仕組み
「あたしは…人造人間…?」
ベンはうなずいた。
「そんな…そんなわけ…だって普通の人間と違うところなんか」
「あるよ。例えば、体。戦闘用アンドロイドは体もまるまる人間そのものだった。でも青い手帳を見るに、君は人間の皮膚とは少し違う物質で体を覆っていて、しかも微弱な電気を帯びている。その電気がサーモグラフィーを狂わせたんで、カメラには君はうつらなかった。触っても暖かいのは、電気が肌に刺激を与えるから」
「じゃあ、あたしにアンドロイドとしての記憶がないのは?」
「君のアンドロイドとしての全ては青い手帳に書いてある。けど、記憶を失ったことは書いてない。多分、人類を焼いた光線の衝撃で失ったんだろう。これは何の確証もない俺の考えだけども」
オリビアはうつむいた。人工の髪がさらさらと揺れる。
「博士は君を愛してた。君が生き残れるように、光線が効かない体を作り、さらに様々なプログラムを施した。例えば…」
『オリビアに害をなすものはオリビア自らの手によって抹殺される。その際オリビアに罪の意識が芽生えないように、感情プログラムを制限した。そのせいで「考える」ことはあまりできなくなったが、「思う」ことは可能ではある。そして、表向きは「殺人を厭わない残酷な性格」となっている。感情プログラムに関して記すものといえば、政府の注文で「攻撃的な性格」になっている。初対面の人間には攻撃的だ。オリビアはよくしてくれる者だけに、心を開く。』
「……」
オリビアは相変わらずうつむいたまま。
彼女には自覚があった。
出会い頭、ベンを殺そうと思ったのが、今ではすっかり友達のように感じている。
ベンは気難しい顔で告げた。
「これが君の真実だ。オリビア」




