第11話
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side サリカ
私の名前は、サリカ・コーリン。
数年前までは冒険者として動いていたが、副業としてしていた商売が大きくなり冒険者を引退。
大型の馬車を牽いて行商人として各地を巡っていった。
今回の依頼が成功すれば念願の店舗を手に入れる資金が集まるので気がはやる。
しかし、それが焦りになっているのか?。道中にはトラブルが満載していた。
一番の近道を行こうとすると土砂で通行できなかったり、宿屋が満室で野宿が通常より多くなったりなど嫌がらせかと思うくらいに予定が書き変わる。
極め付きは、リーブスの街に着いたときに護衛の冒険者パーティーの一つがなんと腹痛で動けないという、幸いなのかこの街には、ガキの頃から知っているアデルがいたはずなので相談しに行くことにした。
翌日の昼にアデルが二人の人間を連れて、顔を出してくる。
そして、アデルから話を聞くと、この二人が相談していた代わりの冒険者らしい。
ランクを聞くとまだEランクだと答えると、ここまで着いてきたもう一組のパーティーが反対をしてきたがアデルはこの街でこの二人以上の人間はいないと太鼓判を押してきた。
ならばここは、アデルを信用しようすることにしよう。
冒険者たちは不満そうにしていたが放っておく。
翌朝、念のために早く集合場所に行くとすでに二人は来ていた。
傍らには、鉄で出来た馬車が置いてある。
彼らはこれで護衛をするという、馬がなくても大丈夫かと心配すると問題ないと返って来るのでいいのだろう。
そして、出発時間ギリギリにもう一つのパーティーが集まって来る。
あれほど飲みすぎるなと釘を刺したのに寝坊したらしい、報酬をカットしてやろうかと本気で考えてしまう。
だが予定時間になったので、冒険者たちを先行させて馬車を移動させていくと、突然後ろから巨大な獣の嘶きみたいな音が聞こえたので振り返ると健治たちがあの鉄馬車に乗り込み動かそうとしていたのが目に入った。どうやら、先ほどの音は鉄馬車を動かすための物みたいなので問題ないと皆に伝えて旅程を消化しようと前に進ませる。
だがあの二人・・・いや、健治に驚かされるのはどうやら始まったばかりのようだ。
昼食をとるために寄った休憩所で各自が持参した食料を食べていると、どこからかいい匂いがしてくる。
その匂いをたどっていくとケンジたちが食事の支度をしていた、どうやら匂いの正体は鍋にあるスープのようでたくさんの具が入っているのが見えた。 おいしそうだ。
そして、アーシェと名乗った兎人族の少女は大きなテーブルを片し始めると黒パンとスープ皿を並べ始めていく。
その数、11枚もあった。
「ケンジ。この食事は二人だけにしては多いと思うが」
「?俺たちだけではない、サリカさんたちの分も用意してあるが?」
「なっ!自分たちの貴重な食料ではないのか? それにそんなことをして二人に何の利益がある」
他の仲間や護衛の冒険者たちも驚いている。
それもそうだろう、食事に関しては軍隊はともかく、ほとんどの場合は各自が自腹で賄はなければならない。
だが、彼らは違った。 同じ仲間だからこそ一緒に食べることが大事だと、腹を満たすことで自分に余裕を持たせ互いに連携するために必要なことであると彼は語った。
それが事実なのかリーブスの街を出発した時よりも大休止後の方が早く出発が出来て行き、予定よりも多く旅程を消化することができた。
たかが食事と軽く考えていたがこれは考えを改めた方がいいのかもしれない。
だが・・・健治のことで驚いたのはまだまだあった。
それは、夜営の時だった。
健治たちは冒険者パーティーのリーダーのクルトと話しているようだが・・・話が終わったのか健治たちは馬車から大体30メートルくらい離れると何かを取り出して近くの木に巻くと相方のアーシェは小型の荷車のような物に木に巻いたものと同じ物を地面へと伸ばしながら歩いていく。
