第12話
ヒロイン二人目! 近代兵器を使うには人数がいりますから(-_-)
でも、まだ人員召喚はしません。
行き倒れの少女を拾ったの見届けたサリカは次の夜営地に向かって商隊を移動させる。
健治は少女を助手席に乗せるとそれについていくと前回の夜営地と同じような地形の場所に到着した。
ここが今夜の寝床らしい。
「それじゃ健治、あれの設営を頼む」
「ああ、わかった」
前日の夜営でお世話になった鉄条網に味を占めたのか設置を依頼するサリカに苦笑する健治だったが、仲間の安全のためには設置したほうがいいのでアーシェと一緒に作業を始めていく。
前回の場所と地形が似ていたので一時間もかからずに敷設を終わり装甲車の所に戻ると、助手席の所から拾った少女が出てくるのが見えた。
「起きたか?俺はケンジ、ケンジ・タチバナ。こっちは相棒のアーシェだ、君の名前は?」
身長はアーシェより少し低いくらいだが、濃い目のグレー色の髪はショートカットで動きやすさを出している。そして、アーシェよりも小さいが平均よりも大き目の山が服の上から見えた。
「は、はい!私はレリーナ・カヤ、いえリーフリットと言います。あ、あの私を助けてくれのは健治様ですか?」
「手当などをしたのは確かに俺だ。ああ、あと様はいらない」
「い、いえしかし、恩人に失礼はできません」
「ほう、カヤック家の娘がどうしてこんな所にいるんだい?」
三人で自己紹介をしていると、後ろからサリカの声が聞こえてきた。
しかしカヤック家の名前を耳にした時、明らかにレリーナは顔をしかめる。
「サリカ、カヤック家ってなんだ?」
「うん、この国の王都にある医者の家系だよ。代々魔法治療に傾倒していたが現当主に代替わりしてからさらに加速してね、医療費で相当荒稼ぎをしているって話だ」
サリカがカヤック家のことを語っているときにレリーナは、俯いて服の裾を強く握りしめていた。
「・・・っあんな家!私には関係ありません!」
余程ため込んでいたのか、大きな声でカヤック家を否定していく。
それを見た、健治たちは驚くとそれに気が付いたのかレリーナは再び俯き小さくなる。
「す、すいません。突然大声を出して、でももうあんな家とは関係ないので・・・その」
「いや、いい。では、・・・なんといえばいいかな?」
「できれば、レリーナかもしくはリーフリット、でお願いします」
「今度はリーフリットとっ来たか、懐かしい家名を聞いたな」
健治がサリカに視線をやると、ヤレヤレといった具合に答えてくれる。
「リーフリット家は、先のカヤック家の逆でね。主に薬草学に重点を置いている薬師の家系だよ、私も駆け出しのころよく世話になったよ。レリーナだったね、ミントさんは元気かい?」
「いいえ、祖母は10日前に旅立ちました。私は、遺言に従って王都を出ました」
「そうかい・・・あのミントが・・・ねぇ」
サリカは顔を後ろを向いてから、視線を上げるとしばらく無言で夜空を見ていた。
この世を去った知り合いに思うところがあるのだろうか、向けられた背中はこれまで見たどの背より小さく感じた。
「良ければ、どうして王都を出たのか聞いていいか?」
「わかりました。・・・実は」
レリーナの口から語られる話は、健治にとって許容しがたいものであった。
彼女の家は、王都でも十指に数えられるというカヤック家という医者の家でレリーナは長女として生まれる。 彼女の父はリーフリットという薬師の家だったが魔法の高い素質があったために魔法による治療へと徐々に傾倒していく。そのあと魔法医学の権威であるカヤック家の娘と結婚するとこれまで習っていた薬学を毛嫌いしていった。
その後、当主の座を得るとこれまでより高い治療費を請求していくようになっていく、不満の声は上がるのだが彼並の医者が王都に少ないのと実力はあるために受けようとする者はあとを絶たない。
やがて彼は息子と娘二人を授かるが、長女のレリーナの魔力は他の兄妹より格段に低かったので出来損ない呼び以降、夫婦で彼女に冷たく扱っていく。
そのことを知った、祖母のミント・リーフリットはレリーナを引き取ることにした。
レリーナの父も邪魔者がいなくなると考え、特に文句は言わなかったらしい。 その後レリーナはミントから薬師としての手ほどきを受けるようになっていく。
だが、時間は残酷である。
