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氷魔法師、氷浦真の日常  作者:
まさかの女子高へ?
13/46

お嬢様というよりヤンキー


 その日の昼休み、僕と桜子は食堂では落ち着かないということで

 中庭へと移動し昼食をとっていた。


 食堂とは言ったものの、実際に例えるならあれは食堂というよりどこかの

 高層ビルに入ってある高級レストランのようでとてもじゃないがあそこに入る

 勇気が僕にはなかったため、桜子にお願いして注文してもらい持ってきてもら

 ったのである。

 

 ちなみに料金は無料らしい(学費の中に飲食代も含まれている)。


 「なんか、本当場違いな所だね」

 「真さん大丈夫ですか?顔色が悪いですけど」

 「大丈夫。環境に慣れてないだけだから…」

 

 金持ちオーラというものを浴びすぎて、僕が今まで経験して培ってきた

 常識が今にも崩れそうになってきている。だなんて彼女の前では言えなかった

 。金持ち…怖い。


 「真さん、やっぱり具合が悪いんじゃあ…保健室に行きましょう?」

 「いや、いいよ。大丈夫だから」

 「だめです!「いいって」

 

 「見つけたわよ!」

 するとタイミングよく現れた三好は、僕達を指さしてずかずかと近づいて

 来た。


 「教室にもいないし、食堂にもいないからどこへ消えたかと思ったら…

 なんでこんなところで地味に食事してるのよ!?」

 「三好さん、私達に何かご用ですか?」

 「貴方じゃないわ。私が用なのは、氷浦真よ!」


 それを聞いていた僕は、ふと思った。

 教室で見た時から誰かに似ているなと考えていたけど、その誰かっていうのが

 思い出せなくて。でも、それがやっとわかった。

 

 近くにいるのに無駄に元気な騒音のように響き渡る声…

 この人、南條なんじょうに似ている。

 でも、南條よりも背は高いしスタイル良いし、何より雰囲気が全く違ってい

 たからすぐには気づかなかったのだろう。それにしても…


 「お願いだからその無駄に大きい声を何とかしてもらえない?近くにいるん

 だからもう少し音量下げてよ」と彼女に伝えると、


 「なんですって!?私の声が耳障りだとでも言うの!?」と彼女の怒りに

 触れてしまったようで、現状をさらに悪化させてしまった。


 「誰もそんなこと言ってないでしょ?っていうか、周りの人に迷惑でしょ?

 見てみなよ、他の人達が驚いてるじゃない」と僕は説明する。


 何があったのだろう?と周りの女子生徒達は僕達を見てひそひそ話をしていた

 り、中には先生に連絡した方が良いんじゃあとも言う話も聞こえた。


 それを見てやっと理解したのだろう。三好はしょぼんとなって小さな声で

 「わっ、悪かったわね…大きな声で」と僕に謝罪した。

 「分かってくれたらそれでいいよ」


 でも、これだとまるで僕が彼女に悪いことした見たいだなとも思ったが

 反省しているようだし、まぁいっか。と僕は彼女をそれ以上責めないように

 した。


 「で、僕の悪い口をどうにかしたいためにわざわざ探しに来てくれたって

 わけ?」

 「そっ…っ!??…そうよ。私、まだ貴方のこと許してないんだからね」

 

 またしても大声が出てしまうかと思いきや、それに気づいてすぐに小声で

 僕に言う三好。


 「言い訳に聞こえるかもしれないけど、男性ってこういう口調の人って

 庶民では普通だから。普通に相手のことを「あんた」とか「お前」とかって

 使うのなんて当たり前なんだよ」

 「えっ、そんな…っ!?…そんなの貴方が言っているだけかもしれないじゃ

 ない。騙されないわよ」

 「こんなので嘘つくわけないでしょ?僕から見たら、あんたがお嬢様っていう

 方が嘘っぽいけど?」


 「なっ!?」

 「真さん、それはあまりにも言いすぎです」

 「っていうか、桜子も言ってあげなよ?僕が言うよりも桜子が言ってくれれば

 効果的じゃない。唯一の庶民高校を体験してきてるんだからさ」

 「そうですか?私は真さんの方が適任かと思うんですけど」

 「でも信用されてないと意味ないじゃないか」

 

 と、僕の一言でしばらくの間、思考が停止して動かなくなっていた三好が

 「はっ!?」と声を上げて現実から戻って来た。

 

 「この私が貴方と同類の庶民のようだとでも言いたいの!?そんなわけない

 じゃない!それに、貴方と同類だなんて例えこの身が滅びたとしても一生御免

 だわ」

 「いや、何も僕そこまで言ってないじゃん。っていうか、そうじゃなくてさ」

 「じゃあなんなのよ!?」

 

 思考停止したせいか、元の大声に戻ってしまっている。

 もういちいち突っ込むのもめんどくさいので、僕はほっておくことにして

 彼女に僕が思うことを伝える。


 「僕達から見ればお嬢様っていうのは、桜子みたいな人をイメージするんだよ

 。あんたはどちらかというとお嬢様っていうよりは…ヤンキーみたいな」

 「ヤンキーってなによ?」

 

 ヤンキーを知らないのか。

 こいつも知らないということは桜子も当然知らないわけで、説明しなければ

 ならないことになってしまう。あぁ…めんどくさい。

 だけど説明しないわけにもいかないので僕は彼女達に説明する。


 「ようするに、思春期になって親に反抗するようになった10代が不良に

 なって…勉強さぼったり、夜中まで遊んで帰って来たり、耳や鼻に穴開けて

 ピアス何個もつけてたり…未成年なのに酒を飲んだりとかっていう」


 「はぁっ!?私そんなことしないわよっ!」

 「あくまで例えばの話だから、本気にしないでよ」

 三好が僕の学ランを両手で掴んで身体を揺さぶり始めたので、すぐさま

 誤解を解こうとするも彼女の怒りは止まなかった。


 「だいたいそんなことしたくてもできないのよっ!」

 「三好さん、落ち着いてください」と桜子が僕と三好を引き離した。

 

 「あぁ…助かった」

 あのままだと首絞められる勢いだったと、僕はほっとしていた。

 それにしても三好が言った「そんなことしたくてもできないの」という意味が

 よく分からなかった。


 「あっ、もうそろそろ教室に戻らないと」

 「あぁ…うん」

 「じゃあ、私も戻るわ」と三好は僕達より先に自分の教室へと戻って行った。

 

 結局、あの言葉の意味を僕は彼女から聞くことができなかった。


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