二つの手帳
昼食を食べ終えたオリビア。
ベンが青い手帳を読み終わったことに気づいて、読ませてくれとせがんだ。だけど、ベンはまたもオリビアを制した。
「オリビア、君はなぜ博士の手帳を読みたいんだ?」
「あたしは博士が大好きだった。光線で死んでしまったけど。でも、博士もあたしのことを愛してくれていたと思うの。その確証が欲しいだけ。あと、博士はあたしに何かを隠していた。死ぬ前にそれを知っておきたい」
ベンは鋭い目でオリビアを見据え、言った。
「君は死ねないと思うよ」
「は?どういうことよ」
「これ」
ベンは黒い手帳を突きつけた。オリビアはキョトンとしている。
「これがなにか?」
「聞きたいことがある。ジェームズ・ストーンという名に心当たりはないか?例えば、博士の偽名とか」
「偽名もなにも、博士の名前を英語に変換したものよ。ヤーコフの英語系はジェームズ、カメネフは石という意味。研究所ではそう名乗ってたわ」
「そうか。じゃあ、俺は正しかった」
「はあ?さっきからあなたおかしいわよ?なにかあるなら言ってよ」
「うん。じゃあ、率直に言おう。博士は君を愛していた。そして、君が読むべきなのは青い手帳じゃない。この黒い手帳だ」
「ん?その手帳は関係ないでしょう」
「いいや、これこそ関係大有りなんだ。これを読まずには青い手帳の内容を理解できないよ」
「じゃあそれ貸して」
「一緒に読もう。君一人では受けとめきれないだろうから」
ベンは黒い手帳に書かれた手記を、本筋だけ語った。
エヴァが死に、書き手がエヴァの両親を拷問死させた時、オリビアが言った。
「だからなんなのよ」
ベンは手帳を渡し、先を読むよう促した。読んだオリビアの顔はみるみる変わっていった。
「…なんなのよ…これ…っ」




