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切なる願いに届きし想い  作者: 東京 澪音
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僕の切なる願い事

必死だった。


「彼女が出来ますように!どうかお願いします!!この葛城 三十郎、18年間彼女が出来た事がございません!今年の夏、高校生活最後の夏休みこそ、素敵で胸を焦がすような熱い恋をしたいと思います!何卒、何卒、この哀れな小羊、葛城 三十郎に素敵な出会いをお与えください!神様、仏さま、あー!もうぶっちゃけ誰でもいいっす!っか、弁天様、俺の彼女になってください!!マジ、幸せにしますから!!」


賽銭箱に15円放り投げて、とんでもなく高望みな願い事を大声でする僕。

周りはドン引き。


でもそんな事に構っちゃいれない、のっぴきならない切なる願い。


葛城 三十郎。18歳高校三年生。


必死だった。

兎に角必死だった。


高校生活最後の夏位、甘酸っぱい思い出が欲しいじゃないか!?

皆だってそうだろう?


社会人とかになった時さ、恋バナとかになって、僕だけ何も語る事がなかったら、それはそれで悲しいじゃん。だから僕だって人並みに恋がしたい訳!


ま、確かに15円でするお願い事じゃないよな。

でもほら、十分にご縁がありますように!って言うじゃない。


僕もそれにあやかった訳。

ま、本当はお金がないだけなんだけどね。


7月初旬のキツイ日差しは、短髪の僕には少しきつすぎる。


気が付くと、軽い日射病になり倒れ込み、賽銭箱の角で頭を打って気が遠くなる。

何とも笑える話じゃないか。


誰かが運んでくれたのだろうか?


気が付くと、近くの木陰で横たわっていた。


「おーぃ、三十郎とやら。大丈夫か?」

僕の隣に、それはそれは可愛い女の子が立っていた。


うーん、可愛いって言うか、美人て言うか、綺麗って言うのかな?

兎に角、それらを足して2で割った感じ。


そんな美人が僕に声をかけてくれるなんて、これは夢だろうか?

いや、さっき賽銭箱の角で頭ぶったからな~。ひょっとして僕の妄想かもしれない。


僕は身体の全てが動く事を確認すると、その美人で可愛い綺麗目の女の子に触れてみる。


・・・。


Oh!ヤワラカイデース!


「三十郎、それはちと失礼だよ。神である私だから許されるものの。デリカシーが無さすぎだよ。そんなんだから彼女が出来ないんだよ。」


そう言うと、僕は彼女から顎に一撃パンチを貰った。


「いいもん持ってんじゃねーか!コイツは世界を狙えるレベルだぜ。」

とかなんとか言ってみたが、思いのほか強烈なパンチでビックリする。


「っか、誰!?駄目だよ意識が朦朧としている人に対してトドメ刺しちゃ!」

顎を左手で擦りながら恨めしそうに彼女を見ると、クスクスと笑いだす。


うーん、やっぱさ、美人て言うのはさ、何をやっても美人なんだね。


「失礼だな三十郎!自分が私を呼び出しただろう?弁天様彼女になってください!って。私もね、結構長い事この江の島神社で神様やってるけどさ、アンタみたいにバカな頼み事した人間みたの初めてよ。大抵の人間はね、誰々と恋人になれますようにとか、そんなんばっかなんだけどさ、神様に向かって付き合ってくださいって、普通の人間は言わないよね?賽銭の金額も少ないし、最初はシカト決め込もうかと思ったけど、あんた日射病で急に倒れるじゃない!そのままにしておくのも周りに迷惑かと思って、こうして木陰に運んで助けたって訳。感謝しろよ!で、感謝ついでに、ダッシュでソフトクリーム買って来い!」


もの凄い笑顔で凄い事言ってるよこの子!

