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切なる願いに届きし想い  作者: 東京 澪音
9/21

両親


「いいか姫。取り敢えず家に上がったらダッシュで二階に行け。部屋は階段上って左の突き当りだ。母と父にはバレると厄介だからな。」


自宅の玄関前でそんなやり取りをしていた。


「なによ!自分から私の事ナンパしておいてさ、ご両親には紹介しないっての!?内緒とかさ!私は拾ってきた野良猫か!」


ややキレ気味の姫が若干興奮気味で僕に訴えてくる。


「誰もそんな扱いしてないだろ!これには色々深い訳があるの!ったく。兎に角、折を見て両親には紹介するから今は言われた通りにしてくれ。じゃ行くよ。」


どこか納得のいかない顔でこちらを見る姫をよそに、僕は玄関のドアを引いた。


「おかえり~。」


予想外だった。

母が玄関の前でスタンバっているなんて思いもしなかった。


マズい!

そう思って扉を閉めようかとしたが、時すでに遅し!


もの凄い力でドアを押され、なすすべなく扉は開かれた。


「あら~そちらの綺麗な女の子は誰かしら?母さんに紹介してほしいわ~!」


葛城 樹里亜”かつらぎじゅりあ”40歳。

僕の母であり、元・女子プロレスラー。


結婚を機に女子プロを引退したが、その力強さは今も健在で、趣味は筋トレと生け花。

筋トレはわかるけど、生け花って・・・。


昔は粗暴だった母を見かねて、祖母が生け花に通わせたのが始まりだったらしい。

その甲斐あって、少しは女性らしさを身につけたものの、湧き出る闘争心を押さえる事が出来ず、女子プロレス界の門を叩いたとか。


外見はその辺の主婦と大差はないが、握力80ある。


小学生の頃、悪戯して部屋のガラスを割ってしまった時、母は手元にあったリンゴを左手で握りつぶしたのを僕は一生忘れないし、軽いトラウマだ。


あれから一度も母に逆らった事はない。


「ちょっと、三十郎!聞いてるの!?」

軽~く2発ほど往復ビンタされて我に返る。


「ハッ!あ、ただいま母さん。」


ビンタされるのはいつもの事で馴れている。


「はいはいおかえり。で、その後ろの美人は誰なのか聞いてるの。勿体ぶらずに紹介しなさい!」


はぁ~。バレたらしょうがない。

ここは大人しく紹介した方が身の為だ。


「あ、こちらは市杵島 姫命さん。僕は姫と呼んでいる。で、こっちが僕の母。あ、趣味は鉄拳制裁だから発言には充分に気をつけてね!」


取り敢えず紹介を済ます。


「あら姫ちゃんて言うのね!可愛いわね!趣味についてはこの子の嘘だから気にしないでね~。おぃ三十郎!お前は後で裏庭集合な?」


そう言って軽~くアイアンクローをし、僕をそのまま持ち上げる。


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!嘘です!調子に乗ってました!許してください!」


半べそで許しを請うと、地面にゆっくり降ろしてくれた。

相変わらず恐ろしい人だ。


以後気をつける事にしよう。


「あ、初めまして。市杵島 姫命と申します。三十郎さんにはお世話になっております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」


今日一日姫を見ていたが、こんなに礼儀正しい態度は初めてだ。

本来はもっと太々しいはずだが・・・。


「あら、最近の若い子にしてはとても礼儀正しいのね!母さん姫ちゃんの事気に入っちゃったわ。ま、立ち話もなんだし、取り敢えず上がって上がって!」


母にそう促され、居間に通される。

居間には新聞を読む父がいた。


「おぉ、三十郎帰ったか。ところで隣の美少女は誰だい?父さんに是非とも紹介してくれ!」


でたよ!

この人の美人好きにも本当に困ったもんだ。

いい歳こいて芸能人やアイドルが大好きだからな~。


「彼女は市杵島 姫命さん。で、こっちが僕の父。職業はお恥ずかしながら探偵。」


母と結婚する前は刑事だったらしいけど、ある意味仕事がブラック過ぎって事で、退職して探偵事務所を立ち上げたって話を聞いた事がある。


それなりの人脈と、人柄でそれなりにこの辺じゃ顔が効くらしい。

ま、父についてはいつか機会があれば話そうと思うが、今はここまで。


「姫ちゃんか~。可愛い名前だね。美人だし!私は三十郎の父で、葛城 十三”かつらぎじゅうぞうと申します。決して葛城サーティーンではないので、そこんとこ夜呂死苦!OK? Σ(゜□゜;)!誰だ!?俺の後ろに立つな!」


母が仁王立ちしていた。

さっきの僕と同じような事になっているが、気にしない。


「と、まぁ~こんな家族なんでいきなり紹介しずらかった訳。変な両親だけど、悪い人達じゃないから安心してね。」


ポカーンとしている姫にそう話す。


「二人を見て、何となく三十郎が分かった気がする。アンタも私の社でお願い事してる時、凄かったわよ!でもご両親に会って納得。少しビックリしたけど、明るくていい家族ね!」


そう言って微笑む彼女の笑顔がとても可愛くて、僕の胸をキュッと締め付けた。

正直、紹介しずらい両親ではあるものの、こうして褒めてもらえるととても嬉しい。


他人の目にはどう映るか分からない。

変わってると思われるかもしれないし、人によっては近寄りがたく感じる人もいるかもしれない。


小学生の頃は色々悩んだ事もあったけど、今は全然気にしていない。


何だかんだ言っても僕の両親だし、今では尊敬すらしている。


そんな家族を理解してくれる彼女は、やっぱり神様なんだと思った。

普通の子なら少し引いているかもしれないしね。


彼女から貰ったリングを通してもわかっる通り、その心には偽りの感情が一つもなかった。


最初の印象とは裏腹に、僕は彼女の事が好きになっていた事に気が付いた。



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