部活動見学
フェンシング・新体操・フィギュアスケート・乗馬・バレエ・演劇・剣道部・
柔道・バレーボール・チアリーディング・バスケットボール・被服・家庭科・和装・テニス・バトミントン等の部活が多く存在する星羅魔法女学院。
「三年生なんだし、部活なんて入らないからいいってば」
「せっかく星羅に転入したんですから、部活動見学しても損はありませんよ」
放課後になって、僕は帰り支度をしている際に桜子から部活動見学しようと
誘われた。嫌だと言ったにも関わらず彼女は僕の腕をがっしりと掴んで
無理やり連行して行ったのだ。
「そういえば桜子って、部活とか入ってなかったの?」
「私ですか?中等部では生徒会に入っていたので部活には入っていません
でした」
僕はそれを聞いて足を止めた。それに続いて桜子も足を止めて「どうしたん
ですか?」と僕の顔を覗き込む。
「生徒会って会長の方じゃないよね?」
「ええ、違いますよ?一年の頃に学級委員をしていまして、それをきっか
けに生徒会の書記をしないかと誘われて、一年間のつもりが三年間も続くこと
になってしまいました」
立候補じゃなくて勧誘制なのか?
まぁ、最初は先生の勧めで立候補したとかよく演説の際に聞くしそれも
間違いではないと思うけど。
「高校からはどうなの?」
「高等部に入ってからはとくに何もしてませんね。また生徒会の仕事をしない
かと誘われましたが、さすがにお断りさせていただきました」
「まぁ。生徒会って大変そうだしね」
入ったことはないけど、忙しいし責任重大だということは僕にも分かりきっ
ていた。すると今度は桜子から質問がきた。
「そういう真さんは中学の頃、部活動には入っていたのですか?」
「僕は陸上部だったよ」
「えっ、陸上部だったんですか!?」
桜子は陸上部と聞いて驚きのあまりに声を上げた。
ちなみに沼口も僕と同じく陸上部に所属していた。
「真さん、運動部だったんですか?てっきり私は文化部か、もしくは無所属か
と思っていました!」
「進路とかで有利になるって一年の時に言われたから、仕方なく入っただけ
だよ。ちょうどその日、沼口に陸上部の見学に誘われたし…流れに身を任せて
たら、いつの間にか入部することになっちゃったってわけ」
「そうだったんですね。すごいです、真さん」と桜子が目を輝かせて僕を
見つめてくる。だが、彼女が思っているほどそんなにすごいことでもない。
運動部だから朝練とか当然あるし、放課後も部活があって毎日毎日走る日々。
まぁ、そのおかげで体力がついて一年の体芸祭の時、工藤さんに良いところ
見せられたから、陸上入って良かったかなとは思ったけど。
「でも、星羅には陸上はありませんので残念です」
「例えあったとしても、僕は入らないからね?」
「えぇーどうしてですか?私、真さんが陸上している姿見てみたいです!」
「嫌なものは嫌なの。っていうかなんで陸上部ないの?」
僕は入らないとは言ったものの、どうして陸上部がないのか気になったので
桜子に聞いてみる。すると…
「実は随分、昔に陸上部は存在していたらしいんですが…
フィギュアスケートが当時圧倒的人気で、それで陸上部が使っている場所
に、スケート場を造ったと…」
僕は聞かなくてもいいことを聞いてしまったと後悔した。
要するに人気がなかった陸上を潰して、人気があったフィギュアスケートの
部活を作り、陸上部が使用していた土地にスケート場を設立したということ。
こんなに部活が多ければ、廃部になる部活動も一つや二つとあるだろう。
陸上部だけではなく、他にも廃部になって消えてしまった部活はあるかもしれ
ない。調べればいくらでも出てきそうだ…。
「そうだっ!真さん、陸上部じゃなくても運動部はたくさんありますから
そこへ見学に行ってみましょう!」
「えっ、ちょっと…」
どうやらどこかでスイッチが切り変わり、陸上部から運動部への見学に絞
られてしまったらしい。
「さぁ、真さん。まず行くのは乗馬部ですよ」
「あぁーもう、分かったからそんなに引っ張らないで!」
僕は桜子に腕を引っ張られて、そのまま乗馬部がある場所へと連れていかれ
たのであった。