疲れた死神は最期に夢を見る
僕は願いを叶えるために、歩いた。
今日はよく歩くな。こんなに歩くのはこれで最後にしよう。なんて思いながら。
やがて二本足で背を向けた少年に出会った。
「やあ、物騒な物を持っているね」
僕はなるべく明るい声を出した。
「え?あれ?おかしいな。人はもういないはずなんだけど。でもサーモグラフィーに映るということは、そういうことなんだろう」
彼はぶつぶつと言った。僕は聞こえないふりをした。
「変わった形の剣だね」
「これかい?これは剣じゃなくて刀というんだ」
「ふーん。よく斬れる?」
「それはもう」彼は答えてから僕のことを訝って尋ねてきた。「君は何者だ?」
「僕は死神さ。そんな君は何者だい?全人類に作用するクレル光線から逃れたようだけど」
「俺?地獄行きの運の良い男かな」
「まあ、そうだろうね。ところでお願いがあるんだ」
「なんだい?」
「その刀で僕を殺してくれないか?」
僕はやっと願いを口にした。
「お安い御用。俺もそうしようと思ってた。何せ、人類滅亡が俺の夢なんでね。言われなくても殺すつもりだった」
「人類滅亡か。だからクレル光線で世界を焼いたんだね」
「まあね。なんで知ってるかは聞かない。知ったところで無意味だしね。だけどなんで自分から死のうなんていうんだ?」
「僕は居るだけで人間のみならず命あるものは殺してしまうみたいだから…」
「もう何も殺したくない。だから殺されよう」
少年が僕の言葉を遮った。やっぱりこの少年も…。
「ご名答」
僕は大げさに言ってから、相手に聞こえるか聞こえないかどうかの小さい声で言う。「死神には死神の気持ちが分かるんだね」
少年は首をかしげた。
「今、何か言った?『ご名答』の後」
「いや、大したことじゃない。僕たちはやっぱり同類なんだなって思っただけさ。さあ、殺すといい」
すると彼は名残惜しそうな顔をした。
「いいけど。その前に語り合わないか?俺らの人生のこととか」
「ええー。早く殺してほしいんだけど」
「頼むよ。どうしても知りたいんだ。じゃないと光線を生き抜いた君のことがとても気になって殺せない」
「仕方ないなぁ」
そして僕は家族を亡くして森にひきこもっていたことを話した。
少年はちょっと驚いたように言った。
「なんだ。俺と似てるじゃないか。俺も死神かもしれないな」
「僕のことを話したんだから、なんで人類滅亡なんて夢見たのか教えてくれよ」
ちょっとしかめっ面をした彼はすこし早口で言った。
「死んだ妹との約束だよ。それで刀で人を殺しまくって、きりがないと思った俺は仕上げに光線を発動させた」
「そうか、悪いことを聞いてしまった。死で償おう」
「君は最初から死ぬつもりのくせに」
「まあね。だが正面からはさすがに怖い。背後からお願いするよ」
「ああ。分かった。最後に言い残すことは?」
「死神に幸あれ!」
少年は剣を構えた。僕は彼に背中を向けた。
その直後、鋭い痛みを感じ、地面に倒れた。
ーぷつり。走馬灯が切れた。
そして、今僕は幸せな夢を見ている。
ああ、世界が暗……
少し長かったこの物語も終わりです。が、人類がいなくなっても世界は終わりません。きっと。
…ちょっと自分でも何言ってるか分からないです。




