助けていただいたこの身・この命をすべて健治様に捧げたいと」
アーシェは言葉を言い終えると、深々と頭を下げる。
おそらく彼女の言っていることは本当のことで、あり得ることなのだろう。今この瞬間を逃せば次はない、と。
「はぁ~~~、わかった。でもこれだけは言っておくぞ、俺はアーシェを奴隷としては扱わない同じ人として接するからな。アーシェもそうしてくれ」
「・・・はい!ありがとうございます。 健治様」
「取りあえず、様はいらない」
「話は、纏まったかい?」
「ああ、まあな」
「では、街に帰ったらアーシェとの再契約をしに行かなくてはな。・・・ああそうだ、健治殿依頼していた軍装が粗方できたからそっちに送るぞ。」
「もうできたのか、早いな」
「ふっふふ、私をなめてはいかんよ。では、私は寝る。警戒は分体がしてくれるからな」
ミケはそう言うとメニューから寝袋を取り出してさっさと包まり床に就く。
まあ、食事はもう終わったしやることはない。見張りは、分体がやるというのでこれでいいのだろう。
「まあいいか、じゃアーシェも寝ていいよ」
「しかし、主より先に寝ることは・・・」
「かまわない、先も言ったけど俺はアーシェを奴隷として扱わない。だから先に寝てもいい」
「・・・わかりました。ではお先に」
「ああ、おやすみ」
アーシェに寝袋を渡すと、それを抱えて装甲車の荷台に戻っていく。
しばらく様子を見ていると、微かに規則正しい寝息が聞こえてきた。 余程疲れたのだろうか、直ぐに寝入ったようだ。
健治はそれを確認すると自分も寝袋に包まり、寝ることにした。
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「・・・う、んん」
健治が目を開けると森の中は朝靄が薄っすらと辺りを包みこんでいた。
だが、濃霧ではないため視界は良好であるのが救いであろう。
「少し・・・肌寒いな」
二の腕を摩りながら、健治は二人を探そうと歩き出す。
「うん、健治殿。おはよう。・・・さっそくで悪いが、あそこを見てくれ」
街道を見ることができる場所にうつ伏せになって双眼鏡をのぞいているミケが昨日の現場を指さす。
「何かあったのか?」
「まあ、見てみればわかる」
その言葉に従い、二人はうつ伏せになり双眼鏡をのぞきこんだ。
そこに映っていたのは、馬車の焼け跡を見て回っている三人の人影が確認でき、よく見ると一人は昨日チャリオット型の馬車に乗りここを走り抜けた行ったあの豚野郎だった。
どうやら一度街に帰り、部下を率いて戻ったと考えた方がいい。
「今更来たところで、彼女たちが助かると奴らは本気で思って戻ってきたのか?」
「どうだろうか、もしかしたら効果の高いポーションでも持っているのかもしれんな」
「そんなのがあるのか?」
「うむ、健治殿の魔道具のような完治とはいかないが欠損を治せる物も確かにあるが・・・」
「値段がやばいと」
「そうだな。下手したら小国が一国買えるかもしれん」
「あの・・・おはようございます。すみません、主より遅れて起きるなど」
そんなやりとりをしていると、後ろから声がかかる。
「そんなことは気にしないから。・・・アーシェ、ここに伏せてくれ」
健治は自分の右隣の地面をたたき、アーシェを呼ぶ。
隣に来たのを確かめると、健治は双眼鏡を彼女に渡す。
使い方を教えてもらい双眼鏡を覗くアーシェは映った光景に息をのみ、少し体が小刻みに震えていた。
「大丈夫だ。アーシェをあいつらに渡すつもりはない」
「・・・・・・は、い」
彼女の手を握り締め安心させると、次第に震えはおさまっていく。
再び双眼鏡を覗こうとした時、ミニマップに変化があった。
8つ赤い光点が、奴らの周りを半包囲するように表示されてる。
赤は敵性の反応なので健治は四式小銃改を準備している時、それは動いた。
「・・・う、ああああああ~~~」
奴らに襲いかかったのは8匹のオオカミ型の魔物ガルムである。 群れは確実に獲物を狩ろうと退路を塞ぎ、仕留めていくようだ。
現に最初の襲撃で部下の1人が首をかみ切られてすでにこと切れている。
