プロローグ
超大陸ジーアス。その大陸は無限に続くと言われ、まだ大陸の「端」というものは確認されていない。大陸の各所では今だにいくつもの新種の生物や未開の地が発見されており、人々はこの大陸のほんのひつつまみしか解明できていないと言われている。
この大陸には魔界と呼ばれる世界があった。魔獣と呼ばれる恐ろしい獣たちが生息し、悪魔や吸血鬼たちが支配する地域だ。そこで育つ植物はどれもとげとげしく、魔人たちによって建てられる建造物はどれも猟奇的で禍々しさに包まれた世界である。
しかしこれらはあくまでも人間から見た価値観。魔界の当の本人、当の魔人たちにとってはそれが普通だし、魔人にも人間たちと同じように家庭があり、街があり、それぞれに仕事がある。人間の基準からするとどれも過激というだけである。
そしてこれは魔界の恋愛についても例外ではない。魔界では異性を強引に力で説き伏せたり、ねじ伏せたりできることが強さの象徴とされ、恋愛対象になり得るかのバロメーターになることがある。つまり人間でいうと誘拐、拉致、監禁などを行い自分が相手を支配できるということを相手に知らしめることが魔界では恋愛表現として行われることがあるのだ。
ここまで前置きが長くなったがようやく今回の主人公、魔王の登場だ。魔界では王政がひかれているのだが、実権は政府の官僚たちが握っており、事実上王は魔界の平和の象徴のようなものとして、(魔)人徳で選ばれているだけでかなり緩い生活を送っている。そのため生活にゆとりがあるわけで、ゆとりがあると恋をする。魔王にも想い人がてきたのだ。
それが人間国の王女だった。
そういうわけで100代目魔王ーデスバーンは魔人なりの恋愛表現で人間の国の王女ーエリザに求愛したのだ。拉致監禁である。
しかし運悪く、王女は非常に強かった。竜姫と謳われる人間国100代目王女、エリザ=ドラグスフィアは戦いにおいて大変優れた素養を持ち、幼い頃からそれを磨き上げてきたため、そこらの勇者なぞはなくそ程度なのであった。そのため魔界において5本指に入るほどの実力者であるデスバーンですら敵わなかったのである。
結局、デスバーンはボロ雑巾のようにされたのだがエリザのその強さからますます惚れ込んでしまい、憧れを抱いたのであった。
記念すべき第一話はデスバーンの告白から始まる。