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それぞれの思考
ベンは「誰?」との問いに答えるべきか悩む。素直に答えてしまうのは少し癪だから。でも、答えないのも負けた気がする。
「誰かは後で言う。もし、俺の生い立ちを聞いてくれるならね」
言ってから気がついた。
ベンの生い立ちを知る物は、今はベン、ただ一人。他人に語ってきたこともなければ、打ち明けたこともない。
それが寂しくて、オリビアに話そうとしている。
相変わらず無表情のオリビアに。
「ふん、興味はないわ。まあ、けど最後だし、付き合ってあげる」
「そう。ありがとう」
ベンはオリビアの気まぐれに振り回されて、オリビアのことがいまいち掴めていなかった。一方オリビアは、ベンのことを最後の男だなあ、としか思っていない。
人格、性格、為人。どうせ死ぬのだから、なんの意味もない。
そう思われているのに気付かず、ベンは話し出す。
「じゃあ、一つ俺の人生を聞いてもらおう」
ベンは深呼吸をした。
「八年前の事件から、始まったんだ」