第6話
やっと街に!
助けた二人と共に健治は元来た道を村に向かって歩いていく。
健治としては改修の終わった小銃、機銃の試射をしたかったが適当な場所に着く前に、広場で彼らがゴブリンに襲われていたので助けたのだが、依頼が終わったので戻るというのでこのまま行くことに。
こちらの用事は終わってないが、彼らには街に案内をお願いしてもらっているので待たすわけにはいかない。
「すみません、健治さん。 一緒についてきてもらって」
冒険者のレナがリックを心配しながら、健治にお礼を言う。 リックは武器である、小剣を松葉杖の代わりにしてついてくる。
「健治さん、あの肩にかけてるそれは武器なんですか?」
リックは健治がどうやって自分たちを助けたのか気になり、疑問を聞いてきた。
「ああ、そうだよ。これは銃という物で、弓矢・・・いやボウガンの発展型みたいなやつだ」
「へえ~~~、そうなんですか。自分はてっきり何の魔法かと思いました」
「そんなわけないよ。 ・・・それより、リック。 足は大丈夫か?」
「ええ、大分痛みも引いてますし。何より健治さんが巻いてくれた包帯で歩きやすいですし」
問題はないようだ。このまま、村まで行こうかと思っていたが・・・
(ぐぅ~~~~~~)
後ろから大きなおなかの音がしていた健治は二人より先に進んでいたので、振り向くとレナが目をそらした。 顔が若干赤いので音の主は彼女のようだがこれはいわない方がいいだろう。
「そろそろ、お昼か。・・・リックたち、お昼はあるか?」
「ええ、宿屋で貰ったサンドがあります」
「なら、このあたりで食べるか。 村もあと少しで着くしな」
健治は近くにあった切り株に腰を掛けると、雑納から(正確にはアイテムボックスから)コミスブロート(ライ麦パンみたいな物)とハム、レタスを1人分づつ出して簡単なサンドイッチを作り食べ始める。
リック達も食べ始めるが彼らのサンドは黒パンに焼いたベーコンを挟んだシンプル過ぎる物であった。あれでは、栄養が不足して体を壊しかねない。
仕方なく、健治は雑納に手を入れる。
「なあ、二人はそれで足りるのか?」
健治の問に二人は自分の食べているサンドを見て苦笑する。
「いえ、実は物足りないのですが。収納袋はまだ持ってないのであまり荷物を増やせないので、これくらいしかお昼を用意できなくて」
「本当は、果物なんかも食べたいですがやはり重くなってしまって」
二人の顔からはそれ以外にも果物を買うお金がないと書いてあるみたいに思える。
そんなことを思い、健治は果物の缶詰を取り出す。
なんなのかと見入っているリック達の視線を気にせず、缶を開ける。
「二人とも食べるか?」
「なんですか?これ」
「桃とパインのシロップ・・・砂糖漬けだな」
「これ!果物なんですか!・・・是非!」
レナは果物だと知ると喜んで食べ始めた。
リックも不思議そうに見ていたが、一口食べるとあとは無言で食べていく。 どうやらお気に召したようだ。
あっという間に食べ終わった二人は、満足げな顔をしていた。もともとリックには渡そうと思っていた、砂糖などの甘味は痛みを緩和してくれるので少しは歩くのが楽になると思っていたが、レナがここまで食いつくとは・・・。
「はぁ~~~、おいしかった。健治さんありがとうございます。こんな美味しい物生まれて初めてです!」
「自分もです。こんなの村でも食べたことありません!」
昼食を食べて小休止を終えたので村を経由してリーブスの街に行くことになっているのでこれ以上時間をかけることはできないので出発をすることに。
甘味を食べて満足してのか二人の足取りは軽かった。
「よう!3人とも無事に帰ってきたようだな!」
門の前で警備をしていたリッツが健治たちに声をかける。
もう一人の門番はいない、昼食にでも行っているのであろか。
「どうだ、薬草は採れたか?」
「ええ、十分に!」
そんなやり取りをリックがしていると、健治とレナは先に行く。
リーブスはこの門とは反対の方向にある奴から出ていくみたいだ。
「健治さん、向こうの門から進んで行くと主街道に出ますので、そこからさらに歩きます」
門から見える道は林道が続いているが木々の間隔は広いため見通しはいい。
三人は門をくぐり、リーブスへの道を歩いて行くとリックがやや遅れ始める。レナが心配になり傍に行くと立ちどまりそのまま座り込んでしまった。
「リック、大丈夫か?」
「はい、だい・・・大丈夫です」
だか、そんな風には見えない。 額に脂汗が少し滲んでいるので心配である。
このまま進んでも今日中にリーブスに着けるかはわからないし、最悪の場合野宿を視野に入れたほうがいいかもしれない。
「・・・仕方ないか」
健治はメニュー画面を開き、94式六輪自動貨車を召喚する。
