不思議な少女
「ごめんください。森から出る道を教えてほしいの」
少女を森の外まで案内してやると、祖父らしき人物が困った顔でうろうろしていた。少女はその人のもとに駆けていった。少女は帰り際に振り向いてありがとうと伝えてきた。
それっきり、人が訪ねてくることはなかった。と言いたいけど残念ながらその少女はかなりの頻度で訪ねてきた。
だけど、僕は最後までその少女の名前を聞いたことはなかった。少女も僕の名前を聞かなかった。
不思議なことに少女はいつもパジャマ姿だった。そして、変なことばかり尋ねてきた。
「どうしてあなたたちには痣がないの?博士も看護師さんもお医者さんもみんな青痣すらないの」
とか
「どうしてみんな笑っているのにぶたれないの?私はいつもぶたれたけど、病院に来てから一回もぶたれないのよ」
とか。
僕は、きっと虐待でも受けたんだろうと推測した。そう考えるとなぜか答えが見つからなくて、僕ははぐらかした。
ある日から少女は来なくなった。
僕はほっとしたと同時に恐怖に襲われた。彼女は僕と関わったから死んでしまったんじゃないか。だから来なくなったんじゃないかって。
そう思い込んで、ますます引きこもった。