もう一人は、持っていたショートソードで牽制しているが隙をみて、ガルムは足に食らいつく。
その1匹をどうにかしようと視線を下げた時、他4匹が襲いかかる。
どうにかしようともがくが、ついに押し倒されてしまい首をかみ切られだんだんと動かなくなっていった。
「くそう、使えない部下どもが!・・・おら!」
豚野郎も短剣を振り回すがガルムには当たりもしないし、かすりもしない。
やがて、大ぶりに短剣を振り回した時、足が縺れ倒れてしまう。
それを見逃さない者はいない、あっという間にガルムに襲われる。
「くそ!くそ!・・・この獣が!この俺を・・・俺を食うんじゃない!・・・ああああああ」
やがて、ガルムもうるさくなったのか豚野郎の首にかみつき始めた。
叫ぶ声もやがて聞こえないなり、辺りにこだまするのはガルムたちが狩った獲物を食らう音だけになっていく。
「なんというか、悪人らしい最後だな」
「まあ、この世界ではそう珍しくない死に方ではあるがな。面倒がなくなってよかったというべきか」
「そうなのか?」
「ああ、奴隷は契約者が死亡した場合助けた・・・もしくは拾った人が新しい主人になるからな。今回の場合は魔物に主人が襲われ、檻の入っていた奴隷が助かったというのが当てはまるからな。 この後、街で再契約をすれば晴れて、健治殿の奴隷となる」
「なるほどな。 じゃあ、朝飯を食べたら街に戻るか」
「そうしたほうがいいだろう。 再契約が終わるまで彼女には帽子かフードをかぶらしておいた方がいいだろうな」
「わかった」
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朝飯を食べ終わり、出発の支度をしていく。
健治はそのまま装甲車で帰ろうとしていたが・・・。
「あまり、こちらの手札を見せるのもよくない。今日は97式側車で帰った方がいい」
ミケはそう言うと、インカムに帰っていく。
見送った二人は、ガルムに気を付けつつ森を抜けていくことにした。
そして、整備された街道に到着すると、健治は陸王を召喚する。
「主、これは?」
「これは97式オートバイと言う、乗り物だよ。 アーシェは隣のサイドカーの方に乗ってくれ」
「は、はい」
アーシェは恐る恐るサイドカーに乗り込む、やがて座り終わるが少し落ち着かないようだ。
そんなことをお構いなしに、健治は発動機を動かす。 突然、動き出した97式側車に驚くアーシェに苦笑する。
「アーシェ、これくらいで驚いていたらこれからずっと驚くことになるぞ」
「そ、そうなんですか?」
若干、涙目になりながら答える彼女に安心する。
それは健治がこれからは一人ではないということを思い、ゆっくりとアクセルを踏み込む。
少しづつ走り始めた97式側車にまだ恐れていたアーシェであったが時間が経つと慣れてきたのか周りを見る余裕ができたみたいだ。
「少し、速度を上げるぞ!」
「はい!」
だいぶ慣れたのか速度を上げていくが、今度は悲鳴は聞こえない。
健治は街に急ぐため、先を急いだ。
それから約い1時間ほど走っていく間に、やはり冒険者や商人の馬車にあうが昨日振り切った者たちなのか、反応は薄かった。しかし、商人の方は何かを喋っているようだが気にしない。
そして、リーブスの城壁が見えてくる。 ピーク時は過ぎたのか人は疎らであった。
出発した地点に97式側車を止めるとアデルが疲れ切った顔でこちらに歩いてくる。
「よ、よう。早かったな健治」
「どうしたんだアデル、なんか顔色がひどいことになったているが?」
「ああ、あのあとお前さんの乗り物、97式だったか。それに関しての質問でな」
「なんかすまんな」
「いや、気にするな。魔物の襲撃よりマシだからな」
やはり、魔物の襲撃はあるみたいだな、と考える健治を見ていたアデルは視線を隣のサイドカーに乗っている女性に向ける。
「健治、そちらは?」
「ああ、彼女はアーシェというんだが。実はアデルに相談がある」
「わかった。取りあえずこっちに来てくれ。・・・おい!誰かここを頼む!」
アデルは相談の内容がここではできないものと理解し、部下にこの場を任せて健治たちを門内の1室に案内した。
案内された部屋はテーブル1つに椅子が4脚あるだけで窓はないようである。
