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第16話

 ようやくできました。

遅くてすいません。


 「我々は、桜華隊である。この船の責任者は誰か!」


 こちらに白旗を上げていた船に乗り込み、健治は大きく声を張り上げる。

三人のネコ娘たちは、周囲を警戒しながら彼らの答えを待つ。

 しばらくして、男たちの中から二人が前に出てくる。

一人は、厚い筋肉をまとったガタイのいい背の高い男と、もう一人は引き締まった細マッチョの男がこちらに歩いてきた。


 「俺がこの船の船長のカーク・フッドだ。こっちは副長のレストだ。今回の降伏を受け入れてもらい感謝する」


 二人は降伏が受け入れられたことに感謝して頭を深々と下げる。

実際問題、この時代ぐらいだと捕虜はとらない、いやとれない。 反乱の危険性があるから降伏しても殺されることが多いのだ、例え生かしても食料や水などを食いつぶしていくだけで実際には重荷にしかならない。

 だが、船舶を一隻建造するのに時間と材料がかかるために降伏した船は勝った方にはかなり美味しい戦利品だったりする。

 あとは、元船員を船倉に閉じ込めるか、奴隷にして使い潰す気で町まで動かしてから商人に売ってしまうなどある、が今回はそんなことはしない。


 「あなたがこの船の船長ですか、自分はケンジ・タチバナと言います。桜華隊と後ろの艦の長をしています」

 

 「今回ことはすまなかった。あの町から連れてきた、いや連れてきてしまった人々は全員この船にいる。確認してくれ」


 「わかりました。・・・ですが、その前にこの船に負傷者や病人はいませんか? もしいるのであればこちらで治療いたしすが」


 「本当か!」


 「ええ、この洋上ではまともな治療はできないでしょうから」


 「それは、助かる。 だが、俺たちには払える物が」


 「これに関しては、我々は申し出たことです。お代はいりません」


 「すまえ、その言葉に感謝する。おい、お前ら怪我している奴らを運んで来い」


 「「「「へい!」」」


 「リク、ミケに連絡してレリーナを呼んでほしい」


 「はっ了解です、司令」


 船長の声で船員たちは怪我人を収容している部屋から運んでくる。

運んでこられてきた怪我人は皆大なり小なりの怪我していたが命に係わる重大な物はないのが幸いかもしれない。

 しばらくして、高雄から医療バックを抱えたレリーナが到着して仕事は始める。

手順としては、先の町の怪我人と同じなので大きな混乱もなく進行していく。

 それを、確認していると高雄の後方からイマサの二等輸送艦が近づいてくるのが見えた。

どうやら、敵の駆逐は終わったのだろう。

拿捕した船の反対側に停泊すると、サリカがこちらに降りてくる。後ろにいた他の者たちはイマサから縄梯子をかけてもらって来ようとしていた。


 「そちらも終わったようだな、健治。それで・・・彼らはどうするんだい?」


 視線の先には捕虜にした海賊たちがいるが、縄などかけずに多くは治療を受けておりまるで病院船か野戦病院みたいになっている。

 