レリーナが15才になったときミントは病に倒れてしまう。
ミントが倒れたことが住人に知られると、やがて噂が大きくなり息子である彼女の父親に知られるのは時間の問題となるために彼女はレリーナに王都を離れるように言う。
自分がこれまで見てきた患者たちが息子であるレリーナの父のことを逐一報告してくれていたので、このままいけば大事な孫が奴隷商に売られてしまうことを知っていたのだった。
そのことを聞いたレリーナはあらかじめ祖母が用意してくれていた旅具を身に着けて、祖母と一緒に行こうとするが断られる。
しばらく問答をしていると通りから重い馬車の音が聞こえてきた。
ミントは重い体を起こしてドアを塞ぐと、レリーナに早く行くように睨み付ける。 ようやく、レリーナは裏口から転げ落ちるように裏路地を走る。
彼女が最後に来たのは、扉が壊れる音と祖母の耐え忍ぶ声なき悲鳴だった。
そこからどうやって王都を出たかは覚えておらず、街道をただひたすら走って行ったことしか覚えてはなかった。
「これが・・・すべてです」
「そうかい。まったくあいつは、かっこつけすぎだよ。・・・だが、その息子は・・・マジで糞野郎だな」
話を聞いていたサリカは両手をきつく握りしめており血が滲んでいる。
健治も腹が立っていたがサリカの怒りを見て、少し冷静になれていた。
「これだと余計にレリーナは健治が引き取るしかないね」
「なんでそうなるんだ」
「彼女は薬学を学んでいる。冒険者として役に立つであろう?」
「・・・いや、こちらがよくても本人の意思も確認しないとだめだろう」
「それもそうか、レリーナ。これからは彼に着いていきな、その方があいつが教えたことも無駄にはならん」
「おい!」
「あ、あの!よろしくお願いします」
勢いよく頭を下げる彼女に頭を抱える健治、それをニヤつきながら眺めるサリカとあくまで主人である健治に任せるアーシェ、見張りの交代を伝えに来たクルトはこの状況に混乱するのであった。
結局、彼女を引き取ることになった健治はアーシェにお願いをし、レリーナに水浴びをして旅の汚れを落としてくるように頼む。
アーシェには、レリーナ用の着替えの服(ドイツ陸軍の北アフリカ戦線の熱帯地用ジャケットの上下と下着等)を渡してついてっいてもらう。
森の中などを歩き回ったのか彼女は泥等にまみれていたのでさすがに衛生上大変よろしくない。
「まあ、いいか。今の内に夕食を仕込み始めるか?」
「お!いいね。今夜は何にするんだい?」
すっかり胃袋をつかまれたのか嬉々として今夜の食事を聞いてくるサリカに用意しないと言えずに材料を取り出す健治。
(まあ、用意しなかったらどんな顔をするか気になるが、あとが怖いからな)
後ろにいる冒険者たちもちらちらとこちらを(正しくは鍋の方を)見ているので作らないわけにはいかなくなっている。このまま作らなかったら確実に暴動が起きることは火を見るより明らかである。
「今夜は・・・そうだな。昨日仕留めたオークを使って、ボタン鍋を作ろうと思う」
「ボタン?それは服についている留め具で調理をするのかい?」
「違う。ボタンと言うのは俺の故郷でイノシシのことをそう呼ぶんだ。 オークは豚とイノシシを混ぜたような姿だから、問題はないだろう」
「まあ、おいしければ何でもいいがな」
「はぁ~~~。まあいいけどな」
健治はオークの肉をスライスしていくと、用意した他の材料も仕込んでいく。
本来なら、みそ味だが彼らの口に合うかどうかわからないので今回は塩味で味付けをする。
臭み消しの香草を多めに入れて、味見をしていると。
「すいません主。遅くなりました。今、手伝います」
「もう、できるからアーシェはレリーナと一緒にテーブルを片付けてくれ」
「はい。では、私はテーブルを片しますから・・・」
そう返事をするとアーシェは、レリーナに指示を飛ばしてテーブルの用意を完了していく。
そして、、10分後には人数分の皿と黒パンが並べられていた。
「では、みなさん。交代で食事をどうぞ」
「「「「「「「「うお~~~!飯だ!」」」」」」
食事の合図で冒険者の全員が動き出そうとしていたが、護衛の依頼をおろそかにはできない。それに気づいた彼らはお互いに頷き合うとすぐさまペアになり、何かをし始める。
気になった健治たちが身に来ると、そこでは。
「あいこで、ショ!ショ!ショ!・・・・・・」