「ここなら、誰も聞こえないからまず大丈夫だろう。まあ掛けてくれ。・・・それで何の相談だ?」
「ああまず、彼女を見てからにしてくれ。 アーシェ、フードをとってくれ」
彼女はうなずくと両手でフードを外す。 両耳が見えた時点でアデルは何の相談か理解できた。
「兎人族か!・・・それにその首輪は」
「ああ、昨日ゴブリンを探していたら魔物の襲撃にあった馬車を見つけてな、檻にいたアーシェだけが助かった。・・・そして、今後どうするかを決めるためにアデルに相談しに来たんだ」
「そうか・・・健治は、奴隷についてはどれくらい知っている」
「借金奴隷と犯罪奴隷しか知らない」
「合っている。この国には、その二つしか奴隷は存在しない。 だから彼女は違法奴隷に入るがすでに主従契約が終わっているから元の平民には戻れない」
「わかっている。だから、彼女を守る意味でも再契約をしておこうと思っている」
「そこまで知っているか・・・。わかった、では解放奴隷として健治を主とした契約に更新ということにしよう」
アデルはドアから顔を出して近くにいた部下にある人を呼んでくるように指示した。
「あとは、健治。一応奴隷について説明しておくぞ」
「よろしく頼む」
そう言って健治はアイテムボックスから飲み物を取り出す。
日本の大正時代に生まれた、カルピスもどきを3人分作りカップに注ぐ。
「おお、すまんな。・・・なんだこれ!甘くてうまいな!」
アデルは警戒せずにそれを飲み干すと、お代わりを要求してくる。
仕方なく、ジョッキ一杯に作りテーブルの真ん中にクッキーと一緒に置いておくと直ぐに注いでいき残りが半分以下になるころにようやく話が始まる。
「・・・さてとまず借金奴隷からだな、主に犯罪歴のない者がなる。理由は様々、借金が払えないかったり家族の口減らしにされたりといろいろあるが、最終的には自分を買い戻すことが可能だ。この買い戻した状態を解放奴隷という、身分的に言うと市民と変わらないし本人たちが望めば主従扱いを続けることができる。次に犯罪奴隷は重犯者がなるし基本的に買い戻しはない、あっても借金奴隷の倍以上はするし、危険が大きい。 彼らは最終的には鉱山の開発に行くことが多い。ちなみに首輪にも違いがあり、借金奴隷は赤、犯罪奴隷は黒の違いがある。そして解放奴隷は白だ」
クッキーをパクつきながら話を進めるアデル、最初の頃の貫録はもうないな。
「大体はこんなところだな、・・・と、来たみたいだな」
話をしているとドアがノックされる、どうやら来客のようだがマップで見ると反応は青なので大丈夫だろう。
そして、アデルがドアを開けるとガタイのいい商人とローブを着た人が2人来ていた。
「すみませんな、ドーガさんここまでご足労いただいて」
「いやいや、貴殿にお呼びいただいたとなればこれくらいは、それで今回は同様なご用件で」
「ああ、健治。この人はこの国で公認の奴隷商の商人で名をドーガさんと言う」
「ドーガです。この街で奴隷商をしております」
「でだ、ドーガさん今回は健治と隣のアーシェ、二人の再契約をお願いしたい」
「再契約・・・なるほど、わかりました。あまり深くは聞きますまい。では銀貨一枚を・・・確かに。おい、頼む」
健治はドーガさんに銀貨を渡すと直ぐに部下に指示を出す。
「はっ!」
ローブ姿の男が健治たちに近づいていくと。
「では、これより再契約を行います。あなたが主で相違ないですか?」
「ええ、そうです」
「では、彼女の首輪にあなたの血を一滴でいいので垂らしてください」
健治はうなずくと腰にある銃剣で親指を切り、血を出す。
その血をアーシェの首輪へと塗りつける。
「それでは」
ローブの男は、呪文をつぶやくと健治とアーシェの足元に魔法陣が発生する。
段々と光が強くなるとなんとなくだがアーシェのとのつながりを感じることができた。
やがて、光がなくなっていくとアーシェの首輪に変化が起きる。
赤と黒が混ざったような色から白色へと変化していくと魔法陣は消えていいた。
「再契約、終わりました。これで彼女は解放奴隷としての身分が適用されます」