 「そうだな・・・サリカ、実は相談があるんだがいいか?」


 「相談?・・・まあいい、要件は」


 「彼らを借金奴隷としてこの船ごと雇わないか?」


 「はあ~~~!健治、彼らは海賊だぞ。ギルドに連れていけば報奨金が出るのにそれをふいにするきか!」


 健治の提案に、ため息と共に呆れたように声を上げる。

この世界において、犯罪者を更生をさせているような所はない。

 サリカの反応が一般的なものであった。


 「だが、サリカ。考えてみろ、彼らを雇うということはサリカの商会は海にその販路が広がることになる。奴隷なら反乱も起きにくいだろう」


 「た、確かに、船を持つことも王都に店を持つと同じくしたいことだったが」


 「なら素直に受け取ればいいと思うが」


 「健治!お前は船一隻と経験豊富な水夫がただで手に入るなんて聞いて、簡単に受け取れるか!」


 「まあ・・・そうだな」


 商人でなくても、これは素直に受け取れない。

だがしかし。


 「サリカ、これはこちらからの信頼の証として渡したいんだがどうだ?」


 「これを・・・かい?・・・・・・わかった、ただこれは貰い過ぎだ」


 貰った物が大きすぎて、躊躇いが大きいのだろう。

そんな彼女を安心させようと健治はある提案をする。


 「なら、一つ依頼を聞いて貰っていいか?」


 「ものによるね」


 「これから行く先々の港で情報を仕入れてほしい」


 「どんな情報だい?」


 「何でも、どんな特産品があるかとか、どこかで災害が起こったとかとにかくいろんなのでいい」


 サリカは最初無理難題の情報を掴んで来いと言うのかと思ったがそうではないことに心の中で安堵した。


 「・・・まあ、いいだろう。それなら、釣り合うかもしれん」


 「よろしく。・・・なら、この船を改造しようか」


 「改造?」


 「そう、船の船尾にスクリューを取り付けようと思ってな」


 「それを付けるとどうなるんだ」

 

 「風がなくても進める」


 「・・・・・・健治、私をからかっては・・・いや、そうだったな今乗っていた船も風で動いているわけではないからな」


 あきれ顔をする彼女だが、すでにそれを体験しているので妄想の類ではないとわかったが。


 「だが、いいのか?この技術はどの国でものどから手が出るほどのものだと思うのだが」


 「もちろん、そうだが。搭載するのは型落ちの旧式だが魔石でも使えるように小改造したものを使う。もっともこの世界の製鉄技術だとコピーはまず無理だと思うから大丈夫だ」


 「そ、そうか、まあそれならいいかな?」


 若干引きつった顔をしたセリカだったが、直ぐに戻して海賊のリーダーに向かっていく。


 「と、言うことだがお前たちはどうだ。この話、受けるかい?」


 そう言い放ったサリカに健治は苦笑する。ここで拒否したとしても町に送られて犯罪奴隷とし一生鉱山で暮らすことになる、彼らに選択の余地はないとも言えた。


 「先ほどの話は、本当なのか?俺たちを借金奴隷として雇い、商船を動かすなんて」


 「本当だ。私もこの話を聞いた時は耳を疑ったが、だがしかしまたとない機会だと確信した。 よって私はこの話に乗ろうと思うがお前たちはどうか?」


 カークは、後ろを見わたして部下たちの顔を確認し答えを出す。


 「俺からもお願いする。部下ともどもお願いしたい」


 「うむ、私からもお願いする。これから大いに忙しくなるが、お前たちの腕に期待する」


 どうやら話は纏まったようで、彼らの顔は先のほどの絶望感に沈んだものではなく確かな希望がそこにはあった。


 







 「サリカ、もういいか?」


 これからのことを話し終わったと思い、健治は話しかける。


 「うん? ああ、健治か。一応大まかにはな、だが改装する船がどれくらいのものかまだ見てないからな。それに、奴隷の首輪もないし一度町に帰ろうかと思うが」


 「どれくらいかかる?」


 「そうだな、今回の依頼の報酬を受けとってからギルドで彼らの奴隷契約をするとしても一日二日ぐらいだな」


 「そうか、ならこのままイマサに乗艦して先に戻っていいぞ。俺たちはこの島のどこかで改装作業をしようと思うから終わったらまたイマサに乗って帰ってくればいい」


 「そうだな、それが一番いいか」


 少し考えてからサリカも同じ考えに至ったが。


 「それだと健治たちの報酬はどうしようか。本人が受け取りにいかないと渡せないし」


 「なら、改装を終わらせてから一度ギルドに寄るよ。多分サリカと入れ替わりで行けばいいだろう」


 「ならいいだろうな、私はそのことをギルマスに伝えとくよ」


 サリカはそう言い終えると、カーク達と攫われた人たちを引き連れてイマサ(二等輸送艦103号)に乗り移っていく。


 「あんたのおかげで助かった、本当に済まない」


 「自分からも、ありがとうございます」

 

