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理由
空は晴れていた。
遠い昔にアダムとエヴァを祝福したように、二人の邂逅を見守っていた。
そんな空の下、ベンは手短に殺戮に至った理由を説明する。
「俺には妹がいたんだ。ずっと昔に。いや、8年くらい前だから、ずっと昔ってこともないか」
オリビアは無表情で聞いている。
「事件に巻き込まれてね。死に際に妹が言ったんだ。人をみんな殺してって。実行したのは、それを聞いてから5年はたっていたけど。まあ、そういうわけさ」
ベンは虚しい笑みを浮かべて、過去に思いを馳せる。過去を思い出すなんて、何年ぶりだろうか。忘れたことはなかったが、敢えて思い出そうとしたことはなかった。
「あたしはね…」
「あ、ああ!」
オリビアが話し出して、ベンは我に返った。
「人を殺すのが好きなの」
悪意のない、無邪気な笑み。
こんな澄んだ笑顔を、ベンは見たことがなかった。
「それはどういうことかな?」
「殺すことが大好きなの。むしろ愛しているわ」
こんな少女がそんなことを言うなんて、彼は信じられなかった。
サイコパスオリビア