狂った気まぐれ
「どうだい?これでいいかい?」
「ああ。数奇な人生だな」
「ああ、そうだろうよ」
僕は目の前の少年に生い立ちを語ってみせた。その少年がどうしてもというので。
森で暮らした僕は人気のなさを不思議がって街に出た。人を避けていたというのに馬鹿なことをしたものだ。きっと頭がおかしかったんだろう。
だが、本当に不思議だった。
年に何回かは人が森に迷い込んでくるのに、最近は気配すら感じなくなった。
森から出ても気配は無かった。街の中心に向かってしばらく歩くと、倒れた男に出くわした。僕は焦った。近くに電話でもないものかと探したけども見つからなかった。とりあえず意識があるか確認しようと近付いた。肩を叩いても反応はなかった。今度は脈を測ってみて驚いた。肌が冷たい。脈はない。
死んでいる。
僕は飛びのいて逃げた。
やがて中心部に来て、目を疑った。
人がたくさん倒れている。
もう脈を図らずとも分かった。この人達は死んでいるって。
死体の山を後にして生きている人間を求めて歩いた。
いろいろ考えていると半分焼けた新聞が落ちていた。僕は拾い上げて読んだ。
『休戦!最も危険な平和』
内容はこうだ。
『人間にだけ効果のある「クレル光線」の発明に成功。*クレル光線…人間のみを殺傷し、死体は腐敗せず生きたままの姿をとどめる。我が連合国軍はこれをもって、敵国の動きを封じた』
僕は察した。僕の知らない間に戦争が起こったのだと。