壮絶なじゃんけん大会がそこにはあった。
誰もが一番温かい食事を食べるために彼らは身体強化の魔法を使って護衛依頼よりも真剣にじゃんけんをする姿は、すさまじく能力の無駄遣いの極みである。
そんなことに呆れつつもあまり気にも留めずにサリカは先に食事にありつくのであった。
そんな彼らのことをほおっておくことにした健治たちは、先に食事にすることにした。
用意をしている時に着替え終わったレリーナを改めて見ると、汚れていた服は渡した軍服に着替えたことで先ほどとは違ったきっちりとした印象を受ける。 また髪の毛は本来の色を取戻したのか灰色から明るい茶色へと変わり、泥で汚れていた顔も綺麗になったことで少女の素顔がよくわかる。
鳶色の瞳をもつタレ目が優しげな印象を感じるがその奥には確かな意思が見え隠れしていた。
「では、先に食べているか・・・はい、レリーナ」
「い、いただきます」
恐る恐る器を受け取ると、アーシェと一緒に夕食をとり始める。
久しぶりのまともな食事なのか、スープ皿かた立ち上る湯気の間から薄っすらと涙が見えた。
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何事もなく夜が明けて、再び移動を開始する商隊。
健治は安易に装甲車を変えるのは危険と判断して、軽装甲車Sdkfz222のまま護衛を開始している。
しかし、レリーナには銃器を扱う訓練をしている余裕がないので助手席に乗せ、アーシェは引き続き銃座に座ってもらったが乗り込むときに彼女の顔が少し不機嫌そうな気がしたが、気のせいだろうか?
そうして出発した商隊は順調に進んで行く中、健治は気になっていたことがあった。
「レリーナ、君が習っていた薬学はどんなものなんだ?よければ聞いてもいいか?」
「はい、大丈夫です。祖母に習った薬学を簡単にまとめると薬草を用いた治療術です」
「それは、生薬による自然治癒の向上を目指した考えか?」
「そうです・・・ご存じだったのですか?」
「いいや、俺がいた所だと生薬を主に使用しての自然回復を目指す東洋医学と病気や傷などを人が直接治していく西洋医学があってな。今はそれを思い出していた」
「そうなんですか、師匠の所は進んでいるんですね」
「ああ・・・って師匠てなんだ?」
「サリカさんが、師匠をそう呼べと聞きまして」
「・・・ああ、そう・・・なんだ。だけど、俺は民間療法しかわからないから教えられる所は教えるがそれ以外は自分で知らべてくれ。・・・でも、あいつなら教えられるかな?」
「あいつとは誰ですか?」
「あとで紹介するよ。俺よりも知識はあるから大丈夫だよ」
レリーナに医学を教えることを約束してから、さらに商隊は進んで行くとようやく目的の港町が見えてきた、・・・だが。
「師匠!前方に黒煙が見えます!」
「なんだと・・・・・・本当だ!」
双眼鏡を使って辺りを警戒していたレリーナは前方から確認できた黒煙を見て、健治に報告をしてくる。
それを聞いた健治も双眼鏡を覗くと確かに煙が見えた。
装甲車の速度を上げて、サリカの乗る馬車に近づき。
「サリカ、少しいいか?」
「なんだい?健治」
「前方に黒煙が見える、この先には目的地の港町があるのではなかったか?」
「なんだと!」
双眼鏡をサリカに貸すと直ぐに彼女はそれを覗く。
「・・・確かに、しかも煙が上がっている場所は・・・今回の私たちが行く町じゃないか!?」
「で、どうする?・・・このまま進むか?引き返すか?」
「・・・・・・くそ!・・・健治、医薬品はあるかい?できれば大量に」
「売ってもいいが、それではあの町で買うはずの商品が買えなくなるのではないのか?」
「確かにな、だが・・・あの町は、私が冒険者時代に世話になった所だ。できれば助けたい」
サリカは今できることを考えた。
それが自分の力ではないときは、できる相手に頼み込む。
だからなのだろか、彼女が自分の店が中々持てない理由は・・・・でも。
「そういう考えは、嫌いじゃない。いいぜ、どれくらい欲しい」
「それは、町に着いてからだな。・・・急ぐぞ!」
サリカは、そう呟くと商隊の速度を上げる。
健治は、町から離れる三隻の船を黒煙の間から見えた気がした。
次回は、海戦!かも。
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