日本陸軍が初めて正式化したトラックである、ドイツやアメリカの方が性能が上だと思うが、今はそんなに高性能は必要ないのでこれでいい。
「と、二人ともこれの荷台に乗ってくれ」
「け、健治さんこれは一体?!」
「乗り物だ。俺の魔法で召喚した」
「す、すごいね。リック」
「・・・・・・ああ」
「いいから、早く荷台に乗れ!それとも二人は野宿がしたいのか?」
「「いいえ!」」
二人は直ぐに荷物と一緒に乗り込む。
それを確認した健治はエンジンを掛けて、出発の準備をする。
「う、うあ!」
「きゃあ!」
エンジンの音に、驚く二人を尻目にゆっくりとアクセルを踏み込む。
問題なく走行できるのを確かめると速力を40キロまで上げる。最初は後ろが騒がしかったがだんだんと静かになっいく。 どうやら気を失ったのか無口になったのかわからないが・・・一度、94式を止めて荷台を見てみた落ちていたらやばいからだが、二人はそろって失神していたので放っておくことにした。
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94式を走らせて数十分後、50m先に川幅の大きな川とそれに沿うように作られた石造りの壁が見えてきた。おそらくあれが目的地のリーブスなのでろう。まだ日が十分に明るいのでこのまま野宿は避けることができた。
94式の後ろに回り、寝ている?二人を起こすことに。
「おい、二人とも起きろ!リーブスに着いたぞ!」
「「・・・はっ!」」
「リーブスに着いたはずだが、確認してほしいんだがいいか?」
「わかりました」
リックが慌てて降りていき進路方向の石壁を見に行く。レナは採取した薬草が入った籠を荷台から降ろしていた。
「健治さん、この馬車?すごいですね!こんなに早くリーブスに着くなんて驚きです!」
レナは興奮した様子で94式自動貨車を褒めちぎっている、こんな速度で移動する乗り物はないのかもしれない。
そんなことを思っていると、リックが戻ってきた。
「健治さん、リーブスです!もう着いたんですね!早いな!この乗り物は!」
リックもまたレナと同じように、興奮しながら帰ってきた。
「まあ、早く着いたのならいいじゃないか、二人とも早く街に行こう。 門前払いは食らいたくないし、俺のギルド登録もしたいしな」
「そうですね。行きましょう」
眠ったことで体力が大分回復したのか先ほどよりリックの足取りは軽い。
門に向かうと、そこにはリーブスに入るための順番待ちをしているのか行列ができているが回転は速いのか次々と街に人が入っていく。
「健治さん、ここがリーブスです。 中に入るには市民カードか各ギルドのギルドカードがあればお金はいりませんがなければ銀貨一枚いります。 でも、なかでギルドカードを作ればあとで帰ってきます」
(銀貨一枚か・・・、確か装甲艇の時にミケに教えてもらったな)
その時教えてもらった硬貨の価値は、
・銅貨=百円
・大銅貨=千円
・銀貨=一万円
・大銀貨=十万円
・金貨=百万円
・白金貨=一千万円
と、大体こんな感じであるらしい。
しかし、街に入るだけに一万は高くないか?。俺は教えてもらった時に財布のような袋を貰っており、中には金貨5枚と銀貨10枚、銅貨50枚が入っていた。
多いような気がするけど、有れば有るだけ困らないので貰っておくことにする。
「お金はあるから大丈夫。・・・ほら、もうすぐ順番だぞ」
「おっと、そうですんね。・・・はい」
リックはギルドカードを門番に見せると直ぐにはいっていく、レナも同じだ。
「身分証の提示をお願いします」
「すいません。身分証がないので仮証の方をお願いします」
「では、銀貨一枚とこちらの水晶に手を置いて貰いたい。これで犯罪歴がないかを確かめるので」
そこにはボーリングの球ぐらいの大きさの水晶が置かれていた。
「はい」
健治が門番に銀貨を渡し、水晶に手を乗せると反応したのか青く光を放ち始める。
「良し、問題なし! ・・・ではこれが仮証だ、効果は一週間でそれを過ぎたら強制退去。だが、それを三回繰り返すと奴隷落ちになるから気をつけろよ」
「わかった。そうなりたくはないな」
「ははっ!そうだな。・・・あらためてようこそ!リーブスへ」
特にトラブルもなく、街に入ることができた。
門をくぐるとリック達がいたどうやら待っていたみたいだ。
「すまんな。待たせたかな?」
「いいえ、早い方ですよ。ねえ、リック」
「ええ、遅い人はもっとかかりますし」
「じゃあ、ギルドに行くか。手続きとかはその日にやっておかないと、次の日以降は億劫になりやすいしな」
「そうですね。・・・こっちです」
リーブスの石畳の大通りを進んで行く3人、周りを見ると人族以外にもさまざまな種族がいるようだ。
やはりここが異世界なんだと、ここは自分のいた世界の過去ではないんだと改めて思う。
