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名乗り
少年は立ってピシッと背を正した。
「さっきは名乗りもせず、名前を聞いてごめん。俺はベンジャミン。君は?」
少女はまた無表情になった。やはり、名乗ってもらえないのだろうか。
「名乗る義務は、あたしにはないんだけど」
やっぱり。
「じゃあ、無理にとは言わないよ」
「オリビア。あたしはオリビア。ベンジャミン…だっけ?」
思わず顔がほころび、オリビアに言う。
「ベンって呼んでよ!」
それを聞いたオリビアはベンに微笑みかけ。
「そう。ベン。刀の話は終わったわね。次は何を語るの?」
オリビアの笑顔に、ベンは機嫌を良くした。とてもかわいい。幼い無邪気な笑顔。妹が生きていたら、こんな笑顔が毎日見られただろうか。などと考えもした。
「うーん、そうだね。次は、何故人類を滅ぼそうと思ったのか。それについて語ろう」
「それならあたしも話すわ。言い出しっぺのあなたから話してもらうけど」
ベンは息を深く吸った。さっき刺し殺した男の血の匂いがする。だけど、たった二人しか二酸化炭素を吐き出さない空気は清々しく感じた。