ローブの男は仕事を終えるとドーガさんの後ろに戻っていく。
どうやらそこが彼の定位置なのだろう。
「これで契約は終了します。奴隷が入用でしたら是非とも当商会に、では失礼します」
ドーガさんは営業を終えると帰っていく。
どうやら本来かなり忙し人なのかもしれない。
「終わったようだな、ちゃんと彼女を大事にしてやれよ」
彼なりの激励か、背中をバシバシと叩かれる。
雑納の上からなのに何気に痛いことからかなりの強さで叩かれたみたいだ。
「そ、それより、ここらでお風呂の付いた宿はないですか?」
「風呂かあ・・・。そうだな、ここから少し歩いた場所にある[ランプ亭]がいいぞ! 料金も良心的でサービス良し!食事良し!風呂も各部屋に完備のいい宿だ」
「そんないい宿なら予約とかで一杯なんじゃ」
「いや、そこな。かなり分かりずらい場所にあるんだ。 だから、一度いったことのある奴が案内しないとまずわからない」
大丈夫なのか?その宿。
「それに俺はもう上がりだ、案内してやろう!」
やたらその宿を押す、アデルに不安になるがついに押し切られ案内してもらうことになった。
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「ここだ!ここ」
確かにわかりずらい所にその宿屋はあった。
しかし、外見も綺麗にされているので期待は持てる。
先にアデルが中に入って行き、健治たちがそれに続くと内装も落ち着いた感じでいいセンスをしているので期待はさらに高まった。
「あら、いらっしゃい、アデル。今日は一人ではないのね」
店の奥から出てきたのは二十前半くらいの褐色の美女であった。飴色の髪を後ろでまとめて動きやすいようにしてある、整った顔立ちでバランスが取れていた。
女性としては身長がやや高めであるがアデルと並ぶとバランスが取れてお似合いでもある。
事実、アデルは彼女目当てなのか顔は少しだらしない感じになっている。ここを紹介したのも彼女にいいところを見せようとしているのだろう。
「ああ、マチルダ。きょ今日は客を連れてきたんだ。おおい、健治。この人がここの女将をしているマチルダさんだ」
「ようこそ、ランプ亭へ。ここの女将をしています、マチルダと言います。これからもどうぞご贔屓に」
「ええ、こちらこそお願いします」
「今回は、お食事ですか?宿泊ですか?」
「では、宿泊の食事つきで7泊分を二人分」
マチルダは一瞬アーシェを見て、答える。
「それでしたらツインの方がお安くなりますが?」
「いいえ、ふた「ツインでお願いします」」
「では、七泊分で銀貨二枚の大銅貨八枚です」
健治は少しアーシェを見ていたが引くことはなかったのでツインで支払うことに。
「確かに、ではお食事は十八の鐘から二十の鐘の間までにお願いします」
マチルダからカギを受け取り、健治は二階に上がっていく。
アデルは、すでに食堂のカウンターで酒を飲んでいた、アーシェも健治と共に二階に上がろうとしたが女将さんに呼び止められる。
二~三話しをしてから直ぐに来たので大したことではないのだろう。
「え~~~と、ここか」
部屋番号を確かめてカギを開けて中に入ると、そこにはベットが二つ置いてある部屋で元の世界のホテルと似た配置になっていた。
ドア付近に浴室の扉があり、中を覗くと小型の湯船が置いてるだけであるがちゃんと蛇口もある。
どうやら魔石で動くみたいで魔力を流すとお湯が出る仕組みのようである。
お風呂の確認が済んで戻ってくると、アーシェはドアの所に立っていた。
「?どうした。奥に入って座っていればよかったのに」
「いえ、奴隷の私が椅子になど・・・」
「昨日の夜も言ったと思うが、俺はアーシェのことを奴隷とは扱わないぞ。ほら、先にお風呂に入ってこい」
健治は、アイテムボックスから上下の下着にアメリカ軍のM1943フィールドジャケットの上下等と洗剤セットを渡して風呂場に追いやる。
しばらくは何かをいいたそうであったが折れたのか水音が聞こえてきた。
そして、シャンプーなどの効果に驚く声がしながら洗っていく様子が聞いていてわかる。
進めたのは自分であるが、少し顔が熱くなるのは気のせいではないだろうか?