 去り際にカークとレストがそれぞれにお礼を言ってきた。彼らとしても今回のことはまさに渡りに船だったのだろうか。


 「イマサ、少しの間彼らを頼むぞ」


 「はっ!わかりました。司令」


 イマサはサリカ達を乗せて、先に町へと送っていく。


 「帽振れーーー!」


その姿が見えなくなるまで健治たちは、帽子を振り続けた。



 「さてと、改装するためにはまず場所が必要だな。ミケ、水偵か零観・・・しか、ないよな。他の機種はまだ開発できてない」


 水上戦闘機に乗りたかった健治だが日本海軍が本格的に試作し始めたのは開戦後ぐらいなのでがっかりするのであった。


 「まあ、ここは零観でいいか。ミケ、場所を確認したいから後ろに乗ってくれないか?」


 「私でいいのかい?」


 「ああ、そうしてくれ」


 「・・・・・・はあ(気付いてないよ、この馬鹿)」


 ミケは、健治の後ろに視線をやるとアーシェとレリーナの二人がふくれっ面で健治の方を見ていたが本人はわかってない。

 そんなことをつゆ知らずに健治は高雄に搭載されている零式水上偵察機に向かおうとした時。


 「・・・ああ、やっぱりミケは艦に残ってくれないか?水偵にはアーシェ達に乗ってほしいから」


 「・・・そうか、その方がいいぞ。うん」


 突然の変更に驚いたがミケはよくやったと大きく頷く。

後ろで聞いていた二人はそれを聞いた瞬間、笑顔が浮かんでいく。

 余程うれしいのか長い尻尾はないはずだが見えた気がしたのは気のせいだろうか?


 「二人とも、そういうことだから飛行服に着替えて来てくれ。先に中央の甲板に行くから」


 「「はい!」」


 二人は、急いで飛行服に着替えに行くのを健治たちは見送ると


 「よく、二人を選んだね。わたしを選らんだ時は、こいつ馬鹿か!と思ったが」


 「いや、ミケに頼んだ時にすごい寒気がしてな」


 「やれやれ、その悪寒を感じたくないならこれからも気を付けることだな健治殿」


 あきれ顔のミケを尻目にスマホで飛行服に着替えると、水偵が駐機してある所に向かう健治であった。




 少ししてから飛行服に着替えた三人は水偵の前にそろっていた。


 「主、これが飛行機といものですか?」


 「師匠、これが空を飛ぶんですか?」


 「ああ、これは水偵、零式水上偵察機と言う機体だ。主に戦艦・巡洋艦と水上機空母に搭載されている艦隊の目の役割をしている飛行機だ」


 「「へぇ~~~」」


 この世界には空を飛ぶのはワイバーンなどで、国によっては竜騎士などとしているくらいだが維持費などがかかるため多くはいないと聞いたことがある。


 「ほら、出発するから二人とも後部座席に乗ってくれ」


 「「は~~~い」」


 素直に従い後部座席に乗り込んだことを確認した健治は操縦席に乗り込み、発動機を動かす。

召喚された機体には、日本機ありがちな動作不良などなく一発で発動機はかかる。

 1080馬力の金星43型空冷式副列星型エンジンが唸りをあげていき、そしてプロペラが回りだす。

そして・・・


 「行くぞ!・・・あ、そうだ。二人とも首には気をつけろよ」


 「「えっ・・・きゃああああ」」


 火薬式の射出機が水偵を打ち出す。

しかし、油圧式ではないので勢いが付きすぎて首を痛めやすので注意が必要である。

 言うのが遅すぎな感じしかしないが・・・まあいいか。

 島の周囲を確認するために、高度を上げる零式水上偵察機がこの世界で初めての飛行機での飛翔であった。









































































































 情報はいつの時代でも大事です。

島の形は、トラック諸島か、マリアナ諸島くらいを考えています。

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