勃発
兎に角ひたすらに謝るしかなかった。
「大変失礼な事を申し上げてすみませんでした!!」
女性でありながら三韓征伐とかさ。
そんな話を聞かされちゃったら、筋肉ムキムキ的な女性を想像しちゃうでしょ!?
でも実際お会いしてみると全然そんな事はなくって、とても美しい大人の女性と言った感じでビックリ。
「まぁまぁ、仕方ないですよ。三韓征伐の話とか聞かされちゃったら、筋肉ムキムキなゴリラ女って思われても仕方ないですって。っという事で三十郎さん、顔を上げてください。昔から言われている事ですし、今更気にしませんよ。」
そう言って優しく微笑む神功皇后。
「よかったな三十郎、神功皇后が想像通りの人じゃなくて。」
クスクスと笑う姫。
僕の反応を見て楽しんでやがる。
「神功皇后さま、大変申し訳ありませんでした。僕は姫の話から、勝手に筋肉ムキムキな女性を想像しておりましたが、お会いしてみて驚きました。神功皇后さまがこんなにも美しい女性だったとは。本当に失礼いたしました。」
僕は心の底から改めてお詫びをし、神功皇后さまに顔を上げた。
「あらあら、美しい女性とか!正直なんだから三十郎さん!もぉ~お姉さん嬉しくなっちゃう!姫ちゃん、悪いんだけどちょっと10年程鶴岡八幡宮見ててもらっていい?三十郎さんと逢引きしてくるから!さ、三十郎さん行きましょう!おばさん、三十郎さんのお願い事なんでも叶えてあげちゃうからね!」
いやいや、なんでも叶えちゃまずいでしょ!?
某猫型ロボットでさえ何でもは叶えてくれないって言うのに。
えらくご機嫌になる神功皇后様。
それに引き換え、急に機嫌が悪くなる弁財天様。
「ちょ、何言ってるんですか神功皇后!三十郎が神功皇后と一緒に行く訳ないじゃないですか!?バカですか!?三十郎は、江の島神社までわざわざ私の事をナンパしに来た男ですよ!見た目はアレですが、女性を見る目は確か。そんな三十郎が他の女性になびく訳ないです!ね、三十郎!あなたも見た目的にも年の近い私みたいな若くて美人の方がいいわよね!?」
酷い言われようだ。
見た目がアレとか!
アレってなんだ?不細工って事か!?
そんなの自分でもわかってるってーの。
イケメンだったらわざわざ江の島神社までお参りに行くかよ!
自分でわかっている事でも、人に指摘されると腹立つな。
そんな事を考えていると、何かがひび割れたような音がした。
”ピシッ!!”
何の音だ!
音のした方を見ると、拳を握り締めてワナワナする神功天皇様がいる。
「あら~姫ちゃん。それは間接的に私の事をおばさんと言いたいのかしら?事と次第によっては、私久し振りに大暴れしちゃうけど?」
「ヒィーッ!!」
思わず叫んでしまった。
ただひたすらに怖かった。
冷静を装っているようで、神功皇后の額には青筋が浮いている。
「えー!?だって皇后じゃないですか!自分でもお姉さんさん嬉しいとか言ってましたけど、正直歳考えて欲しいです。人妻ですよね?それに私、三十郎にいきなりナンパされてるんですよ?それも熱烈に!神功皇后はナンパされてないですよね?いい歳の大人なんですから、その辺は、ホラ、察しましょうよ。ね?三十郎からもいってあげなさい。僕は年増に興味ありませんて!」
煽る姫。
ピシッ、ピシッ、ピシッ!!
「コラ小娘!いい加減にしなさいよ!美人て言うのはね、私みたいに煌びやかで華のある女性を言うのよ。それと、落ち着きも包容力も兼ね備えてこその美人なの。わかる?あなたみたいな跳ねっかえりのお子様ランチが美人な訳ないでしょ!?何言っちゃってるのこのじゃじゃ馬娘は!?知ってる?あなたが納めている社、恋人同士でお参りに行くと別れちゃうんですってね?何でも仲よさそうにお参りに来たカップルに、あなたが嫉妬して別れさせちゃうって噂よ。コレだからお子様は困るのよね~。人の幸せを第一に考えなければいけない神様がよ、嫉妬に駆られるとか。本当、ちゃんちゃら可笑しいわね!ほら、三十郎さんも言ってやりなさい!ガキは湘南海岸で砂山でも作ってろって!」
もの凄い険悪な雰囲気。
それに巻き込まれる僕。
あぁ、なんで僕はこんな険悪な雰囲気の中にいるんだろう?
