遠くの風<定めの歌と花>#0 託されたもの
これはオリジナル棒人間の物語なので、人間が登場しません。
それでも良ければ、ご覧ください。原作はうごくメモ帳で投稿されたマンガです。
現在うごくメモ帳3Dで投稿されている、トークの風とは
ストーリが違うので、全く別の物語としてお楽しみください。
紹介
オリジナル棒人間、それはオリ棒作者の心に生まれた代弁者。
美しい容姿を愛でるのも、人形遊びの様に他作者のオリ棒と触れ合わせるも作者の自由。
さて、この世界ではオリ棒が感情を持って生活を営んでいる様だ。
まるで、紙に描かれたまま呼吸をし始めたかのように!
プロローグ
森に小鳥の鳴き声が響く。遠くから足音がそっと近づいてくる。
そして、藪から顔を出した。鳥の合唱が突然絶える。
周囲を警戒しながら一歩一歩と確かな歩みを谷へと進める、足音の主は白い狼のような生物だった。
すっと通った鼻筋に、青と紫の羽の鳥をくわえている。
白くとがった耳、双房の銀に艶めく尻尾は、高貴の証。
部族は多々あるものの、この種の毛並みは世界で一番だ。
この種はフォーレンと呼ばれていた。
この高貴な種が、野山を駆けいつもより少し多く獲物を狩ろうとするのには、理由があった。
枯れた川を越え、険しい崖を滑り降り、けもの道を駆け、棒人間が塩の採掘の為に掘った洞穴へと入っていく。
ここはあらゆる棒人間の匂いで充満している。
村を追われて、避難民となった村人たちは、人を助ける役目を担ったフォーレン達には、お荷物の様なものだった。
邪魔されるのは気に食わないというように、足早に、最奥部のフォーレンの族長の部屋に入る。
族長に会釈し、鼻先に青い鳥を置く。
族長の温かい目が、獲物をそっと置く、若いフォーレンを見つめた。
「私がこの鳥を食べ終わったらまた来なさい」
尻尾を一振りし、立ち去る若いフォーレン。
族長はその背を眺め、体を起こし、「シルバ……」とその名を、息子の名を呼ぶように呟いた。
側仕えが退室するとともに、シルバという若いフォーレンは下座へつく。
上座にいる年老いたフォーレンが族長、ハーゼン王だ。威厳を感じさせる、ゆったりとした語り方でこういった。
「そう長くは喋らない、しかしお前には、かしこまったままなのは窮屈だろう、楽な体勢で良い」
シルバは尻尾を振りつつ、腰を上げて再び座りなおした。
「お前が、気付いていないとは思わない。私の命は残り少ない。私が死ぬその前に、お前に試練を与えたい。私の友は先の炎の襲撃に没し、骨の行方も分からない。友が私に託したものは、世界を救うための一つのシナリオに過ぎないが、我が部族、種さえも揺るがせる、大きな役割である。ついては今後、お前にはすべての種をまとめる努力をしてもらう……お前を信頼していないわけではない、信じているからこそ、いま、命賭魔法を行使する。
……
……今、語ったすべては、太陽の契約の下で、来る日までの盟約とする、来る日によみがえる記憶の為に……<forget>フォアゲット。」
シルバは強い眠気に襲われた。
若いフォーレン、シルバは今後重要な登場人物となるでしょう。