そんなことを考えていると、終わったのか浴室のドアが開く音が聞こえた。
「あの・・・お待たせしました」
やや、顔を赤くしたアーシェが出てきた。
洗ったからか土やほこりで汚れていた髪はきれいになり、腰まである灰色の髪の毛が鈍く輝いている。
女性としては平均的なのか身長は、大体158㎝くらいで健治よりも少し低いぐらい。
身に着けているM1943フィールドジャケットはやや大きめに作られているはずだが、胸の部分が押し上げられて、その存在を激しく自己主張している。それに一番上のボタンが留めきれていないのもその大きさを物語っている。
全体的に見るとかなりの美人さんであることを改めて知る健治だった。
「あ、主。そんなに見つめられると・・・」
「あ、ああ、すまん。じゃあ俺も風呂に入って来る」
風呂上がりのアーシェの姿にドキドキとしつつも風呂場に移動した健治である。
そして、2人が風呂を終えるとちょうど18時の鐘がなったので降りることに、しかしそこにいたのは酔いつぶれたアベルだった。
女将のマチルダは健治たちを見つけると、苦笑していた。
「ごめんなさいね。アベルさん、いつもこうなの。だから少し離れた所で食事にしてくれる?」
「ええ、構いませんが・・・しかし」
「気にしないでいいわ。そのうち部下の人が迎えに来るしね。待ってて今夕食を持ってくるはね」
そんな会話をしつつ、出てきた夕食は豪華ではないが充実しており満足いくものである。
また、この時でもアーシェが椅子に座るのをためらう場面があったり、寝ぼけたアベルが絡もうとしたりと騒がしい夕食であった。
夕食が終わり、部屋に戻った2人。
健治は、アーシェに寝巻用の着物を渡しておく、着方が分からずそのまま着ようとするが止めて着がえ方を教える。
教えた通りに着替える彼女から目をそらし、開発する兵器をミケに送っったり、できた兵器の確認をしていくと後ろから着替え終わったという声がした。
そこには、髪を後ろでまとめたアーシェが立っていた。寝巻用のため薄手の着物が先ほどに軍装よりもより色気を出している。相変わらず胸の部分は自己主張が激しいが着物でかなり隠れてしまっているのがやや残念。
「それじゃ、もう寝るか」
「はい、・・・おやすみなさい。主」
健治は、ベットに横になると直ぐに睡魔が襲ってくる。
ウトウトしているとベットに誰か入って来る、間違いなくアーシェのはずであるがどうしたのか?
確認しようと振り向こうとした時、背中にやわらかい物が押し付けられた、それがなんなのか確認できてないが何のかはわかる。
「アーシェ?どうした?」
「いえ・・・このままで、お願いします。どうか捨てないでください」
少し震え気味の声で聞こえたその声に健治は彼女の不安が手に取るようにわかってしまう。
だからか
「大丈夫だ。これからよろしくな。アーシェ」
「はい・・・はい。ありがとうございます、主」
その言葉に満足したのか、静かに寝息を立て始める。
健治はこの日、異世界に来て初めて安心して寝ることができたと翌朝気づくのであった。
なんだか寝てばかりの話になった気がします。