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切なる願いに届きし想い  作者: 東京 澪音
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二人を繋ぐ絆

僕が買ってきたソフトクリーム片手にご機嫌な様子の弁財天様。


「弁財天様、どこ行くんですか?」


そう尋ねると、もの凄くご機嫌な笑顔で答える弁財天様。


「そうね~・・・どこへ行っか?実は私あの社から出たのって初めてなのよね。あんな馬鹿なお願い事も初めての事だったから、面白くってね。で、そんなおかしな願いをちょっと叶えてあげたくなっちゃってさ、フラ~っと出てきちゃったから、正直なにもかんがえてない。と、言うか三十郎が私をナンパしたんでしょ!こういう時は男がサラッとエスコートするもんだって、ananに載ってたわよ。それと、その弁財天様ってやめて。私には”市杵嶋 姫命”(いちきしま ひめ)って言う名前があるんだからそっちで呼んでよ。親しみを込めて姫って呼んでいいわ。」


凄いな。社から出た事ない割に、ananとか知ってる訳ね。


「あ、了解。じゃあ、姫。改めて自己紹介ね。僕は葛城かつらぎ 三十郎さんじゅうろう。歳は18歳で、高校三年生。もうすぐ夏休みだからね、それまでに彼女が欲しくって、こうしてわざわざ江の島神社までお参りに来た訳。ところでさ、社から抜け出ちゃってよかったの?姫が社にいなかったらみんなの願いを聞く人がいなくなっちゃうんじゃ・・・。」


僕は改めて彼女に自己紹介をすると、疑問に思った事を尋ねてみた。


「あぁ、大丈夫よ。妹の多岐都比売命たぎつひめに任せてきたから。あの子もね~そろそろ独り立ちしないとね。と、言うわけで、皆の願いの聞き役は問題ないから安心して!それよりも、これからよろしくね、三十郎!」


そう言ってウィンクをしてみせる姫。

なんだかね、神様って言うからさ、もっと古風で奥ゆかしいものを想像していたけど、全然違うのにビックリ。


まぁ、時代も時代だから、神様もそれに合わせて進化していってもおかしくないよね?

そんな事を考えていると、姫が急に思い立ったかのように僕に言う。


「あ、そうだ!三十郎にこれ渡しておくわ。」

そう言うと、僕にシルバーアクセサリーみたいなモノを指で弾いてよこす。


僕はそれをキャッチすると掌にのせてみる。


「指輪?どうしてこれを僕に?」


そう言うと、彼女は笑って答える。


「それを指に通したら、それが私と三十郎の絆となるの。いい?決して失くしちゃ駄目よ。それを失った時、私たちの絆も消えるわ。逆に言うと、それさえあれば私と三十郎の絆は永遠。それだけは忘れないでね。」


江の島神社と刻印されたそれを薬指に通すと、温かい気持ちに包まれた気がした。


「そう。それで私と三十郎は繋がったの。あなたの見たもの考えたものが私の中に入ってくる。その反対に、私の見たものや考えた事があなたにも判るでしょ?」


うーん。と唸ってみたものの、僕には彼女の見ているものや考えが判らない。


「目を閉じて。そして、私を想ってみて。そうすれば分かるはず。」


僕は彼女の言う通り目を閉じて彼女の事だけを想ってみる。

しばらく集中すると、白い靄みたいな中に映像が流れ込んでくる。あ、江の島の風景だ。今し方まで見ていた景色。


それから彼女の考えが頭の中に入り込んでくる。


「はぁ~お腹空いた。」


これ本当にいま姫が考えてる事なのか?

僕は彼女に確認をとる為尋ねてみる?


「姫、ファミレスでも行くか?腹減ったんだろ?」


そう言ってみると、ニコッと笑う彼女。


「おぉ!!正解だよ!今お腹空いたって言う思念を送ったところだったんだけど、しっかりと伝わったみたいだね。良かった!で、ファミレスに連れてってくれるんでしょ!?早く行こうよ!」


白い肌の細い腕が、僕の右腕に絡んでくる。

こんな美人と腕を組むなんて人生初めての事だから、もの凄く緊張したけど、これはこれでいいものだね。


彼女と休日を楽しんでいるって感じで、ドキドキする。


僕らは江の島弁天橋を二人で渡ると、134号線沿いを適当に歩き、某ファミリーレストランへ入る。

高校生の僕でも手が出る金額設定のお店を選んだから大丈夫だと思う。


店内に入ると、窓際の景色が素敵な席に案内される。

席に座ると彼女にメニューを渡す。


「はい、好きなの頼んでよ。」


そう言うと瞳を輝かせメニューに食い入る姫。


「おぉ!西洋の食べ物か!知識では知っていたけど、食べるのは初めてだ!なんせあそこの神社に出されるお供えは全て和のものが多かったから、こういう物に憧れていたのよ!ソフトクリームの初めて食べたけど美味しかったし!ところでおススメはどれかな?」


どれもこれも彼女にしてみたら珍しいんだろうな。

僕は彼女に、ハンバーグとエビフライ、ステーキがのったミックスプレートのセットを進めてあげ、デザートにはチーズケーキを注文してあげた。


注文を終えると、ドリンクバーを二人で取りに行く。

ドリンクバーの使い方を説明し、氷をれたコップにメロンソーダを注ぐ彼女。

僕はスープを二人分用意すると、席に戻る。


緑色の液体に興味津々な彼女。

僕はその液体の中にストローをさしてあげる。


「ほら、飲んでみて!」

僕のすすめに恐る恐るストローに口づけメロンソーダを飲み込む。


”ゴホッゴホッ!”

少し咽たらしい。


苦しそうに涙目になる姫。


「なんだこれは!?こう、しゅわしゅわ~ってしていて驚いたわ!人間はこんな身体に悪そうなもんを好んで飲むのか!?」


そんな新鮮な姿に笑いが出る僕。


「はははっ!初めて炭酸飲料を飲むとそうなる人は多いね。でもそれを乗り越えると、炭酸飲料がたまらなく好きになるよ!一気に飲まずに、ゆっくり飲んでごらん。その美味しさに気が付くはずだから。」


ほんとう~?

そんな目で僕を見る彼女であったが、言われた通りにゆっくり飲んでみる。


「あ、本当だ、おいしい!このしゅわしゅわが喉を通る時ヤバいな。見た目は奇抜な緑色だけど、何とも言えない甘さがまたいい!あぁ~癖になりそう。」


そう言ってチュウチュウメロンソーダを飲む彼女。


「あ、それおかわり無料だから、何杯飲んでもOKだよ。でもこれからご飯が来るから、程々にね。」


そう言うと益々目を輝かす。


暫くすると僕たちの目の前に料理が運ばれてくる。

その光景をウットリとした目でみる彼女。


こうして見ていると、弁財天様とはとても思えない。

でも絵にはなってるよな。


「三十郎!食べてもいい!?」

キラッキラした瞳で僕に問いかける姫。


「ああOKだよ。食べ方わかる?」

そう尋ねると、問題ないと頷く彼女。


あ、本当だ!右手にナイフ、左手にホークをしっかり持ってる。

どうやら知識はあるらしいけど、なんだか凄い神様だよね。食べた事ないのに、知識はある。


ついでに言うと和の神が洋食をそつなく食べるとかさ、不思議な光景だよね。


そんな微笑ましい光景に、僕はいつの間にか魅入ってしまうのだった。


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