やがて、中央広場に出るとリック達は中心部に辿り着くと立ちどまり振り返る。
「健治さん、ここがリーブスの街の中心で今通ってきた方向に見えるのが冒険者ギルドで、その反対にあるのが商業ギルドの建物です」
健治が振り返るとそこに三階建ての石造りの建物が目に入る。 看板にはわかりやすいように剣と杖が交差した絵が描かれていた。
反対に商業ギルドの方を見ると開いた本と羽ペンが描かれている看板が見えた。
(なるほど、わかりやすいな。・・・まあ、田舎から一旗揚げようと街に出てきても、文字が読めないこともあるからな)
ちなみに健治はスキルで文字が日本語と同じように見え、喋れてそして書くことができる。
このスキルがなければ、かなりやばかった。
「では、健治さん行きましょう。 自分たちも薬草の換金をして依頼の完了報告をしたいので」
「そうだな、行くか」
三人で冒険者ギルドの方に、歩いて行くと徐々に一般人の割合が減り、武装した人が増えてきた。
おそらく冒険者たちなのだろう、しかし健治のように銃を持つ者はいないのでこの世界では火薬がまだ発見されてないか一般的でないかのどちらかになるだろう。
木製のドアを開けると、正面に受付、右側に食堂そして左側に換金用の受付があった。階段があるので二階にも上がれるらしいが今回はギルドの登録がメインなので必要ないだろう。
「では、健治さん自分たちはこっちなので」
「ああ、ここまでありがとうな」
そういうとリック達は、換金用の受付に向かっていく。
健治が受付に視線を戻すと、列の一番短いカウンターに並ぶことにした。
そして・・・。
「こんにちは、冒険者ギルドにようこそ! 本日はどのようなご用件で」
受付にいたのは若い女性であった、紺色のボブカットでメガネをかけた知的な人であった。しかし、彼女に山はなくただ平原が広がっていた。 そんなことは日常的にあるのか彼女は表情一つ変えずに仕事を進める。
「ええ、今日はギルドの登録に来ました」
「では、こちらの用紙に記入可能な項目に記入してください」
渡された用紙には名前と種族、得意な武器を埋めていくようだ。
健治は名前と種族はそのままに武器は機械式クロスボウと書いておく。この世界で、銃火器と書いてもわからないし、なるべく公式の文書に残したくはない。
「・・・できました」
「はい、・・・・・・確認しました。では、このにカードに一滴でいいので血をおねがいします」
健治は自前のナイフで親指を小さく切る。 出てきた血を無地のカードに押し付けるとカードが淡く光ると用紙に書いた物と同じものがカードに表示された。
「では、これにて登録は完了です。 ギルドの説明はいりますか?」
「ええ、お願いします」
「冒険者ギルドにはS~Fまであります。基本的に下位ランクの人がワンランク上の依頼を受けることは可能です、ですが期限を過ぎたり破棄をしますと違約金を支払ってもらいます。またギルドからの警告を無視して違反行為を重ねた人は奴隷落ちとなります。そして、ギルドに張られている依頼には、紹介料を引いた報酬が書かれておりますが、ギルド以外からの指名依頼の場合は自己責任となりますので注意をお願いします」
「わかりました。・・・ああそれと近くにいい宿屋はありますか?」
「そうですね。この時間ですと、どの宿屋も埋まっているかも知れません。なのでギルドに大銅貨2枚で泊まることもできます、ですが食事はつきませんが」
「では、今夜はギルドでお願いします。明日は以降はどこに」
「大通りを西門の方に行きますと{満腹亭}がありますのでそこがおすすめです。 私の叔父がやっているので料理と宿泊施設の設備には自信があります。 あとこれが二階にある宿直室のカギです」
「ありがとう」
財布から大銅貨二枚をカギと交換し健治は二階に上がっていく。
リック達と会うかと思ったが、彼らはすでに宿に戻ったのだろう。
二階に上がると、同じような作りのドアが並んでいた。そこからカギの番号と同じドアを見つけていく。
「・・・とっ、ここか」
番号の合う部屋をみつけ中に入ってみると、簡素な作りの部屋が視界にうつる。
木製のベットに薄い掛布団、小さなテーブルが置いてあるだけだが掃除はしてあるようできれいであった。
「確か、食事は出ないと言っていたな。なら」
健治は、アイテムボックスから調理器具を出そうとして手が止まる。
「どうしよう、料理器具が出せない」
そう、ちゃんと作ろうとすると高火力が必要である。しかし、こんな換気のできないような狭い部屋で作ろうとすると暑い・匂いがこもるなど問題が多い。
「くっ!仕方ない。今日は野戦レーションにするか・・・はぁ~~~」
(ようやく暖かいごはん(元の世界)が食べれると思ったのに)
そんなことを思い、メニューを調べ始めるのだった。
次回ぐらいにはヒロインが出てくる! はず!