僕はただ純粋に彼女が欲しいだけなんです。
二人のやり取りをただ黙って見ているだけの僕。
兎に角ここは一番冷静な僕が間に入らなければ。下手したら湘南が大変な事になるかもしれないし。
「まぁまぁ、お二人とも少し落ち着いてください。僕から言わせれば二人とも甲乙つけ難い位に、大変お美しいですよ。姫には姫の美しさが。神功皇后様には神功皇后様の美しさがあります。そんな淑女なお二人がですよ、僕みたいな人間風情じゃ理解できない美について争ったとなったら、神様の沽券に拘るんじゃないでしょうか?」
そう諭すと、二人とも少し落ち着いてくれたようだった。
なんだかな~。
たかが18歳の僕がだ、年上の女性を諭す日が来るとは。しかも神様をだ。
こんな事夢にも思わなかったよ。
「そうね。私も少し大人気なかったわ。ごめんなさいね。」
そう言って微笑む神功皇后様。
これにて一件落着かと思われたが、姫の余計な一言で言い争いが再び勃発。
「でも私と三十郎は契りを交わしてますよ?という事は、三十郎はやっぱり私の方がいいって事ですよね?ほら三十郎!ボサッとしてないで、指輪見せつけてやりなさい!」
そう促されて、僕は姫から渡された指輪を神功皇后様に見せた。
またピシピシと空気が音を立てる。
頼むからもう止めてくれ!
ほらみろ!神功皇后さまの額にまた青筋が。
「三十郎さん、あなたはこの小娘と契りを交わしたの?」
神功皇后さまの質問に首を傾げる僕。
「う~ん、それを決して失くすな。それが二人の絆だからとは言われましたがね、契りを交わした覚えはないです。そもそも契りってなんですか?」
バツの悪そうな顔をする姫。
「三十郎、アナタは女に恥をかかせるの?それは私と三十郎の絆だと言ったでしょ?私はね、あまり重たい事言いたくないから敢えて言わなかったけどね、言うなれば、それを受け取ったら男女の契りを結んだも同然て事!それ位言わなくても察しなさいよ!」
女心と秋の空。
無茶言うな~。そんな事わかる訳ないじゃないか。
「あら~、契りなんて交わしてないじゃない。嘘ついちゃ駄目よ。」
顔を真っ赤にして怒る姫。
「兎に角!私をナンパしてあそこから連れ出したのは三十郎なの!幸せにするって言ったし!だから三十郎はその責任を取らなきゃいけないの!判った!?」
そりゃ~あの時必死だったからそんなこと言っちゃったけどさ。
「なによ!なんか文句でもあるの!?呪うわよ!」
ひぃーっ!
神様がそんな事言っちゃ駄目だって!怖いから!
「全然文句なんてないよ。むしろこんなに美人と恋仲になれるなんて、嬉しい限りだよ。僕の責任でもある訳だし。だから呪わないでね。」
その言葉を聞くと、ようやく姫も落ち着きを取り戻す。
「ちょっと!何恥ずかしい言ってるの!言っておくけどね、恋人とかって意味じゃないからね。あくまで友達って意味だから、その辺勘違いしないでよ!」
これが噂に聞くツンデレってやつなのか!?
ちょっと嬉しい僕。
そんな僕に話しかけてくる神功皇后様。
「三十郎さん、それならこれも持っていて。そっちの指輪はなくしてもいいけど、これは失くしちゃ駄目よ。」
そう言うと、刀型のお守りを手渡された。
それを黙って受け取った僕であったが・・・。
気が付くと、何故か僕は神功皇后様とも契りを交わす事となったのだった。