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切なる願いに届きし想い  作者: 東京 澪音
16/21

家事について

何だかんだ色々あったけど、なんとか午前中に買い物を済ませて帰ってくることが出来た。

買ってきたものや、頂いたお魚なんかを冷蔵庫にしまい、僕は戸棚からパスタを取り出し茹で始める。


沸騰した鍋に一つまみの塩と4人分のパスタを入れ、しばらく待つ。

その間にミートソースも湯煎しておく。


本当はカルボナーラを・・・とか考えたけど、結構手間なので簡単に出来るミートソースにした。

テーブルに人数分のお皿を出し、茹で上がったパスタにひとかけらのバターを絡めたら均等に盛っていく。


こんなもんで機嫌が直るとは思えないけど、気持ち姫のを多くしてあげる。


ホークやスプーンを用意したら、居間でテレビを見ている父さんと母さんを呼び、階段下から姫にも声をかけダイニングにみんなが集まる。


「お昼はパスタにしてみました。さ、食べよう!いただきます!」

父も母も姫も、それに倣い手を合わせる。


「あ、姫のだけ少し多めにしておいたからね。」

小声でそういうと、ご機嫌が少し良くなった。


「三十郎、そういう細かな気遣いが女性は嬉しいものなんだよ。あ、この人もしかして私に気があるのかも!?とか思っちゃうわけ!で、いつの間にか心の中でその人の存在が大きくなっていって、恋に落ちちゃったりする事もあったりなかったり。」


どっちなんだよ!?


「と、まぁそういう小さな気遣いが出来ない若者が、昨今この国には多く見受けられる。気の回らない男にならない為にも、私のご飯には極力気づかっていって欲しい!」


と、偉そうな事を言いながらあっという間にパスタを平らげた。


そのありがたい女性の意見を聞きながら美味しくお昼を食べ終わると、僕は洗い物を済ませついでにお風呂掃除も終わらせる。


そのあとはベランダで洗濯物を取り込み、今の隣の座敷で洗濯物を一つ一つ畳んでいく。

午前中に買ったチーズケーキを食べながら、その横で僕の行動を静かに見守る。


「三十郎、お前は男のクセに意外と色々出来るんだな。少し驚いたよ!」

チーズケーキ食べながら言われてもね~・・・。


「いやいや、これ位普通だろ?別に難しい事はなに一つしてないよ。お昼だってパスタ茹でて盛り付けただけだし、洗濯だって自動でやってくれる。干したり取り込んだり、畳んだりそれをタンスにしまったりと、そりゃ~少しは手間が掛かるかもしれないけど、それくらいどうって事ない事だよ。誰にだって出来る。」


そう言うと姫はバツが悪そうな顔で答える。


「まぁ、男の三十郎がそう言うのだからそうなのかもしれないけど、正直私には難しいと思う。なんせこの時代の事には疎いうえに、料理なんて今までしたこともない。考えただけでも恐ろしくなる。」


確かに一理ある。

が、そんなに難しい事じゃない。


「変な恋愛知識はあるくせに、家事全般には興味が湧かなかったんだね。料理云々はさて置き、正直な話どれもこれも全然難しくないんだよ。一回覚えれば後は簡単!誰にだって初めての瞬間はあるし、緊張もするだろうさ。でも洗い物を洗濯機に入れてボタンを押す事位、子供にも出来る事なんだよ。姫は神様だから仕方ないとしてもね、僕に言わせれば出来ないと言い張る人って言うのは、単にめんどくさがり屋のいい訳なんだと思うよ。それに例え家事が苦手でもさ、一生懸命やる姿に男の子はグッときちゃった里するわけ!いいよな~家事をする女性の姿って!って事で、姫畳み終わったタオル類をお風呂場にしまってきてくれるかな?」


若干顔色が曇ったものの、僕の言い放った言葉の後にはどうにも反抗出来なかったみたいで、渋々だが風呂場にタオル類を片づけてきてくれた。


「まぁ~アレだ、働かざる者食うべからず、だ。」

そう呟くとその後も黙って洗濯物を畳む作業を手伝ってくれた。


「なんだかこうしているとまるで新婚夫婦みたいで、少し照れるね。」

そう言うと顔を赤くしてそっぽを向く姫。


「彼女も出来た事がない男が、なに上級者発言してるのよ!」


ちがいない(笑)

その後少し気まずくってあまり会話がなかったけれど、黙々とやったおかげで意外と早く洗濯物が片付いた。


「たすかったよ姫。おかげで随分と早く終わったよ!いつもは一人で結構かかるんだけどさ・・・。ありがとな!」


僕の言葉に照れたのか、更に顔を赤くする。


「神様とは言え居候の身だからね。これ位いつでも手伝うわよ。そのうち洗濯も料理も出来る様になってみせるし!」


そう言うと姫は階段を登り自室に戻って行った。


色々な事が新鮮で、その言葉に僕も少し照れたりなんかした。

いいなこういうの。


「ちょっと見てたけど、色々とこそばゆいわ。でも青春よね~。」


てっきりテレビに夢中だと思っていた母さんが、急に後ろから声をかけてくる。

こういう場面に遭遇した経験がないのでどう対処していいか判らなかったが、恥ずかしながらも母に答える。


「これが青春てやつなのかな!?何だか先日までと違って、少し周りが薔薇色に見えるような気がするよ!ところで母さんには青春時代ってあったの?」


一瞬にして母の顔が凍り付く。


「あ~?なんだって!?」

言葉の選択を間違った僕はその後、樹里亜に四の字固めを喰らい泣く羽目になる。


これが葛城家の日常って言えば日常なんだけど・・・。


高校生活最後の夏、僕の非・日常は、少しづつ素敵な方向に流れ出した様な気がした。

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