私はそれが気になったので仲間と共に確認に向かった。
近づいてみると、どうやら糸のように細く伸ばした鉄のようだが所々に先が鋭い鉄糸が巻いてある。
仲間がナイフで切ろうとしていたが薄くキズが付くだけで一向に進まないようでイラつき始めているようだ。
だが・・・私はこれを見て、思わず背筋が冷たくなった。 その色はかつてドワーフの集落で見たことのある鋼にそっくりなことに、その時に聞いた話だと鋼はドワーフでも作るのが難いしのであまり数はないと聞いたことがあったのだが健治はそれを糸のように加工したものを何メートルも設置していく。
と言うことは健治にとってこれは大した価値はないということになる。
だとすると彼の後ろにはこの国はおろか私が冒険者時代に見たことのある国よりも大きな国が付いていることが考えられた。
本格的にかの国が侵攻の意思を見せればあっという間に蹂躙されてしまうのは目に見えている。
どこかの馬鹿貴族などが健治に喧嘩を売った場合のことを考え、私は少しでも健治の信用を得ておこうと心に決めるのである。
side 健治
鉄条網を設置が終わり、アーシェが入れてくれたお茶を飲みながら周囲を確認しておく。
河が流れている西側からコの字型に鉄条網は三重に敷設してあるので足の速い個体や馬に乗った盗賊が来てもこれを越えることは容易ではない。
そして、装甲車もなるべく三方をカバーできるように停車させてもらった、あとは。
「夜間の照明用にこれを置いておくかな」
健治がメニューからドイツ陸軍の34型8㎝迫撃砲一門と各種弾薬を召喚しておく。
夜間戦闘での防衛戦では、守備側は明るい方が戦いやすい。
迫撃砲の用意を終えると、健治は手持ちの装備の確認をする。
今は44型7.92mm突撃銃を使っているが人型で小型の魔物は十分に対処できるが、獣型の魔物には少々心もとないので四式改も召喚しておいてそれらの弾薬も多めに出す。
過剰なくらい武器を出してしまったが、初めての護衛依頼での夜のために緊張してのかもしれない。
「アーシェ、そっちはどうだ?なにか不備はあるか?」
「いいえ特には弾薬も十分にありますし、機関銃にも不調はありません」
「そうか・・・ならあとは、交代で休むだけだな」
「はい、では主が先にどうぞ。私が先に休むわけにはいきませんし」
「いいや、アーシェからでいいよ。まだ眠くないし戦力的にはアーシェの持つ機関銃方が頼りになるしな」
「・・・わかりました。では・・・っおやすみなさい!」
彼女が言葉を切ると装甲車から降りて、健治の傍に来ると両手を首に回して一瞬の口づけをすると顔を赤らめて装甲車の中に入って行く。
驚いて呆然としている健治に後ろから冒険者たちの口笛と舌打ちが聞こえたが反応はなかった。
ちなみにサリカは笑いをこらえるのに必死だったようで健治に対しては。
「~~~若いね。くっくく!」
これまで何度も見てきたように若い二人を見て楽しんでいたサリカだった。
健治にとってのハプニングがあったがやがて夜も深くなり始め辺りは暗闇が支配する時間がやってきた。
月明かりなどしかない夜は幻想的だがそれは健治たちのいた世界での話で、この世界では日中よりも危険は格段と上がる。
だからなのか。
「!!アーシェ!戦闘準備だ!」
「!・・・はい!!」
健治はマップでアーシェは聴覚で異変を察して行動に移った。
アーシェは装甲車の銃座に乗り込み、20mm機関砲と7.92mm機関銃に初弾を装填し始める。
健治はこのことを他の冒険者と護衛対象のサリカに伝えるために向かった。
「敵襲!数30以上!迎撃用意!」
これを聞いた冒険者は飛び起き、武器を手に取る。
サリカたち商人は護身用のナイフを持ち、一つに固まった。
「おい、健治!本当に来るのか?」
見張りをしていたクルトは武器を手に確認をしてくる。
「ああ!・・・北から10!南からも10、あとは東からだ」
「わかった!おい、お前ら片付けるぞ!