あまりにも美人だったんで、ウッカリ頷いちゃうとこだったけどさ。


美人て怖いね~。


「いやあのね、確かに僕は今し方ここで願い事をしたよ。でもさ、それは弁天様にであって、君にじゃない。そりゃ~君は確かに美人だし、可愛いと思うけどさ、いくら何でも私が弁天様っておかしな話でしょ!?君こそ弁天様に失礼だよ。さ、謝りなさい。なんなら僕も一緒に謝ってあげようじゃないか!まぁ、そんな妄言言っちゃうのも仕方ないかもね。だって今日は暑いからね~、少しばかり頭の中が茹っちゃったのかな?」


ひょっとしたら少しばかり危ない子なのかもしれない。

ここは深く関わらず、軽くあしらっておいた方が得策かも。


しかし、残念だな~。よくわからない妄言さえ吐かなければかなりの美人なのに。

下手なアイドルなんかより全然美人だぞ。


そんな事を考えてると、ゴゴゴゴ!っと言う音が聞こえて来た。

その音の方向に顔を向けると、彼女の背中に暗黒色のどす黒いオーラが見える。


「自分、誰にそんな口きいているかわかってる?もう一度言うけど、私はアンタら人間が崇める神、弁財天こと、市杵嶋 姫命”いちきしま ひめ”だ!そんなに信用出来ないなら、信じさせてやろうじゃないの!」


そう言うと彼女は目を瞑り、両手をその前で合わす。


「ふぁいやー。」

そう呟くと、彼女の手から火が吹いて、短髪の僕の頭をチリッチリに燃やす。


「熱ぃー!!」


僕は近くに会った銭洗白竜王の池、白竜池に頭を突っ込んだ。


「何すんだよ!手から火なんか放って危ないだろ!?火傷したらどうすんの!?」


ん?っか、今彼女手から火を放ったよね?

僕と同じ年位の女の子が手から火を放つとかさ、あり得ないだろ?


それとも何かい?最近の女子高生の間じゃ、ヨガファイヤーが流行ってるとか!?


いや、ないないないない!


水面に映る自分の顔を見ると、短髪から、二グロに早変わり。

そんな姿に少しばかり悲しくなった僕は、ポロっとひとすじ涙した。


「三十郎、信じた?まだ信じられないならアンタの恥ずかしい過去の話でもしようか?小学校6年生の時、夜中にこっそりエッチな自販機でエッチな本を買おうとして、通りかかった警察官に補導された事とか。あ、その後家に送られ両親にこっぴどく怒られたよね?しかもそれが母親の井戸端会議の話題に上がっちゃってさ、10日もしないうちに同学年の女子に知れ渡ったって・・・。馬鹿だね~。」


なんでそんな事を知ってる!?

っか、それは僕の忘れたい恥ずかしい過去!


おかげでその後女子からは総スカン、男子からはエロの勇者として崇められた。


「お、おい!適当な事言ってんじゃないぞ!それにそんな事、最近の小学生じゃ全然珍しい事なんかじゃないんだからね!」


涙目で訴える僕。


「ほうほう。じゃ、中学生の時の恥ずかしい体験談を話してあげようか?そうすれば私が弁財天だって信じるでしょ?」


これ以上何を話そうって言うんだ!?

僕は心臓が口から出そうなくらいドキドキしていた。


「アンタ中学生の時、父親のビデオレンタル会員証をこっそり持ち出し、近所のビデオショップでAV借りようとして、女性店員に注意されたでしょ?しかもバレたのが友達のお姉さんで、その話は瞬く間に知れ渡り、更に女子から総スカン喰らったでしょ!でも男子からの人気は花丸急上昇!勇者というあだ名から、大王様へ一気に出世!ホント、悲しい位馬鹿ね、アンタ。」


涙した。

忘れたい過去をこうも的確にエグられると、ぐうの音も出ない。

しかも美人に言われると更に堪える。


「ごめんなさい!すみませんでした!私が悪かったです!あなたが弁財天様って信じます!だからそれ以上はもうやめてあげてください!僕が立ち直れなくなっちゃうよ!」


そう言うと二グロになった頭をさげて彼女に泣きついた。


「わかればいいのよ。わかれば!」


何とも最悪な出会いとなったけど、僕と彼女の物語は、こうして幕を開けたんだ。



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