「「「「「おう!」」」」」
健治は知らせを終えると、急いで元の場所に戻り四式改を手に取ると迫撃砲に照明弾を発射する。
天高く打ちあがるとそれは炸裂して効果が表れた。
「うお!なんだ急に明るくなったぞ!」
「全員聞け!これは味方だ。まず目の前の敵を潰せ!」
照明弾の効果で辺りは昼間のように明るくなった。
そして、鉄条網で身動きが取れなくなっているゴブリンをクルトたちは落ち着いて対処していく。
健治も四式改で向かってくるゴブリンを打ち抜いていくと、隣りの装甲車から重い炸裂音と比較的軽い炸裂音が交互に聞こえてきた。
アーシェの放った20mm機関砲と7.92mm機関銃の発射音である、撃ちこむ先にはオークがいたのが・・・。
なぜかアーシェは7.92mm機関銃で生殖器を撃ち抜てから、20mm機関砲で頭部を吹き飛ばしていた。 それを見た健治と見てしまった冒険者は思わず股間を押さえる。
痛くはないはずだがなぜかそうしてしまった。
他の冒険者も鉄条網に絡まり動けない魔物を仕留めたり、鉄条網に引っかかった味方を見て混乱した魔物には弓で倒していった。
それからしばらく戦闘が続いたが、やがてマップから赤い光点は消えていった。
「ふぅふぅ、終わったのか?」
冒険者の1人がそうこぼすと他は辺りを見回す。
闇が薄くなり徐々にだが陽が射していき明るくなってくと、今回の襲撃の規模が分かってくる。
まずゴブリンが33匹、ガルム11匹そしてオークが9匹と全部で53匹。
「俺たち、よく生き残れたよな」
健治たちと数を数えていたクルトは、その数の多さに顔が少し引きつっていた。
昼間でもこの数に襲われた場合でも何人はやられると考えてしまう。
しかし、今回仲間が無事なのは健治が敷設したあの鉄条網が魔物の侵入を阻んで彼らの遠距離武器が確実に数を減らしていったことが大きい。
「これが味方ならいいがもし・・・いいや」
そこでクルトは考えるのをやめた。
健治と敵対することをしなければ彼は手を貸してくれる、ならばこれからはいい友人であろうと決めたのであった。
朝食もそこそこに魔物の解体を済ませていく。
数が多いので時間がかかったが冒険者は臨時収入が商人は商品である魔石に各種肉と皮が手に入ったことにホクホク顔をしていた。
そんなこともあり出発したのは昼前になってしまったのは仕方ないだろう。
昨日と同じで装甲車で馬車についていく時、健治は先の戦闘で気になったことをアーシェに聞いてみつことに。
「なあアーシェ、あの時なんでオークの生殖器を潰してから、仕留めたんだ?」
「・・・・・・あのオーク達、私を見た時舌舐めずりしながら不愉快な視線をしてきたので」
「そ、それで」
「私の体は、主にしか見ることも触れることもさせませんがあんなことをしてくるから、あれらには消えてもらいました。 もちろん私を見て反応した部分をすり潰してからですが」
「・・・そうなんだ・・・ありがとうかな?」
「ふっふふふ、どういたしまして」
女性は怖いなと・・・感じた瞬間だった健治である。
それはともかく商隊は順調に馬車を動かして行き、目的の街まであと少しの所でそれはあった。
「商隊・・・止まれ!」
道端にボロ布の塊が落ちているのが気になり、サリカは隊を止める。
クルトのパーティーに周辺警戒を任せて、サリカは健治たちを伴ってそれを確認しに行く。
本来ならこのような物は放置が基本だが、もしも死体なら魔物を呼んでしまい街道の安全を損なってしまうのでその時は任意で処理をするのが商隊などを預かる者の暗黙の了解でもあった。
「さてと健治、すまないが頼んでいいか?」
「わかった」
健治はマップ機能で中身が生き物であるとわかっているが段々と光がなくなっていくということは、瀕死なのだろうと考える。
荷物からグローブを取り出して嵌めてから、ボロ布をひっくり返すとそこには薄汚れた姿の少女であった。
全体的に傷だらけで呼吸も弱い。
「どうだ、健治。・・・まだ息はあるようだが、どうする?お前さんが引き取るか?」
「え!なんでだ、彼女は奴隷じゃないぞ」
「ふっ。今のご時世じゃ、このまま生き残ってもほぼ確実に奴隷落ちだ。ならば・・・だ。健治が拾って、治療するなりして仲間を増やした方がいいと思ってな。・・・お前さんの使っている武器はもっと多くの人間が必要なのではないのか?」
最後の方を小声で言うサリカ、そのことを聞いた健治は押し黙る。
「私は、これ以上の人員はいらない。ならあとは任せるよ」
死体でない以上燃やす必要がないのでその場を後にするサリカ、健治がいかなるスキルを持っているかわからないがそれを見る気はないという意思表示なのだろうか?
深くため息をして健治はアイテムボックスからメディカルガンを取り出して、彼女に投薬をする。
一瞬の淡い光が彼女を包むとそれは消えた。
あとに残ってのは呼吸が安定し、傷もなくなった姿の少女だけである。
なんとなくヒロインを助けることが多い健治です。
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